週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2002年12月18日号
空港からのタクシーは本当に悪質ドライバーか?
 日本人にとっての海外旅行はまだまだパッケージツアーが主流のようだが、それでも自分でホテルと航空券を手配するいわゆる個人旅行も年々着実に増えてきており、特にリピーター客が多いここラスベガスではその傾向が顕著だ。
 個人手配の旅行では、空港からホテルまでの送迎が付いていないため、多くの場合タクシーを利用することになるわけだが、最近、「空港からホテルへ行く際、遠回りされた。ラスベガスには悪質ドライバーが多いのか?」、といった問い合わせが多くの読者から寄せられる。今週はこの問題について触れてみたい。

 この "遠回り"、じつは一般道を使うか高速道路を使うかのルートの違いによるもので、ドライバーの勝手な判断で気まぐれな道を走る俗に言うところの悪質ドライバーとはやや性質を異にしているように思える。
 つまり、「遠回りされた」 とされるケースはすべて高速道路を使ったというだけのことで (ちなみにラスベガスの高速道路は有料道路ではない)、裏道をぐるぐる回ったりするたぐいの悪質運転ではない。そもそも障害物が少ない広大な砂漠都市ラスベガスの場合、左の写真のように、空港にいようがどこにいようが、高層ビルが立ち並ぶストリップ地区のホテル街は乗客からも良く見通せ、また距離的にも非常に近いため、ドライバーが目的地の方向をごまかすようなことは始めからできない。

 そのようなこともあり、これまでラスベガス大全では読者からその種の意見が寄せられた際は、一方的にタクシー側を非難するのではなく、「たしかに遠回りではあるが、目的地に早く到着するという意味では高速利用もそれなりに合理性があるので、一概に悪質ドライバーとは言えない」 とのスタンスを取ってきた。
 それは、日頃からその区間の高速道路 (右図の赤い部分) をごく当たり前のように利用している地元民の感覚としても極めて自然な発想で、タクシードライバーの選択に対して特に違和感はなかった。
 また、タクシー乗り場 (一般向けの駐車場などもほぼ同じ位置にある) は高速道路にほぼ直結したような位置にあるため (★印の部分)、無意識のうちに乗ってしまいたくなるような設計になっているのも事実で、トンネルで滑走路の下をくぐり抜ければ、あとは一気に各ホテルの近くまで信号なしに行くことができることを考えると、タクシードライバーならずともついつい高速を使いたくなってしまうのも理解できる。

 しかしよく考えてみると、自家用車とは異なり、タクシーの場合いくら時間が節約できても遠回りには必ず料金増が伴うわけで、それに見合うだけのメリットがあるのかどうかを客観的にチェックしてみることは非常に重要なことで、今回はそんな反省に基づき、空港から各ホテルへの距離および所要時間を検証してみた。以下がその結果だ。
 サンプルに選んだのは、高速の出口から近いことを理由に (高速利用のメリットが現れやすい)、日本人がよく利用するホテルの中では空港から最も遠いホテルとなるトレジャーアイランド、ストリップ大通りのほぼ中央に位置するベラージオ、そして空港に近いニューヨークニューヨークの 3ホテルだ。


目的地 高速道路利用 一般道利用
 Treasure Island  距離: 8.3 mile、 所要時間: 9分12秒  距離: 4.6 mile、 所要時間: 12分54秒
 Bellagio  距離: 7.8 mile、 所要時間: 9分20秒  距離: 3.9 mile、 所要時間: 11分14秒
 New York NY  距離: 6.3 mile、 所要時間: 7分10秒  距離: 3.1 mile、 所要時間: 8分28秒
【 空港のタクシー乗場から各ホテルの正面玄関前まで。一般道は Paradise → Tropicana → Strip で、Koval は使わないルート。Bellagio は正面玄関の位置が奥まっているため、地図からの見かけの位置よりも実測値は長く、また高速ルートでは信号の位置の関係で Treasure よりも時間を要した。】

 高速利用のメリットが大きく出るように、一般道ルートの場合あえて混雑するストリップ大通りを渡らなければならないように、すべてストリップ大通りに対して西側のホテルを選んでみたが、結果は想像していたほど大きな時間差は見られなかった。
 もっとも、一般道の場合、信号に引っかかるタイミングで 2〜3分程度はすぐに違ってきてしまうため、本来であれば複数回計測して平均値や中間値を採用すべきだが、時間的な都合から今回は一回しか測定していないので、これらはあくまでも参考データと考えるべきだろう。なお、調査は一般道が最も混むであろうと思われる午後 10時前後に行ったが、調査日の 16日が平日であったことと、今の時期が閑散期であることを考えると、条件によってはもう少し大きな差が出ることも予想される。

 いずれにせよ言えることは、3〜4マイルという距離の差で (1マイルは約 1.6km)、これは曜日やシーズンに関係なく必ず生じてくる。現在のタクシー料金が 1マイル $1.80 であることを考えると、この距離の差はざっと 6〜7ドルの差になり、渋滞停車中の待機料金の加算を考慮に入れたとしても、かなり大きな違いと考えるべきだろう。
 この料金差に対する時間的恩恵がわずか 2〜3分であるならば、「高速利用が妥当」 というには庶民感覚としてはやや無理があるような気がしてならない。もちろんトップシーズンの週末の夜ともなれば、一般道の渋滞は半端ではなく、高速利用の価値は飛躍的に増してくるが、少なくとも日本からの観光客が直行便で到着する午前中の時間帯に関して言えば、高速利用に合理的な意味は見出せない、というのが今回の結論だ。

 さて次に、そんな調査結果を踏まえて、空港で客待ちをしているタクシー運転手にインタビュー調査をしてみた。
 質問内容はズバリ、「目的地がトレジャーアイランド、ベラージオ、ニューヨークニュークの場合、あなたは高速道路と一般道、どちらを利用しますか?」、「もし高速利用と一般道利用の境目となるホテルがあるとしたら、それはどこですか?」 というものだ。

 境目となるホテルがどこにあるのか非常に興味深かったので、回答を楽しみにしていたが、結果はなんと 10人に聞いて全員が、「Paradise Road」(一般道の名前) か、「客にたずねる」 だった。メディアだということをあらかじめ伝えてから質問したため、悪質ドライバーと報道されるのを恐れて 「高速利用」 と答えるのをためらったのかどうかはわからないが、とにかく 「高速利用」 と答えた者は一人もいなかった。
 ただ中には、「コンニチワ、アナタワニホンジンデスカ」 などと陽気にふざけながらも、「勝手に高速を走って客が会社にクレームしてきたらオレは 100ドルのペナルティーを払わなければならない。2回目からは 500ドルだ。会社の電話番号は車に書いてあるのでクレームは本当にこわいよ」、と興味深い話をしてくれたドライバーもいた。もしそれが本当ならば、勝手に高速道路を走ってしまうドライバーは少ないことになるが、あるドライバーは 1台前に並んでいるタクシーを指差しながら、「ヤツは何て答えた? "Paradise Road" って答えていたらそりぁウソだぜ。ヤツの会社はボッタクリだから、客がだまってりぁすぐにフリーウェーさ」 という。そのドライバーに、「"ボッタクリの会社" ということは、高速か一般道か、会社側から運転手側に対して何か営業戦略的な指針のようなものが出されることがあるのか?」 とたずねると、「少なくともウチの会社ではそういったことはない。すべて運転手の判断さ」 とのこと。

 この程度の調査ではどこまでが真実かよくわからない部分もあるが、ハッキリ言えることは、歩合制で働いている彼らにとって、高速利用の方が収入効率が著しく良いということと、高速を走っているタクシーを多く見かける、ということだ。
 ただ、彼らの仕事も決して楽ではないと予想されるため、カジノで数千ドルあるいはそれ以上使うつもりでラスベガスにやって来る富める者は、わずか数ドルの差に目くじらを立てることなく、高速ルートも容認してあげてほしいという気がしないでもない。
 ちなみにもしどうしても下の道で行きたい場合は、「Please don't take freeway」 とか、「Please take Paradise Road」 といえば、悲しい顔をされながらもわかってもらえるはずだ。
 なお参考までにタクシー料金は、初乗り( 0.2 マイル、約 320mまで) $2.70、その後 1/9 マイルごとに $0.20 (つまり 1マイル $1.80。メートルに換算すると 100m につき約 11 セント) 以外に、空港から出て行く場合にのみ (空港へ入る場合は関係ない) $1.20 の特別フィーが加算されるので、上の表に記載されている実測距離だけで目的のホテルまでの料金を計算すると予算不足になるので注意が必要だ。15〜20% 程度のチップもお忘れなく。


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