週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2018年 05月 09日号
どうなる? 創業者が失脚したあとの Wynn Las Vegas
Wynn Las Vegas  今年の2月、セクハラ問題を理由に、会長職にあった創業者が辞職に追い込まれるという事態に発展した高級カジノホテル Wynn Las Vegas。(写真右。左奥に見える同色の建物は新館 Encore)
 このたび、その会長 Steve Wynn 氏(76)が、長年自宅として使ってきた同ホテル内の超高級ルーム(床面積 6200平方フィート、約570平方メートル)から追い出され、名実ともにこのホテルから姿を消した。
 いや正確には、経営陣の名簿から彼の名前は消えたものの、いちばん重要ともいえるホテル名に彼の名前はまだ残っているので、名実ともにすべてが消えたことにはならない。会社名の Wynn Resorts もそのままだ。
 今後このホテルの名前や会社名が変わることになるのかどうか、いま業界関係者のみならず、同ホテルの常連客などの間でも注目されている。ちなみにロゴマークも彼の署名がそのまま使われている。

Wynn Las Vegas  Steve Wynn 氏といえば、ラスベガスにテーマホテルブームを巻き起こし、今日の華やかなラスベガスをクリエイトした立役者で、大型高級カジノホテルであるミラージュ、トレジャーアイランド、ベラージオを建てた男として知られる。「ホテル王」などと称されることも少なくなかった。(右上の写真は向かって右側からミラージュ、ウィン、トレジャーアイランド、アンコール)
 その3ホテルを MGM社に売却して得た資金と、日本のパチスロメーカーの創業社長であった岡田和生氏からの出資金で建設したのが、2005年にオープンした現在の Wynn Las Vegas だ。

 その後しばらく岡田氏、それに Wynn 氏の妻 Elain さんも陰の力となって、うまく経営を続け、2006年にはマカオにも進出。
 そして 2008年には Wynn Las Vegas の新館となる Encore も完成させるなど、すべてが順調に進んでいるかのように見えたが、2010年、長年連れ添ってきた Elain さんと離婚し、翌 2011年、23歳年下の英国籍の女性 Andrea さんと再婚。ちなみに Wynn 氏と Elain さんはどちらも 1942年生まれの同年齢。

 Wynn 氏と岡田氏の不仲が囁かれ始めた 2012年、ひょんなことをきっかけに、Wynn 氏は岡田氏を追い出すことを決意、岡田氏が所有していた全株式を半ば強制的に激安価格で買い取り、岡田氏を失脚させた。

 Elain さんと別れ、岡田氏も去ったあと、Wynn 氏は再婚相手の Andrea さんの名前を冠したレストランを Encore 内に開業させるなど、愛妻家ぶりを具現。
 新体制での勢いは止まらず、2017年、アメリカ東海岸のマサチューセッツ州にも進出し、Wynn Boston Harbor というカジノホテルの建設を開始。2019年の開業を目指して現在も建設が進められている。

 ところが昨年秋ごろからハリウッドなどを中心に始まったセクハラの告発を啓蒙する #MeToo ブームが全世界で巻き起こり、それが Wynn 氏の人生を激変させることに。
 #MeToo ブームは当初、ハリウッド女優などが、映画プロデューサーなどの権力者から受けていた性的嫌がらせを告白したことが発端だが、その後、"Me Too"(私もセクハラされた!)と名乗り出る女性が次から次へとマスコミに登場。
 国や業界を超えてセクハラ被害を公表する運動が広がると、Wynn Las Vegas もその流れから逃れることは出来なかった。Wynn 氏からセクハラを受けたと名乗り出る女性従業員が続出。
 10年前、20年前に Wynn 氏からセクハラを受けたという女性も複数名乗りを上げ、ついに裁判沙汰に。

 古い案件が多く、事実関係の解明には時間がかかりそうだが、刑事事件に発展するようなことになると、さすがに他の経営陣や株主も黙認し続けることが出来ず、Wynn 氏はすべての役職から降りることを余儀なくされ、2月6日、ついに失脚
 さらに保有していた株式も売却せざるを得ない流れになり、かつては創業者として筆頭株主だった Wynn 氏は、とうとう株主名簿からも姿を消すことになってしまった。

 一連の騒動の陰に、元の妻 Elain さんが存在しているとの噂があるから話は複雑だ。つまり、セクハラ被害者として名乗りを上げている女性たちを、うしろからサポートし、意図的に昔のセクハラ案件を掘り返しているとのことだが、噂の域を出ていない部分も少なくない。
 その真相、つまり Elain さんが社内で Me Too 運動をあおっているかどうかはともかく、離婚時に大量の株を受け取っている関係で、現在 Elain さんは筆頭株主だというから、現場は混乱を極めている。
 というのも、圧倒的かつ絶対的な存在であった Wynn 氏が去った今(もちろん Andrea さんも一緒に去っている)、取締役会の中で発言力が分散してしまい、離婚後、部外者的存在になっていた Elain さんの発言力が相対的に高まっているからだ。
 Elain さん自身は社長業などをやるつもりはまったく無いようだが、取締のメンバーの選出には口を挟みたいようで、それを決定する株主総会が 5月16日に開催されるというから、周囲はだんだん騒々しくなってきている。
 新経営陣の選出をめぐって、Elain さんと、投資ファンドなどの大株主との間の水面下での駆け引きが盛んになっているとのことだが、果たしてどんな新体制になるのか。
 そういった動きとは別に、マサチューセッツ州の当局が、現在建設中の Wynn Boston Harbor に対して、Wynn という名前を使用することは好ましくないとの決定を下したり、Wynn 氏の多額の寄付活動により建設された公共施設などの名称から Wynn の名前を削除する運動が起こるなど、Wynn Las Vegas 以外の部分でもセクハラ騒動の波紋が広がっている。
 株主総会の成り行き、そしてそこで選出される経営陣の今後の経営方針がどのようなものになるのか、しばらく目を離せそうもない。


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