週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2018年 06月 13日号
絶対にしゃべらないコメディアンのワンマンショー
 ナイトショーのジャンルにもいろいろある。英語の語学力をあまり必要としないショーといえば、マジックショーやアクロバット系のショー、もしくはダンス系かコンサートということになり、逆に高度な語学力を必要とするショーの典型はコメディーショーだ。
 今週は、二ヶ月ほど前からハラーズ・ホテルで始まった、語学力をまったく必要としない極めて特異なコメディーショーを紹介してみたい。

Tape Face  ショーの名前は TAPE FACE。これは主役の名前でもある(もちろん芸名)。
 「名は体を表す」とはよく言ったもので、ショーの内容も人物もまさにそのまま、つまりテープを顔に貼った状態の役者が、そのままの姿で最初から最後まで演じる。ちなみにテープそのものは、電気工事などで使われる絶縁用のテープとのこと。
 なお、さきほど主役という言葉を使ったが、主役以外にだれもいないのでコメディアン TAPE FACE のワンマンショーと考えるべきだろう。(開演前にピエロのような役を演じる男女が会場内に出没するが、彼らはあくまでもアシスタント)

 語学力を必要としない理由は、その TAPE FACE がしゃべる英語が簡単だからではない。ひとこともしゃべらないからだ。しゃべらないというよりも、口がテープで塞がれているので物理的にしゃべることができない。
 一般的にコメディーショーといえばトークがすべて。しゃべり無しで彼に何ができるというのか。
 実はこのショー、身振り手振りだけですべてを演じるので、簡単に言ってしまえばパントマイムのようなものだ。
 ただ、パントマイムなら決して珍しくはないが、このショーが珍しいのは、すべての演目において会場内の客と一緒に演じるというところ。つまり客のサポート無しには成り立たない。
 毎回 TAPE FACE がステージから降りて客席内をふらつき、だれか1人を選んで(複数人の場合もある)、ステージに引っ張り上げる。そしてその客と無言のコメディーを演じる。
 ちなみに会場は非常に狭く、座席の数はたったの 180席ほど。この数、たぶんラスベガスの定期公演ショーの会場としては一番少ないのではないか。
 一方、ステージに上げられる客の数はかなり多い。正確に数えてはいないが、演目の数が多いので、たぶん 10人以上はステージに登っているはずだ。つまり自分が選ばれる確率は決して少なくない。
 そうなると、「私は英語が苦手なので、そんなショーには恐ろしくていけない」と思ってしまうかもしれないが、TAPE FACE からの 「ここに座れ」、「うしろを向け」、「ここをこのように持ってろ」といった指示はすべて身振り手振りなので、何も困ることはない。

Tape Face  演目の内容に関しては、あまりにも多いため、説明しきれないが、テクニック的にも道具的にも特に高度なものは何もない。つまり、ごく日常的に存在する小道具を使って、ごく日常の出来事などを演じる。
 したがって、アイデアさえ盗めば、我々でも宴会の余興などで出来そうな簡単な演目が少なくない。それを面白おかしくやってのけるところがプロのエンターテイナーということになるわけだが、じつはこの TAPE FACE 氏は、アメリカの国民的人気オーディション番組「America's Got Talent」の 2015年のシーズン11 において、最後まで勝ち抜きファイナリストに残った経験の持ち主というから、その才能はお墨付きだ。

Tape Face  あまり細かく書いてしまうと観る楽しみがなくなってしまうので、このへんにしておくが、ラストシーンだけは、それまでの単なるパントマイムとは異なるあっと驚く演出が待っている。
 なにやらブルーマンのエンディングを彷彿させる派手な演出ではあるが、ブルーマンと同様、もちろんその場面でも彼は何もしゃべらない。(右上の写真は、このショーの会場の入口付近の様子)
 いずれにせよ、すべての演出において、観客も不可欠な構成になっており、役者と客の一体感という意味ではラスベガス随一のショーといっても過言ではなく(ブルーマンの場合、客が参加するのは一部だけ)、なおかつ、その一体感の中に、英語を母国語としない観客も何らハンデ無く加われるところがこのショーの真骨頂といってよいのではないか。

Tape Face  チケットは、このホテルのカジノの北側出入口のすぐ近くにあるディスカウント・チケットショップ Tix 4 Tonight(写真右)で 50ドル前後で買うことができる。
 会場は、このショーのためにダイニングスペースだった場所をつぶして新たに造った劇場、その名も House of Tape。カジノフロア内のわかりにくい場所に潜んでいるが、Oyster Bar Las Vegas というカキ専門のレストランのすぐ脇にあるので、その店を目指して探せばすぐにわかるはずだ。

Tape Face  特殊なチケット以外は原則として指定席ではない。フロアに傾斜がないので、前の座席に大きな人が座ってしまうと、背が低い者にとってはステージがよく見えず、かなりつらい思いをすることになる。(右の写真は、開演直前の会場内の様子。11列目の席から撮影)
 一番いい座席の位置は、ステージから10列目までの普通の高さの座席が終わって、高いイスになる 11列目。12列目と 13列目ももちろん高いイスになっているが、11列目に大きな人が座ってしまうと視界が限定される。左右の位置のズレは、会場が非常に狭いのでまったく気にする必要はない。
 公演日時は、月曜日を除く毎日午後7時。ときどきまとまった休暇を取ることがあるので、鑑賞希望日が月曜日以外の場合でも、念のためホテルのサイトなどで事前に確認するようにしたい。


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