週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2016年 11月 30日号
中国をテーマにしたカジノホテル 「ラッキー・ドラゴン」
ラッキードラゴンカジノ  11月26日、北ストリップ地区に中国をテーマにしたカジノホテル 「ラッキー・ドラゴン」(写真右) が静かにオープンした。
 「静かに」 の理由は、開業セレモニーなどが予定されている正式な開業日よりも前、つまりフライング気味のオープンだからだ。
 正式なオープンは 12月3日で、その日は獅子舞なども予定されており、とても 「静かにオープン」 というわけにはいきそうもない。ちなみに 12月3日は、Hainan Airlines (海南航空) が、北京とラスベガスをノンストップで結ぶ路線の就航初日の翌日でもある。
(右上の写真内の左奥にわずかに暗く見えている建物が客室棟、画面の大部分を占めているのがカジノ、手前の道路はサハラ通り)

 場所は、ストリップ大通りとサハラ通りの交差点から西へ150メートルほどの地点。ホテル街の中心部から見た場合、「ストラトスフィア・タワーのすぐ手前のちょっと左側」と考えればわかりやすいかもしれない。
 部屋数はミニマム・ルールぎりぎりの 203部屋。(ラスベガスで新規にカジノを開業するためには、201以上の客室を設置しなければならないという法律がある。ダウンタウンにある小さなカジノなど、1991年以前に開業したカジノは既得権により対象外)
 部屋数だけで見るとラスベガスのカジノホテルとしては最小規模ということになるが、カジノは最小というほど小さくはない。理由は後述するが、このラッキー・ドラゴンはカジノをビジネスの柱にしようとしており、宿泊部門はルール上やむを得ず形式的に設置しただけといった感じで、ビジネスとしてはほとんど眼中にないからだ。

ラッキードラゴンカジノ  経営母体は、MGM 社やシーザーズ社などの大手企業ではなく、アメリカ永住権獲得のための EB-5 プログラムに参加する形で出資した個人投資家の集まりで、大部分が中国人とみられる。
( EB-5 プログラムとは、アメリカ国外の者が、50万ドル以上をアメリカ国内のビジネスに出資して雇用を増やすことに貢献できれば、その出資者にアメリカ永住権が与えられるという米国政府公認の移民プログラム)
 一般的に複数の個人からの EB-5 資金に頼ったビジネスは、出資者が素人集団であること、そして 「物言う株主」 ではないことから、経営陣が出資者に対して無責任になりがちで失敗しやすい傾向にあると言われており、ラッキー・ドラゴンの場合も開業前からその前途を心配する声が業界内には存在している。(右上の写真はカジノフロア)
 ちなみに奇遇にも、このラッキー・ドラゴンから最も近いカジノホテル SLS (元サハラホテル)も EB-5 を利用して資金を集めており、残念ながら経営状態はかんばしくないようだ。
 それでもラッキー・ドラゴンの場合、出資者こそ素人集団ではあるものの、運営を任されている経営陣はカジノ界のプロがほとんど。特に、設計からマーケティングに至るまで深く関与したとされる Bill Weidner 氏は、2009年までサンズ社(ベネチアンホテルを運営している会社)に社長として在籍し、同社がマカオやシンガポールに進出する際、中国人マーケットに精通しているということで手腕を発揮したカジノ界の大物だ。それを聞くと前途は明るいようにも思えてくるが、こればかりはなんともいえない。

ラッキードラゴンカジノ  経営陣がねらっているマーケットはミドルクラスの中国人ギャンブラーで、それより上のクラスのギャンブラーたちはベラージオやウィンなどの大型高級カジノホテルから手厚いサービス受けているためターゲットとしては考えていないという。
(ここでいう中国人とは、中国本土、台湾、香港はもちろんのこと、ロサンゼルスやサンフランシスコなどラスベガスの近隣都市に住む在米中国人も含む。右上の写真は今回の取材の窓口となっていろいろ説明してくれたスーパーバイザーの Anniさんと、カジノフロアの上の階にある VIPサロン内のバカラ・ディーラー Michelleさん)

ラッキードラゴンカジノ  ミドルクラスをねらうのはいいとしても、本当にその客層のギャンブラーがこのカジノに来てくれるのか少々気にはなる。
 というのも、既存のほとんどのカジノホテルも中国人ギャンブラーの存在を十分に意識したマーケティングをすでにしているので、わざわざ中心街から離れたこの場所にラッキー・ドラゴンを建設する意味がないようにも思えるからだ。
 しかし経営陣はそのようには考えていないようだ。既存のホテルの中国人向けサービス、たとえばどこのホテルにも中華料理店が存在しているわけだが、それはあくまでも一般のアメリカ人の利用も想定して運営されているため、中国人客にとっては 100%満足できる内容ではないらしい。そこにビジネスチャンスがあるという。(右上の写真はラッキー・ドラゴン内の中華料理レストラン)

ラッキードラゴンカジノ  このラッキー・ドラゴンは、完全に始めから中国人の利用しか想定していないため、館内の案内標識などはすべて中国語が優先 (英語も併記されている場合もあるが、あくまでも補完的な存在。右の写真はエレベーター内のボタン周辺の様子)、スタッフの言語もほぼ全員が中国語(標準語も広東語も)、カジノフロアに流れているBGMも中国のものといったぐあいに、中国人客にとってはアメリカの習慣やマナーなど異文化の存在をあまり気にすることなく祖国の感覚で振る舞えるようになっており、立地条件が少々悪くても差別化が可能で十分に勝算があるのだという。

ラッキードラゴンカジノ  ただ中心街から遠いばかりか、このホテルの周辺には何もないため、中国人ギャンブラーがここに宿泊することはほとんど期待していないとのこと。
 したがってターゲットとしてねらっているのは、宿泊客ではなく、あくまでも中心街の大型ホテルに宿泊している中国人たち、特にロサンゼルスなどから車でやって来る在米中国人で、彼らは食事やカジノを自分たちの流儀で楽しむために宿泊ホテルからラッキー・ドラゴンまで足を運んでくれるだろう、というのが経営陣の目論見だ。そのため客室数のわりに駐車場がかなり大きめに造られているという。

ラッキードラゴンカジノ  そのような戦略にもとづきながら、カジノとレストランにかなり力を入れていることが、現場に行くとよくわかる。(カジノやレストランがある建物とは裏腹に、宿泊施設はカジノから切り離された場所に設置され、フロントロビーなども人影もなく静まり返っている)
 中国人が好む風水の理論を徹底的に導入したカジノのフロアプラン、縁起物の高級シャンデリア、ラッキーカラーの赤で統一されたインテリア、フロアや部屋番号のみならずすべての部署の電話番号から縁起の悪い数字4を排除、バカラテーブルからは5という数字も排除(5の「ウゥー」という音は、何もなくなってしまう意味を表す単語と同じ音)、さらにブラックジャックのルールもラスベガスの標準よりも期待値を高く設定するなど、ギャンブラーの注目を集めることに努力を惜しんでいない。
 レストランもアメリカン・チャイニーズではない本物の中華料理にこだわるなど(値段は少々高めの設定だが)、その徹底ぶりは半端ではない。
 立地条件はあまりよくないが、現場スタッフの愛嬌が総じて良いなど、日本人ギャンブラーにとっても知っておいて損はないカジノホテルという印象を受ける。
 長くなってしまったので今週はこのへんにして、レストランそしてバカラやブラックジャックのルールなどを中心に正式開業後の様子を来週改めてお伝えしたい。

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