週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2016年 12月 21日号
ハリウッド・セレブもお気に入りの 「エッグスラット」
 今週は、コスモポリタン・ホテル内にオープンした 「エッグスラット」EGGSLUT) のチーフシェフ Jason Diaz さん(写真右下) に話を聞いてきたので、この店およびこの料理について紹介してみたい。

エッグスラット  エッグスラットとは、ルーツをたどればロサンゼルス発祥のフードトラック(屋台形式の店と考えればよい) の名前、つまり固有名詞だが、今では料理の名前としても定着しつつある。
 ゴルゴンゾーラチーズ、シャンパン、スコッチウイスキー、越前ガニ、石狩鍋など、地名が食材や料理名として定着することはよくあるが、店の名前が一般名詞化することは珍しい。
 定着などと表現すると、何やら長い時間をかけてそうなったようにも聞こえるが、ルーツとなった店の出現も、料理名として一般名詞化してきたのも、ここ数年の話だ。それだけ速く情報が広がる時代になったということかもしれない。

エッグスラット  ちなみに日本の人気レシピサイト「クックパッド」でエッグスラットを調べてみると、248 ものレシピが掲載されているので(12月21日の時点)、わずか数年で海を超えて日本でも認知度が上がってきていることがうかがえる。
 なお正確にいうと、元祖ロサンゼルスの店の名前が EGGSLUT で、その店で出されていた人気メニューが SLUT だったが、いつの間にかその種の料理も EGGSLUT と呼ばれるようになった、というのが正しい。
 そしてスペルとしては、EGG と SLUT を離さずにくっつけて EGGSLUT と表記するわけだが、切り離した場合の SLUT の意味があまりよろしくないところが面白い (意味は各自で調べていただきたい)。下品な単語ではあるが、逆にそれが話題となり、世間の注目を集めることに少なからず貢献しているというから、何が功を奏するかわからないものだ。

エッグスラット  このたびオープンした店は、元祖 EGGSLUT の発祥の地であるロサンゼルスで成功した会社によるもので、いわば本家本元ということになる。
 Jason さんいわく、「一般名詞化されてきたとはいえ、店の名前として EGGSLUT を名乗ることができるのはウチだけ」 とのこと。
 「では、他の店がこの料理をメニュー内で EGGSLUT と表記することは許されるのか?」 との質問に関しては、「よくわからない」 と歯切れが悪い。
 それはいいとしても、店のロゴが全部大文字の EGGSLUT であったり、全部小文字の eggslut になっていたり統一されていないところは、なんとも心もとない。(右上の写真のほぼ中央に見える店内のロゴは小文字、一つ上の写真の右端に見えるロゴは大文字)
 もし今後この会社が全米展開や世界展開を目指すのであれば、そのへんのことはきちんとしておいたほうが良いだろう。ちなみに現在、ロサンゼルス地区に3店あるだけなので、今回のラスベガス店を含めて全部で4店しかない。

エッグスラット  さて、ではエッグスラットとはどんな料理なのか。じつは驚くほどシンプルなもので、料理という言葉を使うことをためらってしまうほど 「手抜き料理」 のように見受けられる。(右の写真内の右側に見えるガラス瓶に入っているものがエッグスラット。Jason さんから説明を受けてあとでわかったことだが、調理時間的にはぜんぜん手抜き料理ではない)
 小さなガラス瓶の中にマッシュポテトと生玉子を入れて、湯せんするだけ。他店や家庭では、香辛料を加えるなどマッシュポテトの味付けに多少のバリエーションはあるようだが、それでも基本的な食材はポテトと玉子だけだ。(ガラス瓶のサイズは内径 53mm、高さは 63mm と、かなり小さい)

エッグスラット  そのままで食べてもいいが、一般的には小さめにカットしたフランスパンのバゲットに乗せて食べるのが普通とされる。そして Jason さんいわく、乗せる前に、瓶の中のポテトと玉子を思いっきり混ぜ合わせるのが元祖ロサンゼルス流の食べ方とのこと。
 そうやって混ぜて、スプーンですくってバゲットに乗せようとしている場面が右上の写真。
 白いマッシュポテトと混ぜ合わせたわりにはかなり黄色が濃く見えるのは、黄身の色が濃い玉子を使っているかららしい。ちなみに右下の写真内に見えるのがこの店で使用している玉子だ。

エッグスラット  気になる味についてだが、想像以上のものでも想像以下のものでもなく、まさに 「マッシュポテトと半熟玉子を混ぜ合わせただけの味」 と考えて差し支えない。
 おもしろくもなんともない表現になってしまったが、「朝食の玉子料理なんてこんなもの」 と考えれば、これはこれで立派な料理といえるのかもしれない。少なくとも、目玉焼きとハッシュブラウンだけの朝食よりも大きく劣ることは無いはずだ。
 一般的にアメリカの朝食は玉子とポテトとベーコン、もしくはシリアル、よくてオムレツ程度と広がりが少ないので、そんなマンネリを打破したという意味では大いに意義ある料理といってよいのではないか。

エッグスラット  いくら存在意義があるとはいえ、平凡な味のこの料理が、なぜ一般名詞化するほど広まってきているのか。(右の写真はエッグスラットとは別メニューとして存在している玉子のバーガー。エッグスラットは量が少ないので、玉子を使った各種メニューも用意されている)
 それはフェイスブック、ツイッター、インスタグラムなど情報伝達手段の進化と、ジャスティン・ビーバーの発言で爆発的に広まったピコ太郎の PPAP 同様、やはり著名人からの情報発信などが大きいように思える。そしてそれをきっかけに、テレビ局なども番組内で取り上げ、さらに爆発的に広がっていくことになる。
 このエッグスラットも、複数のハリウッド・セレブたちがそれなりの情報発信をしたらしい。(具体的にどの有名人がどのような情報を発信したのかまでは、ラスベガス大全としては確認していない)
 そして彼らが気に入った理由の一つとして、マッシュポテトさえ作り置きしておけばすぐに出来るので、時間がない朝食には最適、といった利便性が評価されているようだ。(ハリウッド・セレブが自分で料理するのか、付き人に作らせるのかは知らないが)
 たしかに簡単に作れるように見えるし、彼らもこの店で食べないときは実際に短時間で作っているのかもしれない。
 しかし少なくともこの店のエッグスラットはそんなことはない。とてつもなく長い時間をかけて作っていることを Jason さんが教えてくれた。

エッグスラット  驚くことなかれ、1時間以上も湯せんして作るのだという。もちろん客が来る前にある程度は仕込んでおくわけだが、ファーストフード店の料理としては異例の長さといってよいだろう。
 右の写真がその調理場の様子だ。ガラス瓶の約3分の2 ほどの高さまでマッシュポテトを入れ、その上に生玉子を割って入れ、フタをして、摂氏 61度のお湯 (右上の写真内の温度計は華氏で表示されているので 142度) の中に約1時間入れておくというから、調理時間的にはとんでもなく手間のかかる料理ということになる。
 ちなみにこの 61度は、白身は固まり始めるが黄身は固まらないという温度で、この絶妙な温度でのスロークッキングこそが、うま味を引き出す秘訣らしい。

エッグスラット  というわけで、本来の味に気づかず拙速に 「平凡な味」 と書いてしまったが、実際にはハリウッド・セレブたちが自宅で作っているものなどよりも、はるかに絶妙な味わいがあるのかもしれない。
 新しいもの好きや、流行を先取りすることが好きな人は、ぜひ足を運んでみるとよいだろう。
 値段はキリの良いちょうど $10。メニュー内では、店の名前 EGGSLUT ではなく、元祖の名称 SLUT で表示されている。
 この $10、ハンバーガーやサンドイッチ類が $7、$8 という価格設定になっていることを考えると、サイズが小さいので量的にべらぼうに高い印象を受けるが、調理時間を考えるとやむを得ないといったところか。
 場所はコスモポリタン・ホテルのカジノフロアの一つ上の階。なお、エッグスラットという食べ物は、あくまでも午前中の時間帯に食べるもの。したがって曜日にもよるが、夕方4時には閉まってしまうことがあるので、午後から行く場合は事前にネットなどで営業時間を確認してから行くようにしたい。
 食べ終わったあとガラス瓶を記念に持ち帰ってしまう者が多いとのことだが、これはちゃんとリサイクルされているので、右上の写真のように所定の場所(カウンターに向かって右端の壁)に戻すことを忘れずに。

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