週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2002年10月23日号
"ランスの逆" で新登場、Gleason Magic Show
 親日家の夫婦によるマジックショー Gleason Magic Show が、このたびベネシアンホテルで始まった。

 このショーの主役 Gregory Gleason と Kristi Gleason は一般には決して有名な存在ではないが、「MGM の Wizard's Secret のマジシャン」 と聞けば、思い出す人も多いことだろう。
 Wizard's Secret は、開業直後の MGMグランドホテルが、その "オズの魔法使い広場" で行っていた大魔術で、ファミリー路線を目指す当時の同ホテルの看板アトラクションとして人気を博していたショーだ。

 その後 MGMがその広場をナイトクラブ Studio-54 などに改造してしまったのを機会に、二人は舞台を世界に移し、昨年まで約60ヶ国でツアー公演を行ってきたという。中でも日本は特にお気に入りとのことで、短期のツアーの予定が、なんと仙台で 6ヶ月に渡る定期公演ショーを行ったというから、日本への愛着もまんざらではなさそうだ。

 さてそんな親日家の二人にとって今回のショーは約7年ぶりのラスベガス復帰となるが、内容としてはまずまずの出来といってよいだろう。
 最初に登場するシーンが印象的だ。いきなり何もない場所から突然スポーツカーが出現し、そこから二人は登場する。主役がスポーツカーに乗って車ごと消えて幕となるランスバートンショーとはまったく逆の展開ということになる。
 そのあとも二人は次から次へと大魔術を披露してくれるが、その内容については見てからのお楽しみということで、あえてここでは触れないこととしたい。ちなみにトラやライオンなど動物は一切使わない。消したり切ったり宙に浮かせたりする対象はほとんどが人間、つまり Kristi だ。最後にオートバイを消したりするイリュージョンもあるが、Kristi を消すシーンに比べるとややインパクトに欠ける。

 総じて言えることは、個々のマジックはどこかで見たことがあるような演出が多い、ということだ。ただこれは近年のこの業界のシステムを考えると、ある程度は仕方がないことと考えた方がよいかもしれない。つまり、マジックのタネや仕掛けを考え出す考案者と、それを演出するマジシャンの分業が進んでおり、マジシャンは考案者からタネを買ってきて披露することになるため、結果的にライバルのマジシャンと同じような演出になりやすいということだ。
 観る側にとっては楽しみの幅が減ることになるが、逆に考えれば、無名の新鋭マジシャンでも著名マジシャンでも "仕入先" が同じであれば同じようなマジックを披露することになり、純粋にマジックだけを楽しみたい者は比較的料金の安い無名のショーで著名マジシャンと同等のショーを楽しめることになる。ちなみに今回の Gleason Magic Show でもデイビッド・カッパーフィールドがかつてやっていた水を使ったイリュージョンを披露しているし、ランス・バートンやスティーブ・ワイリックのショーで見かけるマジックもやっている。

 こうなるとそのショーが売れるか売れないかはマジックそのものの内容よりも知名度や宣伝力など別の部分に左右されることになりそうだが、最近のラスベガスでのマジシャンの栄枯盛衰を見ていると、そういった要素は否定しがたい事実のようで、どんなに内容がよくても無名であれば出世が難しいのが現実といってよいだろう。
 そうなるとこの二人の前途も多難が予想されるが、タイミング的には、"Melinda"、"Darren Romeo" といった同類のショーが最近姿を消した直後なだけにチャンスかもしれない。それでも演出、宣伝、会場、どれをとっても前途を占う上で気になる部分は少なくない。

 まず演出だが、個々のマジックのレベルに遜色は無いものの、役者にカリスマ性が感じられないためか、すべてにおいて、どこかぎこちなさが漂っている。知名度の低さから来る先入観なのかもしれないが、いい意味でもっと大きな態度でやった方がよいだろう。

 宣伝に使われている広告ポスターや看板 (右上の冒頭の写真) もよくない。これは彼らの責任というよりもカメラマンやデザイナーの問題かもしれないが、特に Kristi の写真は改善を要しそうだ。
 実際に会って話してみると非常に謙虚でさわやかな女性だが、宣伝に使われている写真は怒ったようなしかめっ面をしており、見る者に良い印象を与えない。マジシャンなのでわざと神秘性を出すために作った顔なのかもしれないが (たしかに他のマジックショーの看板でも笑った顔は少ない)、であるならば、笑っている Gregory と逆にすべきだったような気がしないでもない。セクシーな女性があまりしかめっ面をしていては、能力の有効利用という意味でもったいない話だ。多くの観光客にとって、その広告ポスターや看板は、ショーの内容を推測する上での唯一の情報源といってもよく、この種の写真の出来具合は興行成績に大きく影響するので軽く考えない方がよいだろう。
 会場も問題が少なくない。ベネシアンホテルの C2Kシアターが会場だが、ここはジンクス的にも最悪だ。これまでにも数多くのショーがここで行われてきたが、ことごとく短命で終わっており、長く定着したショーがほとんどない。
 そもそもこの会場はナイトクラブ用に造られており、ダンスフロアに生バンド用の簡易ステージが設けられたといった感じの落ち着きの無い設計で、ステージよりも低く、傾斜の無いフロアに椅子を並べただけの客席は、きちんとした固定座席が設けられた他の劇場とはその快適さにおいて雲泥の差がある。またステージも、「奥行きや幅が狭く、演出機材を置くスペースも十分にない」 とは、つい最近この会場から消え去った "Melinda" ショーのプロダクションスタッフのコメントで、どうもこの C2Kはナイトショー会場としては物理的な欠陥があるようだ。

 以上のようにさまざまな条件を考えると、定期公演ショーとして定着できるかどうか非常に難しい部分もあるが、親日家なだけになんとか頑張ってもらいたいものだ。そうはいっても、ランスバートンショーと同じ価格帯であることを考えると、初めてラスベガスを訪れる者に知名度の低いこのショーを売り込むことには無理を感じる。やはりこのショーは、すでに他のマジックショーを観てしまったリピーター向けといったところか。

 会場は前述の通りベネシアンホテルの C2Kシアター。開演は金曜日を除く毎日 6:00pm。料金は子供 $22、大人一般席 $55、VIP席 $77。チケットは劇場前のボックスオフィスで。ちなみにステージ直下の VIP席よりも一般席の方が角度的にステージを見やすいのでわざわざ高い VIP席を買う必要はないだろう。
 なお、ベネシアンホテルでは、このショーとほぼ同じ時期に同じ会場でバラエティーショー "V" の公演 (毎晩 8:00pm) も始めているが、それはまた日を改めて紹介させて頂くこととしたい。


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