週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2016年 7月 6日号
2周年の「たびレジ」、テロ多発でも利用者数は低迷
 外務省が運営する旅の Registration こと 「たびレジ」 が、この7月で運営開始からちょうど2周年を迎える。
 「たびレジ」とは、海外旅行者がパソコンやスマートフォンを利用して自身の旅行日程やメールアドレスなどをあらかじめ外務省側に登録しておくシステムで、テロなど旅先での緊急事態発生時に、緊急一斉通報メールの受信、家族への連絡、現地の大使館や領事館とのやり取りなどにおいて役に立つとされる。登録は無料。もちろん任意で、強制的なものではない。
 なお、この「たびレジ」はあくまでも一般的な海外旅行者を対象としたもので、3か月を超える長期滞在者は、従来からある「在留届」で居住地や連絡先を外務省側に連絡することになっている。

たびレジ  せっかく開発され運用が始まったこの「たびレジ」、2年経過した今も、あまり利用されていないのが現状のようだ。(右はスマホ版たびレジのトップページ画面の一部、以下の画像も同様)
 ただ単に宣伝不足で知られていないだけなのか、それとも旅行日程という個人情報を提供することにためらいを感じる者が多いのか、はたまた外務省側への期待が低くメリットが感じられないのか、理由は定かではないが、とにかく 「たびレジに登録した」 という話をほとんど聞かないので、利用度が極めて低いことはたしかだろう。

 その一方で、世界各地では悲しい出来事がひんぱんに発生しているのもまた事実。一か月ほど前には米国フロリダ州のナイトクラブで約50人が死亡するという銃の乱射事件。そのあとすぐにイスタンブール空港での爆弾騒動、そして先週は、とうとうバングラデシュのダッカで日本人も巻き込まれるテロ事件が起こってしまった。また昨年から今年にかけて連鎖的に起こったフランスやベルギーでの悲劇も記憶に新しい。
 そのように今は 「たびレジ」を必要とする危険な事態が、いつ自分の身に降りかかってきてもおかしくない物騒なご時世で、まさに 「今使わずに、いつ使うのか」 と言いたくなるような状況にあるわけだが、それでも利用者が低迷したままなのはどうしたことか。

たびレジ  利用者が増えない最大の原因や責任は、現状を放置している外務省にあることは言うまでもないが、旅行業界の無関心ぶりも気になるところだ。
 この種のものの認知度の上昇には、旅行業界の協力が欠かせない。
 しかし残念なことに、日本の大手旅行代理店は、この 「たびレジ」 に対して積極的に取り組んでいないと聞く。つまり顧客に 「たびレジ」 の存在や登録をあえてうながすようなことはしていないようだ。
 個人情報の管理のむずかしさなど、各社それぞれ賛同しにくい事情もあるようだが、外務省としては歯がゆい思いをしているに違いない。
 そんな中、エイチ・アイ・エスDeNAトラベルだけは、外務省とデータを連携させるなど、「たびレジ」の普及に積極的に取り組んでいるというから頼もしい。

たびレジ  そこでエイチ・アイ・エスの本社(東京新宿。写真右)を訪ねて 「たびレジ」 への取り組み方などに関して話を聞いてみた。
 ところが、なんと驚くことに、「ヨーロッパ、アメリカ、オセアニア部門」 の責任者いわく、「一般の個人の海外旅行者には特にすすめるようなことはしていません。現在たびレジは、本社や一般の営業所ではなく、西新宿にある法人営業グループのみが取り扱っています」とのこと。
 つまり法人客にはかかわるが、一般の個人客にはかかわっていないということらしい。たしかに外務省のたびレジ公式サイトの提携企業のところには、「エイチ・アイ・エス」ではなく、「エイチ・アイ・エス 法人営業グループ」と書かれているので、こちらの勉強不足によって誤った部署を訪ねてしまったことになるが、一般の個人客を対象外としているのは意外だった。個人旅行者こそ緊急時のサポートを必要としているように思えるからだ。

たびレジ  各社それぞれ事情があるので、それ以上のことを追及することはしなかったが、システムを外務省と直結させたエイチ・アイ・エスでさえ、「個人客は対象外」というこのありさま。旅行業界全体が、たびレジにほとんど興味を示していないことは想像に難くない。
 たまたま通る機会があったので、ためしに成田空港の第1ターミナル出発ロビーにあるエイチ・アイ・エスのカウンター(法人の団体旅行などにもかかわっているはず) にいた二人のスタッフに聞いてみたところ、案の定、たびレジという名称そのものを聞いたことがないという。
 空港の出発ロビーにあるカウンターこそ、出発直前の人たちにスマートフォンによる登録を促す絶好の場所のようにも思えるが、そこを有効利用しようという流れにはなっていないようだ。法人客はすでに自動的に登録されているので告知する必要がないということかもしれないが、個人客こそ対象にしてほしい。
 ちなみにこれは余談になるが、業界関係者から聞いた話として、たびレジを一般個人旅行者に紹介しても何の利益にもならないばかりか、外務省側から事前に配信されるささいな危険情報などにその旅行予定者が過剰に反応し、旅行自体がキャンセルになってしまうリスクもあるという。

たびレジ  盛り上がりに欠ける 「たびレジ」 はこのまま利用されることなく自然消滅的に消え去ってしまうのか。役所主導で立ち上げた、いわゆる官製プロジェクトの失敗例は枚挙にいとまがないが、この 「たびレジ」 もそのような運命をたどるような気がしないでもない。
 ただ、まだ2年。それもほとんど使われていない。使ってみてダメだったら自然消滅も理解できるが、使われないまま消滅はいかがなものか。
 旅行会社側にとってメリットがなくても、利用者にとっては有意義なシステムと思えるので、とりあえずここでは使ってみることを奨励したい。
 とはいえ、使ってみたところで、その利便性を実体験として感じ取れないところが、この種のサービスの弱点ともいえる。なぜなら、テロなどの緊急事態が起こらなければ、何ごともなかったかのように忘れ去られ、使われることがないからだ。
 つまり 「使ってみよう」 といっても、それは 「登録してみよう」 ということであって、登録したあとの使い勝手などを、旅のあとに振り返って評価することなど、確率論的に限りなくゼロに近い。
 そのような現状を考えると、重宝した体験談などがないがゆえに、口コミなどで爆発的に広まる可能性も低く、外務省がいくら積極的に宣伝したところで認知度や利用率の上昇には限界があるだろう。

 なにやらどうでもいいサービスのようにも思えてくるし、さらに根本的な部分の疑問として、「外務省が何をしてくれるというのか。何も期待しないほうがよい」 といった指摘もある。
 旅行業界があまり積極的になっていないのも、そのへんの部分に理由があるのかもしれないが、「自己責任」という言葉がひんぱんに聞かれる昨今のご時世。「たびレジに登録しておいてよかった」 といった事態が起こらないことがベストではあるが、「登録しておけばよかった」となることは避けたいはずだ。旅行会社に頼らず、とりあえず自ら登録しておいて損はないのではないか。
URL は: https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/

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