週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2002年02月20日号
"ドタバタ結婚披露宴" のディナーショー
 「これを "ディナーショー" と呼んでいいのか?」 と自問したくなってしまうような風変わりなショー "Tony n' Tina's Wedding" が今月からリオスイートホテルで始まった。

 風変わりといえば超奇抜なドタバタ劇 "DE LA GUARDA" (2000年 12月 13日にこの紙面で紹介) が思い出されるが、奇しくもホテルも会場もまったく同じだ。
 ちなみにその DE LA GUARDA は風変わりすぎて集客に失敗し昨年8月に公演が打ち切られている。今回のショーはその DE LA GUARDA のために造ってしまった施設の "有効利用" (どちらのショーも固定座席やステージが不要なため施設の流用が簡単) といった感じがしないでもないが、同じ道をたどり短命で終わるのではないかと心配される内容だ。

 内容はじつに単純で、新郎新婦、神父、親族、友人、司会者、カメラマンなどに扮した役者がコミカルな結婚式と披露宴を演じ、観客はそれに招待された一般ゲストという設定だ。
 会場はごく普通の宴会場に 10人掛け程度の丸テーブルが十数台置かれ、あとは新郎新婦用のひな壇と生バンド用の簡易ステージ、それにダンスフロアとしての狭いスペースが用意されているだけで、"イタリア風の披露宴" という設定だが、日本での披露宴会場の雰囲気と大差ない。

 コミカルなシーンはすぐに始まる。とぼけた神父がスピーチを始めると、新婦の元彼が会場に乱入。オカマ風の新婦の兄が奇妙な祝辞を述べたかと思うと、新郎の子供を宿していると思われる臨月の新婦の友人が奇声を上げる。新郎新婦が招待客の前で口論を始めると (写真左)、今度は新郎の祖母が心臓発作で突然倒れ場内は騒然。

 そんなコミカルな披露宴が1時間ほど続いたあとディナーが始まり、しばらく歓談となる。新郎新婦やその親族が客のところまでやって来て 「今日はお忙しい中いらっしゃってくださりありがとう!」 などと声をかけて回る。「お招きいただきありがとう!」 と応じる客もいるが、どれが "本当の観客" で、どれが "招待客の役を演じている役者" なのか区別がつきにくい。
 会場の中央に設けられたスペースでダンスパーティーが始まると、「今日は私たちの友人 TINA の披露宴です。さぁ一緒に踊って盛り上げましょうよ!」 などと声をかけられるが、これまた客だと思っていた人物が役者だったりするのでわけがわからなくなる。

 その後ハネムーンに行くという新婦が親族の席などを次々と回りウェディングガウンに餞別のドル紙幣を挟んでもらう が、突然新婦の友人がストリップショーまがいの セクシーな踊りを始め、ドル紙幣を彼女の胸の谷間に挟み込もうとする新郎の友人たちが殺到して場内は大爆笑。その新郎の友人と見られる集団の中に本物の客がいるのかどうかは判別のしようがないが、本物の客が行っても特に問題はなさそうだ。
 これ以上内容を細かく説明してしまうと楽しみが減ってしまうのでこの程度にしておくが、あとは新婦までもがひっくり返るほどのケンカ騒動があり (写真右)、最後はビール片手に酔っ払った新郎新婦が客にあいさつに回って (写真左下) お開きとなる。

 この約2時間のパフォーマンスを立派なコミカルショーと見るか、単なる低俗なドタバタ劇と見るか、意見が分かれるところだろうが、税込みで $71.50 という料金だけは高いか安いか意見が分かれることはないだろう。これははっきり言って高い。その最大の理由はディナーの内容だ。

 サラダとパスタとパンを一つの皿に盛り付けただけの料理 はディナーと呼ぶにはあまりにもお粗末極まりない。
 さらに飲み物が付かないとあっては不満に思わない者はいないだろう。ビールなどのアルコール類はおろかコーラなどのソフトドリンクまでもが有料で、会場内に設けられたバーカウンターに各自が個別に買いに行く必要がある。ちなみに料金は国産ビール $3.25、輸入ビール $4.00、ソフトドリンク $1.75、フルーツジュース$2.75 となっている。
 結局、無料で付いて来る飲み物はあらかじめ各テーブルに置かれた水と、乾杯の音頭の時に配られるシャンパンだけだ。デザートとして出されるウェディングケーキも滅法まずい上、コーヒーも付かない。

 酷評したついでに言ってしまえば、ディナーのサーブ方法もよろしくない。ワゴンで会場内に運び込まれた簡素な料理を 3-4人のスタッフ (来客に扮した役者) が無造作に盛り付け、それを客が行列を作って受け取る。最後の方の客は 15分は待たされるだろう。
 料理の内容がお粗末なだけに、せめてスタッフが客のテーブルまで運んでくれるような配慮が欲しかったが、なんと彼らが客 (本物の客) よりも先に食べ始めてしまうデリカシーのなさには閉口してしまう。ちなみに彼らはバンド奏者を除いて総勢25人 もいる。もっとも、「劇の中では親族や友人も来客であって、他の一般客と一緒に食事をせずにウェイターのような仕事をやり続けるわけにはいかない」 と言われてしまえばそれまでだが、だったらホテル側のプロのウェイターを雇うなり、もう一工夫してもらいところだ。料金が決して安くないだけに、なんとも後味の悪いディナーだった。

 "DE LA GUARDA" の8ヶ月よりもさらに短命で終わるのではないと心配になってしまうが、じつはこの Tony n' Tina's Wedding、ニューヨークのオフ・ブロードウェーで14年も続いているロングランショーだ。ひょっとすると我々日本人には理解できないアメリカンテイストのおもしろさがあるのかもしれない。たしかに語学的に難解な部分も少なくないので、日本人が酷評するのはおかど違いということか。だがそれでも気になる部分がある。ラスベガスでは短命だった DE LA GUARDA もニューヨークでは人気を誇っていたという事実だ。

 ニューヨークで成功したからといってラスベガスで成功するとは限らない。むしろ多くが失敗している。その最大の理由は地元民の人口規模の差といってよいだろう。
 ニューヨークもラスベガスも観光地であることに違いないが、どちらも地元民の需要に支えられていることは疑う余地がない。これはナイトショーに限らず、ロサンゼルスや東京のディズニーランドにも大阪のユニバーサルスタジオなどにも言えることで、すべてのエンターテーメントビジネスに共通していることだ。
 ちなみにニューヨークメトロポリタンの人口は周辺地域も加えれば軽く 2000万人を超える。その内の 100人に1人がこの Tony n' Tina's Wedding を観劇しても 20万人の地元民需要があり、これだけで 200人の会場を 1000日も満席にすることができる。実際には 100人に 1人よりは多くの者が観ているのではないだろうか。
 一方ラスベガスの周辺人口は 100万人を少し超える程度でニューヨークの 20分の1程度しかない。この環境の違いは劇団側も百も承知のことと思われるが、何ともしがたいハンデとして重くのしかかってくることだろう。

 いずれにせよ、今後このラスベガス公演がロングランショーとして大成功を収めるのか (まずそれはないだろう)、数ヶ月で消えてしまうのかまったく予測が付かないが、興味がある者はいつ終わってしまってもいいように早めに観ておくことをお奨めする。
 公演は火曜日を除く毎日 7:00pm (日曜日だけは正午の部もある)。料金は前述の通り税込みで $71.50。$10 高い VIP席というものもあるが、どこの席から観ても大した違いはないので一般席で十分だろう。
 場所はリオスイートホテルの新館タワー棟のカジノフロア "マスカレードビレッジ" に隣接したスタジオ内。入場口はかの有名なバフェィ The Village Seafood Buffet のすぐ脇。



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