週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2018年 10月 24日号
ルーレット、トリプルゼロ(0、00、000)が蔓延
Triple-Zero Roullette  ラスベガスのカジノにおけるルーレット台において、「トリプルゼロ」(写真)が広がりを見せている。
 これは、カジノ側の利益を拡大するためのルールの改変であり、プレーヤーである客にとっては大いなる改悪。つまり極めてゆゆしき問題であり、客側の対応策や注意としては、このようなルーレット台には絶対に近寄らないことだ。

Triple-Zero Roullette  まずは、ルーレットにくわしくない読者のために、ルーレットの基本について簡単にふれておきたい。
 ルーレット台には(と同時に、ルーレットの回転ホイールには) 1番から36番までの番号があり、それぞれがに色分けされている。赤、黒 18個ずつの同数のため、玉が落ちた番号が赤になるか黒になるかの確率は半々。
 したがって、払い戻し倍率も 1倍、つまりたとえば、赤に10ドル賭けて的中すれば10ドルが払い戻される。もともとの賭け金の10ドルも含めれば 2倍の 20ドルが戻ってくることになる。
 同様に、偶数か奇数かに賭けることもでき、これも半々の確率なので、払い戻しの倍率も赤黒のときと同じだ。
 ただ、このままだとカジノ側が勝つか客側が勝つかの確率は互角で、カジノ側に有利性はない。つまり利益が期待できない。
 カジノの運営には、家賃も人件費も光熱費も必要なので、多少の利益が確保できなければ経営が成り立たないことはだれにでもわかること。

Double-Zero Roullette  そんなカジノ側の事情のために用意されているのが、0番00番だ。この2つの番号は赤でも黒でもなくで、また偶数でも奇数でもない扱いになっている。
 したがって、この2つ番号に玉が落ちた場合、赤や黒、そして偶数や奇数に賭けた者は全員負けとなる。ようするにカジノ側の総取り、つまりこの 0番や 00番の存在こそがカジノ側の収益の源泉というわけだ。(もちろん 0番や 00番にピンポイントで賭けていた者だけは勝ちとなる)
 ここまでの説明で、緑の0番や00番は存在しないほうが、客側にとって有利なことはわかっていただけたと思う。

Single-Zero Roullette  これまで長らく、世界中の多くのカジノのルーレット台においてはこの 0番と 00番が存在していて、「ダブルゼロ台」double-zero roulette table あるいは double-zero roulette wheel)と呼ばれてきた。
 ダブルゼロ台という言葉があるということは、「ダブルゼロ台じゃない台」もありそうだが、実際にある。
 0番だけで、00番がない台、つまり「シングルゼロ台」だ(写真)。客にとってはありがたい台で、ヨーロッパのカジノではそのシングルゼロ台が多く存在しており、またラスベガスのカジノにおいても、高額でプレーするギャンブラーのためのセクション(最低賭金が高いセクション)などでは決して珍しい台ではない。

Triple-Zero Roullette  というわけで、「ダブルゼロ台よりもシングルゼロ台のほうが客にとって有利ではあるが、シングルゼロ台は台数的に一般的ではないので、ダブルゼロ台でプレーするしかない」というのが、何十年も続いてきたラスベガスのこれまでの現状だった。
 ところが 2016年の秋、前代未聞ともいうべき「トリプルゼロ台」、つまり 0番00番に加えて 000番も存在する台が考案され、ベネチアンホテルで試験的に導入された。カジノ側にとっては「おいしい台」であることはいうまでもないが、客にとっては「ぼったくり台」といっても過言ではないほどの劣悪な台ということになる。

Triple-Zero Roullette  今の時代、悪評はすぐにネットで拡散されるので、「評判を下げないか」、「客に受け入れられるかどうか」という不安がベネチアン側にあったのだろう。当初は試験的な導入で、ダブルゼロ台の脇でひっそりと運用されていた。ライバルホテルも成り行きを見守る形で静観を決め込み、1年半に渡って沈黙を守り続けてきた。
 ところが、「利用者の数は、トリプルゼロ台もダブルゼロ台もなんら変わらない」ということがベネチアンでの試験運用で実証されると、今年の4月、シーザーズ系列のホテルの一つであるプラネットハリウッドがカジノの中央ともいえる目立つ場所にトリプルゼロ台をいきなり堂々と実戦配備。その後、当然のことながらベネチアンもトリプルゼロ台の数を増強した。

Triple-Zero Roullette  駐車場の有料化やリゾートフィーの導入など、「ホテル側の利益にはなるが、客から嫌われる可能性があること」は、これまでMGM系列のホテルが先に試験的に導入し、あとからシーザーズ系列のホテルがマネをするというパターンが多かったが、今回ばかりは逆だったようで、プラネットハリウッドのあとをMGM系列がすぐ追うようにニューヨークニューヨーク、サーカスサーカス、PARK MGM などで導入。

Triple-Zero Roullette  そうなると拡散は早い。「みんなでやれば怖くない。儲かる話は逃すまい!」とばかりに、雪崩現象的に広まり、今ではストリップ地区のみならずダウンタウン地区までトリプルゼロは広く蔓延。高級ホテルとされるウィンでも導入。もはや導入していないホテルを探すのがむずかしいほどになってしまった。
 カジノ側にしてみれば、「000番を加えて条件を悪くしても、大部分の客はハウスエッジのことなどぜんぜん気にしていない様子。ならばトリプルゼロ台をどんどん増やしちゃえ!」といったところで、これは少々乱暴な表現になってしまうが、「バカから巻き上げちゃえ!」ということだ。

Triple-Zero Roullette  ちなみにギャンブルの世界では、ハウスエッジ、ペイアウト、控除率、期待値といった統計学上の言葉がしばしば使われるが、ぜんぜんむずかしいことはない。ようするにどれも「払い戻し率の良し悪しを示す指標」と考えればよい。
 その数値が悪いというのだから、今こそプレーヤーはトリプルゼロの導入によってその払い戻し率が大きく悪化していることに気づくべきで、この種の台は避けるべきだ。
(上の写真は、活況を呈する LINQホテルのトリプルゼロ台。すぐとなりにダブルゼロ台があったが、最低賭金は同じ設定であったにもかかわらず、なぜかトリプルゼロ台のほうがにぎわっていた。他のホテルのカジノでも同様な光景が見られた。下の写真内に写っている「緑の11倍」という賭けがおもしろく感じるということだろうか)

Triple-Zero Roullette  知人の本格派ギャンブラーの一人は、このトリプルゼロ蔓延の傾向を「もはやこの世の終わりだ」と嘆いていた。少々大げさな表現ではあるが、まさにそんな感じで、各ホテルの「みんなでやれば怖くない!」といったその談合的な経営スタンスはひどすぎる。
 とはいっても、本格派ギャンブラーたちの主戦場はルーレットではなく、ブラックジャックやバカラ。つまり、今回の改悪で被害にあったり注意しなければならないのは一般観光客などの初心者プレーヤーたちだ。本格派ギャンブラーたちは、ダブルゼロでも払い戻し率が悪いのでルーレットはやらない。
 では初心者プレーヤーもブラックジャックをやればいいのかというと、そんなことはない。基本戦略を知らずにやると、ルーレットよりも悲惨な結果になりやすいからだ。(バカラは基本戦略を知らなくても良い結果になることも)

Triple-Zero Roullette  ではどの程度、その払い戻し率(カジノ側から見れば控除率)が悪化しているかを簡単に示しておきたい。
 ダブルゼロでは 5.26% だった数値がトリプルゼロでは 7.69% に悪化している。
 これは、1回賭けるごとに、毎回平均で賭金の 7.69% をカジノ側に吸い上げられることを意味する。
 数学の知識などがなくてもこの数値を実際に体感するのは簡単だ。たとえば、1〜36番までの数字と 0、00、000 の合計39ヶ所のすべてに1ドルずつ賭けたとする。必ずどれか 1ヶ所が的中し、38ヶ所が外れる。1ヵ所的中すると 36ドル戻ってくるので、39ドルを投じて 3ドル失うことになり、その 39ドルの 7.69% が 3ドルというわけだ。
 赤や黒に賭ける場合でも同様だ。1回 1ドルで 39回プレーすると、平均で赤が18回、黒が18回、緑が3回出現するので(あくまでも平均なので、必ずそうなるとは限らない。むしろ偏るのが普通)、39戦18勝21敗が平均的な結果となり、39ドルを投じて、18勝のときに払い戻された 36ドルが手元に残るので、やはりトータルの賭金の 7.69% の 3ドルを失うことになる。
 5.26% と 7.69% の差を、実戦に近い金額と回数、たとえば 10ドルずつ賭けて 100回プレーしてみた場合の結果を考えてみると、ダブルゼロの場合 52.6ドル失い、トリプロゼロの場合 76.9ドル失う計算になる。元金 100ドルでスタートすると、トリプルゼロの場合、その4分の3は消えていることになり、200回やれば、かなりの確率で元金100ドルのすべてを失っているであろうことは想像に難くない。
 もちろん、ほんの数回だけの勝負とか、ほんの10分間だけの短期プレーであれば、運良く大勝ちすることもあるが、長くやればやるほど、確率論的にこの 7.69% はボディーブローのように効いてくる。
 参考までに、バカラの場合のその数値は約 1%、ブラックジャックもルールなどの条件が良いテーブルで基本戦略どおりの正しい手を打った場合、1% ぐらいになる。

Triple-Zero Roullette  長くなってしまったが、5時間も 10時間もルーレットをプレーし続け、最終的に勝って帰れることなどまずありえないと考えたほうがよい。
 大切なことは、最初の一時期ならば十分にありえる「勝っているとき」に、やめて立ち去る勇気とそのタイミングだ。「もっと勝てるかも」と思う気持ちが一番あぶない。
 最後に余談だが、トリプルゼロはそのゼロの数もイヤらしいが、盤面上の配置(写真)もなんだか気に食わない。
 それはともかく、カジノを管轄する当局から、定期的に各カジノの種類ごとの(ルーレットとかブラックジャックとかの)収益結果が公開されるので、トリプルゼロを導入したカジノにおける導入前と導入後の数値の変化が楽しみだ。すでにある程度公開されているが、機会を見て改めてここで紹介してみたい。

(補足: ここまでの内容を読んだ読者の多くは、「ルーレットはそんなにヒドいのか!」と思ってしまう可能性が高いので、念のためラスベガスのカジノを擁護しておくと、ヒドいと書いたトリプルゼロ台の控除率は 7.69% だが、日本の宝くじのその数値は 55%前後、スポーツくじで 50%前後、競馬は約 25%なので、まさにケタ違いにもっとヒドいことになる。いかにラスベガスのカジノが良心的であるかがわかるはずだ。なおパチンコの場合は各店舗によって異なるばかりか、アナログ的な要素が多く、客観性のある正確な数値の算出は不能)


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