週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2003年 06月 18日号
モノレールの代わりは人力車 PEDICAB
 今週は、ストリップ地区で急増している人力車タクシー "PEDICAB" (写真右、クリックで拡大表示) について、その運営会社の責任者と現場の運転手に話を聞いてみた。

 この PEDICAB を運営するのは、ファッションショーモールの西側約1kmの場所に事務所を構える AmeriCab 社。
 責任者の Noel 氏によると、昨年春、数台の車両で試験的に始めたビジネスが、今では常時約 30台が稼働するほどにまで成長しているという。おそらく、モンテカルロとベラージオ間、MGMとバリーズ間のモノレールが運休中ということも追い風となっているに違いない。

 同社のビジネスモデルは極めて単純明快だ。運転手をやりたい者に乗客用の台車部分を1日 $40でレンタルし、運転手は自前の自転車の後部にその台車を接続して街へ出る。売り上げはすべて運転手のものとなり、原則として会社側が売り上げに対するコミッションなどを徴収することはない。したがって、同社の主な仕事は台車部分の製造とその保守ということになり、それを裏付けるかのように、インタビュー訪問した際の社屋も、オフィスというよりも工場といった感じの場所だった。

 「これからの暑い時期、運転手が激減しビジネスにならないのではないか?」 とのこちらからの質問に対して Noel 氏は、「この仕事は運転手にとっていい稼ぎになる。運転手はまだまだ増えるよ。これを見てくれ」 と、得意げに台車の製造現場を見せてくれた。溶接工が忙しそうに働くそこには未完成の車両が 20台ほどあった。
 強気の戦略で事業拡大を目指す同社だが、稼働車両があまり増えると仲間の同士での客の奪い合いになり、運転手の稼ぎも頭打ちとなりかねない。Noel 氏の思惑通りにこのまま市場が拡大するのかどうか、大いに気になるところだ。

 各車両の営業範囲はマンダレイベイホテルからサハラホテルまでのストリップ地区のみで、空港やダウンタウンへは行かない。運行時間帯は朝8時から深夜2時までで、運転手は2シフト制で働いている。
 気になる料金はなんと無料で、すべてチップ制だ。この街特有の利権問題や運輸当局との複雑な許認可問題などがあり、有料での運行はむずかしいのだという。
 チップの目安は 10ドルとのこと。タクシー料金との比較や炎天下での重労働、さらには観光的な要素を考えると、まぁ妥当な範囲といったところだろう。

 原則として流しのタクシーが認められていないラスベガスにおいて (ホテルや空港のタクシー乗り場から乗る)、どこからでも乗れるこの PEDICAB は、タクシー以上に便利といえなくもない。また、歩道を走ることになっているため、渋滞が激しい週末の夜間などはタクシーよりも速そうだ。
 一方、どこからでも乗れる代わりに、どこへでも行けるわけではないという不便さもある。ストリップ地区以外へ行かないことはすでに述べたが、ホテルによってはこの人力車の正面玄関前への乗り入れを拒否しているという。さらに、坂が急なためアクセスが困難なホテルもあり (ベラージオや、地下に降りて行く必要があるアラジンなど)、人力ならではの悩みも少なくないようだ。ちなみに正面玄関前まで行けない場合は、最寄りの歩道で下車することになる。
 また、段差などで歩道へ乗り上げにくい場所においては裏道へ迂回することもあるので注意が必要だ。つまり、「遠回りされた!」 と早合点してはいけない。たとえば、ベラージオからモンテカルロへ行く場合、ボードウォークホテル前の歩道の通行が困難なため、裏道へ回ることになる。タクシーと違い、遠回りされてもメーターが上がらないので、のんびり景色でも楽しんでいればよいだろう。
 そして最も重要なこととして、フォーコーナー (ベラージオの前の交差点) と新フォーコーナー (MGMの前の交差点) は、構造上の理由から歩道を走行して横切れないため (歩行者は歩道橋を利用)、原則として渡ってもらえない。したがって、たとえばマンダレイベイからシーザーズパレスなどへは行ってもらえないことになる。あくまでも近距離の移動手段と考えた方がよいだろう。

 筋骨隆々とした男性運転手に混じって、ごくわずかながら女性運転手もいる。今回インタビューした Rachel さん もその一人だ。炎天下の中の重労働についてたずねると、「お金を取られるフィットネスへ行くよりこっちの方がいいわよ」 と本人は至ってのんきだ。
 そうはいっても 40度近い猛暑。乗車の際にはビールの一本でも差し入れてあげたくなるが、残念ながら飲酒運転は御法度とのこと。ちなみに客が乗る座席の下はクーラーボックスになっており、運転手たちはミネラルウォーターなどをここに搭載している (乗客にサービスするためのものではない)。

 レストランでチップを払い忘れる日本人観光客は少なくないが、さすがに無賃で下車して立ち去る日本人は皆無のようで、男性運転手 Mike さんは 「日本人は大歓迎!」 とうれしくなるような返事。日本人は多めにチップを払っているのかと思いきや、そうではないとすぐに知らされる。体重が軽いだけだという。
 「日本人にはああいう人はいないからね」 (写真右) と重そうにペダルをこぐ仲間に視線を送っていたが、たしかに平均的な日本人の倍もありそうな乗客が二人乗っていた。
 そんな彼がいきなり 4人の客 (全員おとな) との交渉を数秒で終え、全員を乗せて走り去っていったが (責任者のNoel 氏いわく、定員は3人。どうやって4人が乗ったかは ここをクリック)、そのペダルをこぐ足の動きはなぜか先の仲間より軽やかだった。


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