週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2016年 6月 22日号
オリンピックも賭けの対象に、ただし選択肢は少なめ
オリンピックの競技への賭け  まもなくリオデジャネイロ・オリンピック。競技施設などの建設の遅れや運営資金難、さらにはジカ熱問題など不安は少なくないが、開催されることはほぼ間違いないだろう。
 日本選手の活躍などが今から楽しみな今回のリオ五輪、実はここラスベガスもこの大会と無縁ではない。なぜなら、オリンピックを賭けの対象とすることが合法化されたからだ。
 ご存じのようにラスベガスのカジノでは、スポーツ競技の勝敗などに対してお金を賭けることができ、実際に大半のカジノ・ホテルにはそのための窓口「スポーツブック」が存在している。(このページに掲載されてる写真は各カジノ・ホテルのスポーツブック)
 野球、バスケットボール、アメリカンフットボール、ボクシングなどは言うに及ばず、ゴルフ、サッカー、テニス、カーレースなど、ありとあらゆるスポーツが賭けの対象となっている。

オリンピックの競技への賭け  ところがこれまで長らくオリンピックは対象外だった。理由は、一般的なプロスポーツとは異なり、無名の選手が多く出場するため過去のデータが少なく、胴元側としてオッズを決めにくいということもさることながら、オリンピックに限らず、アマチュアのスポーツ、とりわけ個人競技は賭けの対象にすべきではない、という暗黙の了解があったからだ。
 その背景にあるのは八百長に対する懸念であることは言うまでもない。アマチュアの場合、特にマイナーな競技種目であればあるほど、実力があっても安定した収入が確約されているわけではなく、日々の生活に困っている者も少なくないとされる。
 そんな状況において、自分が本命視されカジノで賭けの対象となっていることを知った場合、わざと負ける八百長が頭の中をよぎっても不思議ではない。つまり家族や友人などに、自身が負けるほう(自分が本命であるほど配当倍率が高い)に賭けさせ、大金を手にしようと考える。また、反社会勢力から大金を提示され、八百長試合の話を持ちかけられることもあるだろう。
 一方、それなりの名誉や収入を確保している一流のプロ選手の場合、そのような誘惑に流されにくい。どんなに大金を積まれても、不正行為が発覚し現在のステータスを失うリスクを取ることは、割に合わないことを知っているからだ。もちろんプロの世界にも八百長は存在するが、年収やステータスが抑止力となっていることはまちがいないだろう。

オリンピックの競技への賭け  ではこれまでラスベガスのスポーツブックではアマチュアの試合は完全に対象外だったかというと、そうでもない。
 その典型は NCAA(全米大学体育協会)の大学バスケットボールだ。これは日本の高校野球のように全米で盛り上がるビッグイベントで、カジノにとっても大金が動くドル箱のスポーツ競技といわれている。
 ただこれは団体競技なので八百長をやりにくいという背景があり、「とりあえず健全性が保たれている」 との前提で賭けが認められている。

オリンピックの競技への賭け  そのような状況で長らく運営されてきたスポーツブックの業界に、昨年オリンピック解禁論が浮上したわけだが、ネバダ州の当局はそれをすんなりと認めた。
 もちろん八百長の懸念がなくなったわけではないので、なんでもかんでも無条件でやっていいということではなく、「賭けの対象とするのはプロなども参加する団体競技が望ましい。個人競技の場合、世界的に名の通った超一流の選手などに限るべき」 という努力目標的な附帯条項が付いている。

 各カジノにとって今回のリオ五輪は解禁後の初めての大会ということになり、新たなビジネス・チャンスを得たという意味で期待が大きい反面、経験がないだけに対象競技の絞り込みや、それぞれの賭けに対する採算性など未知の部分も多く、解禁決定後、各カジノは互いにライバルの出方などをうかがっていた。
 また賭ける側であるスポーツブック・ファンも、どのような賭けが登場するのか、その発表を楽しみに待っていたわけだが、このたび各カジノの方針がほぼ出そろったので、それを紹介してみたい。

オリンピックの競技への賭け  現在の状況を端的にいうと、すべてのカジノがリオ五輪に興味を示しているわけではなく、また参加することにしたカジノにおいても、賭けの対象としている競技の数は限定的で、賭ける側からすると選択肢が少なく、自分にとって興味がある競技が含まれていない可能性が高い、ということになりそうだ。
 現時点で参加を表明し実際にオッズを発表しているカジノは、スポーツブックの総本山的な存在として昔から定評のあるウェストゲート・ホテル (かつてのラスベガス・ヒルトン) と シーザーズ系のホテルで、逆にラスベガスで最大勢力を誇る MGM系のホテルや、CG Technology 社(かつての Cantor Gaming 社)が運営しているスポーツブックはオリンピックに関わる予定がないようだ。
(CG Technology 社とは、ベネチアン、パラッツォ、トロピカーナ、コスモポリタン、ハードロック、パームス、Mリゾートの各ホテルがスポーツブックの運営業務を委託している会社)

 では、ウェストゲートとシーザーズ系のホテルはどのような賭けを用意しているのか。まずはシーザーズ系のホテルから先に書き出してみると (シーザーズ系のホテルとは、シーザーズパレス、フラミンゴ、バリーズ、パリス、プラネットハリウッド、クロムウェル、ハラーズ、リンク、リオ)、以下のように賭けの種類はたったの5つだけとなっている。
 その内容は団体競技、それも注目度が高そうなバスケットボールとサッカー、それに超一流の人気選手が出場する個人競技にしぼられており、八百長問題などが起こりそうもないという意味で無難な選択といえそうだが、わずか5つだけという部分を見ると、本気でオリンピックをカジノの収益に結び付けたいとは考えていないように見受けられる。(オッズの数値の読み方は、この記事の一番最後に掲載。またオッズは日々変動する可能性がある)

オリンピックの競技への賭け
 ウェストゲートはどうかというと、こちらはさすがにスポーツブックを全面に押し出しているホテルだけに、賭けの種類は豊富だ。ただしジョコビッチやボルトのような個人を対象とした賭けは一つもなく、すべては団体競技で、さらにそれとは別に国別の金メダルの獲得総数が賭けの対象となっている。個人競技がないのはやや寂しいが、健全性を保つためには止むを得ないといったところか。
 なお、同じ団体競技でも、シーザーズ系とは賭け方が異なっている。アメリカやブラジルなどある特定の国がその競技で金メダルを取れるかどうかではなく、以下の表からもわかる通り、その競技に出場するそれぞれの国の金メダルの可能性に対して賭けられるようになっている。
 対象となっている競技種目は、サッカー、バスケット、バレー、水球、フィールドホッケー、7人制ラグビーのそれぞれ男女、合計12競技。それらすべての参加国のオッズをここに書き出すのは量的に無理があるので、日本が対象となっている競技についてだけ、また国別金メダルの数に関しては主要国だけを以下に書き出してみた。

オリンピックの競技への賭け
オリンピックの競技への賭け
オリンピックの競技への賭け

 さて、今回が初めての経験となるオリンピックへの賭けだが、せっかく解禁になったものの、カジノにとってのビジネスとしては、悲観的な意見が多い。
 その最大の理由は、期間的に賭けに参加しづらいという問題だ。なぜなら、その競技が始まる前に賭ける必要があり、そして的中した場合の配当金の受け取りは競技の終了後になるわけだが、一般の観光客はそれほど長い期間、ラスベガスに滞在していない。
 的中投票券は郵送での換金も可能ではあるものの、受け取り小切手の入金の手間や金融機関への手数料などを考えると現実的ではない。
 結局、地元民ぐらいしか賭けに参加できないことになるが、一般のアメリカ市民は、野球、フットボール、バスケットなどのプロスポーツに比べ、オリンピックへの関心は低い。

 今回のリオ大会が最初で最後に終わってしまうのか、それとも逆に4年後の東京大会ではもっと多くのカジノが参加することになるのか、はたして結果はいかに。
 さて最後に、これは余談になってしまうが、ロシアはドーピング問題で揺れており、まだ主要選手の参加が確定していないようなので、「金メダルの総獲得数 17.5個以下」 に賭けると的中確率が高いとの噂もある。オッズが大きく変動する前に賭けておくと、いいことがあるかもしれない。

【オッズの数値の読み方】
 オッズの数値の頭に付いてるプラスとマイナスの記号は、数学や一般的な概念のプラス・マイナスとはまったく関係ない。
 プラス記号のあとに続く数値は、「100ドルを賭けて的中すると、その金額を受け取ることができますよ」 という意味。言い換えれば、この数値は「100ドルを賭けて勝った場合の利益の額」ということになり、これはわかりやすい。たとえば、男子サッカーにおけるブラジルの +220 のオッズに 100ドル賭けて的中した場合、元金の 100ドルと利益の 220ドルの合計 320 ドルを窓口で受け取ることになる。配当倍率という形での表記にしたら 2.2 倍だ。
 さて問題はマイナスの場合。こちらは少しわかりにくい。マイナス記号に続く数値は、「100ドル勝ちたかったらその金額を賭けなさい」 という意味だ。したがって、ウサイン・ボルト選手の -170 のオッズに 170ドル賭けて的中すると、元金の 170ドルと利益の 100ドルの合計 270 ドルを窓口で受け取ることになる。もちろん賭け金はもっと少額でもかまわない。
 参考までに、マイナスで表示されるオッズの数値の絶対値 A から、一般的な表記の配当倍率 B を求める計算式は、
B = (100 / A)+ 1 になる。

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