週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2003年 07月 16日号
グランドキャニオン・びしょ濡れ激流下り
 "グランドキャニオンで激流下りを体験してみたい!"
そんな要望に応えるツアーがこのたび登場したので紹介してみたい。

 日本人観光客の間における川下りへの関心は以前から根強いものがあったが、これまでは残念なことに短期の旅行者が本格的な激流下りをラスベガスから日帰りで楽しむことは物理的に無理があった。わずかにウェストリム地区で川下りらしきものを体験することはできたが、それは "緩流の遊覧クルーズ" であって、水しぶきでびしょ濡れになるようないわゆる "激流下り" ではなかった。

 これまで激流下りツアーの実現をむずかしくしていたのは、断崖絶壁の遙か下に位置しているコロラド川 へのアクセスの問題で、今でも一般車両で川岸まで降りて行くことができる場所は、東西数百キロにも及ぶ広大なグランドキャニオンの中でもわずか 2ヶ所しか存在していない。Glen Canyon Dam 周辺と Diamond Creek がそれだが、いかにグランドキャニオン一帯の地形が険しいかがうかがえる。(位置関係を示す地図
 それ以外の場所では徒歩、ラバ、ヘリコプターなどでアクセスすることになるが、1500m を超える断崖絶壁を日帰り観光客が徒歩やラバで降りることは時間的に無理があり、また、ヘリコプターも、騒音や排気ガス問題をきびしく管理している国立公園管理当局の規制や、インディアン居住区 側からの許可の問題などもあり、上空を遊覧飛行することはできても、定期航路として谷底へ着陸することは特種な場合を除き許可されない。

 そもそも川下りツアーの場合、ツアー終了後、下流にある到着地点から上流にある出発地点まで毎回ボートをトラック輸送で戻さなければならず、たとえ出発地点に人間が徒歩でアクセスできたとしても、トラックが川岸までアクセスできなければツアーの実現はむずかしい。
 ちなみに川の両岸には断崖絶壁が迫っており、車が川と平行に走行できるような川原はほとんどなく、川岸を利用してのトラックでのボート輸送は不可能だ。また、ボート自身で激流を長距離さかのぼって戻ることは技術的にも時間的にも困難だという。
 したがって激流下りの出発地点は消去法的に、車両でのアクセスが可能な Glen Canyon Dam と Diamond Creek の 2ヶ所だけということになるが、Glen Canyon Dam はラスベガスから 500km 以上も離れた場所にあり、ラスベガスを拠点とする観光客にとって日帰りの参加は非現実的で、結果的に Diamond Creek が唯一の場所ということになる。今回紹介する川下りもこの Diamond Creek が出発地点で、このたび原住インディアンがここを拠点とするボートの運航を開始したため激流下りツアーが実現した。

 その Diamond Creek は、グランドキャニオンの中心地サウスリム地区と、通称ウエストリムと称する地区との間に位置する Peach Springs という村からガタガタ道を車で 45分ほど下ってたどり着く川岸 に付けられた名称で、人が住んだりしている場所ではない。
 ちなみに Peach Springs も Diamond Creek もアメリカ原住インディアン Haulapai 族が統治する特別区域内にあり、アメリカ合衆国の一般の地域とは一線を画した別世界となっている。もちろん Peach Springs 地区に住むほとんどの住民はその Haulapai 族で、このツアーのバスやボートの運転も彼らがやっている。

 場所の説明が長くなってしまったが、今回紹介するツアーの行程を簡単に説明すると、ラスベガスから Peach Springs 村の空港 まで軽飛行機で約 45分。その空港から Peach Springs の中心地 (といっても人口約 1500人の村なので、めぼしい建物としては モーテルが一軒 あるだけ) まで、インデアンが管理運営するボロボロのバスで約 15分。その中心地から同じバスでガタガタ道を約 45分下って谷底の Diamond Creek へ到着する。
 そこからはインディアンが操縦するゴムボートに乗り換え川下りを楽しむ。約5時間かけて 70km 以上下流にあるウェストリム地区まで行くことになるが、途中でボートを下りて 洞窟探検ランチ休憩 があるので、ボートに乗っている正味時間は約 3時間程度だ。終点のウェストリム地区の川岸からは ヘリコプター (アメリカ合衆国政府が管理する国立公園地域ではなくインデアンが統治する場所のためヘリコプターの着陸が可能になっている) で断崖絶壁をほぼ垂直に登り、ウェストリム空港 へ向かう。そこからは軽飛行機で約 35分かけてラスベガスへ戻る。

 早朝出発して夕方に戻るという長丁場の日程だが、この種のものが好きなアウトドア派にはぜひおすすめしたいツアーだ。特にこの暑い季節、豪快な水しぶきをかぶる場面 (写真右。クリックで拡大表示) は爽快そのもので、なにやらやみつきになりそうだ。
 このツアーの最大の欠点はなんといってもその料金の高さだろう。$599 + TAX という値段は日米間の格安往復航空券よりも高い。Haulapai 族が独占的に運営しており (空路の部分だけはシーニック航空が担当) 競争原理が働いていないことが最大の原因と思われるが、ボートを出発地点に戻す作業の苦労話を聞かされて、「ま、しょーがないか」 と納得してしまった。
 ちなみに到着地点のウェストリムの川岸へは道がないためトラックでアクセスできない。だからといって乗客と同じようにヘリコプターでボートを吊り上げるにはいろいろ問題があるらしい。
 結局彼らは到着地点で客をボートから降ろした後、そのボートを次の "トラックが川岸までアクセスできる場所" まで川下りさせるという。その "次の場所" とは、なんと遙か下流のミード湖というから驚きだ。そしてそのミード湖でボートを引き上げ、夜間に数時間かけて百数十キロの道のりを出発地点まで戻る。この作業を毎日繰り返しているというからご苦労な話だ。

 非常に高価なツアーだが、ネオンきらめくラスベガスの喧騒から逃れリフレッシュしたい者にはぜひおすすめしたい。なおこのツアーは夏期限定で、催行されるのは 4月から 10月までとなっている。さらなる詳しい情報はこのラスベガス大全のツアーセクションを参照のこと。


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