週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2018年 10月 03日号
18,000席の地球型MSGの建設開始、完成は 2021年
 今週は、突拍子もない形をした巨大なイベント会場の建設が始まったという話。
MSG Sphere  アメリカにおける一般生活の中で「MSG」といえば、化学調味料のグルタミン酸ナトリウム(Monosodium Glutamate)、ようするに「味の素」のことになるが、今回ここで取り上げる MSG は、ニューヨークにある世界的に有名なイベント会場「マディソン・スクエア・ガーデン」のこと。
 その MSG を所有する会社が、ラスベガスのサンズ社と共同で、「MSG Sphere」を建設することになり、先週の木曜日に現場で起工式がおこなわれた。ちなみに Sphere とは球体のこと。(上の写真はその完成予想図。LV Review-Jornal 社提供)

MSG Sphere  サンズ社はベネチアンホテルやパラッツォホテルを運営する会社で、それらホテルに隣接する場所にサンズ・エキスポ・コンベンションセンターも所有。
 建設場所は、そのコンベンションセンターのすぐ東側の空き地なので、コンベンションセンターからは近いが、ストリップ大通りにある両ホテルの正面玄関からは約800メートルと、少々離れているのが難点。動く歩道などを設置してストリップ側からのアクセスを容易にしたいようだが、途中にモノレールの軌道や他社の駐車場があることなどから、その具体的なルートなどはまだ検討中とのこと。(上の写真の下半分が建設予定地、右奥の大きな建造物がパラッツォ、左奥に小さく見える建造物がベネチアン、中央から左が駐車場、中央右の白い線状に見えるものがモノレールの軌道)

MSG Sphere  さて話題の中心である MSG Sphere そのものについてだが、名称が示す通り見た目のカタチは球体、つまりまるで地球のような施設になる予定だ。(写真は完成予想図。LV Review-Jornal 社提供)
 高さは 360フィート(約110メートル)、直径は 500フィート(約150メートル)、客席数は約 18,000。

MSG Sphere  形状そのものや巨大さばかりが注目されがちだが、この施設の特徴はなんといっても形状から得られる音響や映像などの運営面でのメリットだろう。(写真は現在の工事現場の外周を取り囲むように設置されたフェンス)
 天井の高さが100メートルを超えるとなると、通常のイベント会場では不可能な上下方向を利用した演出が可能となり、また、その球形の壁面を活かしたディスプレイにも大いに期待がかかっている。
 たとえば、外側は世界最大規模の広告用パネルとして活用でき、内側は各イベントに合わせたさまざまな音響・映像演出が可能となる。
 特に注目されているのが、いわゆる e-Sports と呼ばれるプロゲーマーたちの競技会など、ゲーム業界やアミューズメント業界のイベントでの独創的な利用方法だ。またファッション業界、ハイテク業界、ナイトクラブ的な利用、さらにはプラネタリウムなどの疑似体験型の演出まで、発想次第では従来には存在し得ない奇抜なアイデアがいくらでも生まれてくるのではないかと期待されている。

MSG Sphere  完成時期に関しては、つい先日まで「2020年末ごろまでにオープン」とされていたものが、今では「2021年6月ごろ」となっているので、さらに遅れる可能性は十分にありそうだが、計画自体が頓挫してしまうようなことはないと考えてよいのではないか。
 というのも、巨額な資金を持っているサンズ社の創業者シェルドン・アデルソン氏が関わっているばかりか、彼は本来イベント系のビジネスが好きだからだ。(写真はサンズ・エキスポ・コンベンションセンター、右側の建物がパラッツォ、左奥に小さく見えるのがベネチアン)

 ここからは余談になるが、アデルソン氏はカジノホテルで大成功を収め、長者番付の常連になるほどの大富豪として知られているが(経済誌フォーブスによる 2018年度の長者番付では世界第21位で、資産は約4兆円。資産の大部分はサンズ社の株式)、親の事業を引き継いだりして財を成したわけではない。ゼロからスタートし、アメリカンドリームを実現しているからなおさら立派だ。(多くのIT長者などにも共通していえることだが)
 今ではカジノホテルだけではなく、地元ラスベガスで最大の発行部数を誇る日刊紙 Review-Journal の発行会社のオーナーでもあるわけだが、彼は大学中退後、さまざまなビジネスを試み、失敗と中ぐらいの成功を繰り返している。
 大成功のきっかけをつかんだのは、もともと好きだったイベント系のビジネスで、今から40年ほど前にラスベガスで始めたハイテク業界のコンベンション COMDEX を主催したことだった。
 その後 COMDEX は年々巨大化し、1990年代には世界最大級のコンベンションに成長(現在の CES よりも巨大だった)。
 当時このラスベガス大全も COMDEX に大いに関与し、ビジネスを一緒にさせてもらったわけだが、今から20年ほど前、アデルソン氏は COMDEX が絶頂の時期に、それを孫正義氏が率いるソフトバンク社に売却し、コンベンション業界から身を引くことに。
 その売却で得た数百億円を元手に、現在のベネチアンホテルを建設し、現在に至っているわけだが(COMDEX は孫氏の手に渡ったあと、2001年9月の同時多発テロなどの不運にも見舞われて次第に衰退し、数年後に消滅している)、そんな経歴を持つアデルソン氏は、再びこの MSG Sphere でさまざまなイベントビジネスに乗り出したいようなので、実現はほぼ確実と思われる。
 そんな彼もすでに 85歳。健康を害することなく、MSG Sphere の完成後も大いに活躍していただき、さまざまなイベントを開催、あるいはイベントを誘致して、ラスベガスを活気づけてもらいたいものだ。


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