週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2016年 1月 27日号
空港トラム、まちがい乗車が多すぎるため、色分けで区別
ラスベガス国際空港  ラスベガス国際空港(マッキャラン空港)において、飛行機を降りてからバゲッジクレイム(スーツケースなどが出てくる回転台があるエリア)に行くまでの間に、まちがったトラムに乗ってしまうトラブルがあとを絶たない。
 すぐにまちがいに気づいたとしても、保安上の理由により、乗って来たトラムで元の場所に戻ることは許されておらず、また距離的に徒歩で正しいターミナルへ行くこともほとんど不可能なため、スーツケースを受け取れないばかりか、バゲッジクレイムで待っているガイドに会うことができないなど、時間的な損害や精神的な苦労は計り知れない。4年前から慢性的に発生している問題だ。

 原因は、空港の構造によるものなので日本人観光客に限ったことではないが、現場で日々働いている日系旅行会社のスタッフなどの話によると、迷子になるのは海外旅行初心者ではなく、ラスベガスを何度も訪れているリピーターに多く、特に日本人の場合、このラスベガス大全の読者も少なくないという。
 さらに悪いことに、迷子になったりするのはその本人だけでなく、機内で知り合った初ベガスの人たちも巻き込んでしまうことがあるというから、当サイトとしても見過ごすわけにはいかない。
 この問題に関してはこれまでにも何度か 「ラスベガス大全でもきちんと告知すべき」との指摘を日系旅行業界などから受けてきたりもしたが、このたび空港管理当局もこのトラブルの頻発を問題視し、色分けでトラムに名称をつけるなど、やっと重い腰を上げ改善策に取り組み始めたので、これを機会にこの問題の背景と現場の状況をレポートしてみたい。(案内標識だけは1年以上前から色分けされていたが、トラムそのものや乗り場を色による名称で区別し、それをハッキリと可視化したのはつい最近になってのこと)

【ターミナルの新設】
 世界中どこの空港においても、利用者が関わる部分は大きく分けて2つの施設で構成されている。出発客がスーツケースを預けたりするチェックインカウンターや到着客が荷物を受け取るバゲッジクレイムなどがある建物と、搭乗口の集合体となっている建物だ。
 空港によって呼び方が異なることもあるが、一般的には前者の施設を「ターミナル」、後者を「ゲート」と呼ぶことが多い。
 そしてこのターミナルとゲートは、一体化している小さな空港もあれば、それぞれが遠く離れていてトラムや動く歩道が必要なほどの大きな空港もあるが、いずれの場合も、互いが不可分の関係にあり、一対一に対応していることがほとんどだ。
ラスベガス国際空港  また、ターミナルとゲートがそれぞれ複数存在する巨大空港の場合においても同様で、たとえば成田や羽田などのように、第1ターミナルとそのゲート、第2ターミナルとそのゲートは、位置的に独立した施設として運用されており、1ヶ所にまとまっているゲートの集合体が異なる複数のターミナルを共有したりすることは原則としてない。
 ところがラスベガスのマッキャラン空港の場合、搭乗口の数がどんどん増えてゲート施設が大きくなるにしたがい、今まで接続されていたターミナルではチェックインカウンターやバゲッジクレイムの許容量を超えてしまうとのことで、新たなターミナルが建設され、それを 2012年、従来から使用しているゲートに接続してしまったのである。欠陥とまでは言えないまでも、理想的な構造ではないことだけはたしかだ。

【現場の構造】
ラスベガス国際空港  右の図はマッキャラン空港の公式サイトから拝借したものだが、この図からもわかる通り、同空港にはゲート施設が から まで4つある。
 そしてやっかいなことに、日本からの観光客が利用する航空会社の大部分は、トラブルの発生源となっている ゲートに到着する。
 一方のターミナルに関しては、長年に渡りメインの第1ターミナル(T1)と小規模な第2ターミナル(T2)が存在していたが、2012年、老朽化その他の理由により T2 が閉鎖され(したがってこの図には描かれていない)、新設された第3ターミナル(T3)が加わった。そしてその T3 はトラムによって Dゲートと接続されることに。
 その結果、2012年までは Dゲートに到着した乗客のすべてが T1 に向かうトラムに乗り(図の青い線)、T1 のバゲッジクレイムでスーツケースを受け取っていたが、2012年以降は T3 に向かうトラムも新設されたため(赤い線)、自分のスーツケースがどっちのターミナルに出てくるか、またガイドはどっちのターミナルで待っているのかなどをよく考えながら乗らないと、大変なトラブルになってしまう。(保安上の理由で、まちがったトラムに乗ってしまっても、逆戻りできない構造になっている)

【トラブルが多い理由】
ラスベガス国際空港  トラブルの最大の原因がこの構造にあることは言うまでもないが、慣れ、不注意、案内の不備、といった人的な要素も見逃せない。
 2012年以前にベガスを訪れたことがある者は、T1 に向かうトラムに乗った経験があり、その乗り場の位置も知っているため、何も考えずにそっちに向かってしまう。
 その傾向は、訪問回数が多いリピーターほど顕著で、親切心なのか、機内で知り合ったベガス初心者の乗客などに「このトラムに乗って行けばいいんですよ」と得意気に説明しながら自分と一緒に他人まで T1 に誘導しまう世話好きもあとを絶たない。そういうときに限って、彼らはユナイテッド航空の乗客だったりする。ちなみにユナイテッド航空の乗客のスーツケースは T3 に出てくる。デルタ航空やアメリカン航空は T1 だ。

 初心者は念入りに案内標識などを確認するので大丈夫かと思いきや、そうとも限らない。何も深いことを考えずに、自分と一緒の飛行機を降りた他の乗客のあとを、ただ黙って付いて行く者が少なくないからだ。その乗客がまちがったトラムに向かってしまえば、自分もまちがえることになる。
 トイレなどに行ったことが裏目に出てしまうこともあるようだ。たとえばアメリカン航空で到着した者が、ゲートから降りてすぐにトイレに入り、トイレから出てきたころには、通路を歩いている人たちの大部分がユナイテッド航空から降りてきた人たちばかり、ということもあり得る。その場合、そのまま人の流れに沿って進むと、まちがったトラムに乗ってしまうことになりかねない。

ラスベガス国際空港  現場の案内標識も、これまでのものは完璧とは言いがたい。トラムに2つの路線があることは示されていたが、工夫が足りず、トラブルの軽減にはあまり役に立っていなかったからだ。(上の写真は数ヶ月前までのもの。クリックして拡大させるとわかるが、画面中央やや右に、直進が T3 行きのトラム、左が T1 行きを示す矢印などが掲示されているものの、その矢印はどちらも赤で、色分けの発想にまでは至っていない)
 また運が悪いことに、T3 へ向かうトラムの乗り場が視界に入りにくい場所にあることも、トラブルが減らない理由のひとつといってよいだろう。
 両路線の乗り場が同じような場所に平行に並んでいれば、意識しなくても路線が2つあることに気づくが、実際にはそうなっていない。よほど注意していない限り、見えているほうのトラムに黙って乗ってしまうのが人間の心理というものだ。

【改善策】
ラスベガス国際空港  このたび空港管理当局が取った改善策は、トラムの路線そのものに色で名前を付けるという方法。T1 行きが青、つまり Blue Line、T3 が赤で Red Line だ。(写真)
 大したことではないようにも思えるが、人間の心理や行動様式を考えると、それなりに効果があると期待して良いのではないか。
 というのも、トラム乗り場に至るまでのコンコースなどに、いくらていねいに「T1 行きと T3 行きがあるので要注意」などと同じ色の文字で表示したところで、たとえそれが視界に入ったとしても、ぼんやりしていたら脳の中にまでは入って来ないからだ。
ラスベガス国際空港  一方、同じような案内でも青と赤で明示されていれば、あまり意識していなくても明確な色の違いに気づき、そのメッセージが頭の中に飛び込んで来やすい。
 RED LINE という言葉が目に入れば、よほど鈍感な者でない限り「ほかの色の路線もありそうだな。このトラムでいいのだろうか」と気づくはずである。

ラスベガス国際空港  この色分けによる方法でどの程度トラブルが減っているのか、まだ実際の数値などを聞いていないが、少なくとも旅行会社などが注意事項として現場の様子を事前に顧客に説明する際、口頭であろうが書面であろうが、かなり簡単になったことだけはたしかで、それは結果的に利用者にとっても記憶に留めやすくなっていることはまちがいないだろう。
 「長いエスカレーターを降りたら左に見えるトラムに乗ってください」と言われるよりも、「乗るのは青のトラムですよ」のほうがわかりやすいし記憶に残りやすい。
 というわけで、今後は自分が乗るラスベガスまでの国内線の航空会社に対して以下のように覚えておけば、まちがうことはないはずだ。(日本人観光客が使いそうな航空会社だけを記載)

 青のトラム: デルタ、アメリカン、
 赤のトラム: ユナイテッド、エアカナダ、バージン、ハワイアン

(航空会社間の提携関係により、国際線が日本航空だった場合、乗り継ぐラスベガスまでの国内線はアメリカン航空に、全日空だった場合はユナイテッド航空になる可能性が高い。なお、もしトラムをまちがえて逆のターミナルへ行ってしまった場合、空港が運営するシャトルバスで T1 と T3 の間を移動するという方法もあるが、ここまでの説明を読んだ人がまちがえるとは思えないので、そのバスに関する説明は割愛)

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