週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2015年 8月 12日号
トランプのマジシャン、テレビ番組経由でベガス・デビュー
 「トランプが中心」、といっても共和党の選挙戦の話ではない。あちらはドナルド・トランプ、こちらはトランプの魔術師マット・フランコ。
 その魔術師が、先週の水曜日に念願のラスベガス・デビューを果たしたというのでさっそく観てきた。

Mat Franco  「念願の」 と表現すると、長年苦労してきたような響きもあるが、マット・フランコの年齢はまだ 27歳。それでも本人いわく、ラスベガスのステージは子供の頃からの憧れだった、とのことなので、まさに念願かなったりといったところだろう。
 ちなみに 2003年、15歳のときにラスベガスのリビエラ・ホテルのショーで脇役程度でステージに立ったことはあるらしい。出身はアメリカ東海岸地区のロードアイランド州。

Mat Franco  そんなマット・フランコがデビューの場所として選んだのはリンク・ホテル (写真右、クリックまたはタップで拡大)。かつてはインペリアル・パレスと呼ばれていたホテルだ。
 老朽化が目立つ古いホテルではあるが、ロケーション的にはベガスのほぼ中央に位置する一等地。さらに公演時刻もゴールデンタイムの午後7時となれば、実績のない若手マジシャンにとっては十分すぎるほどの好条件で、これ以上を望むのはぜいたくというもの。これで成功しなければ、それは本人の実力がたりなかったと評価されても仕方がない。

Mat Franco  さて気になる集客はどうかというと、驚くことなかれ。まだ始まって数日しか経過していないので評価するのは早計だが、なんと、ここまでの公演はほぼすべて完売に近いというから恐れ入る。
 広く知られるミュージカルなどの公演ならいざ知らず、通常、デビュー直後のマジックショーの場合、名前が知られてくるまでは会場の半分も埋まらないのが普通だ。名前どころか、宣伝広告などが行き渡るまでは、公演そのものの存在すら認知されていないことが多く、スタート直後から満席というのは極めて異例といってよいだろう。

 ではなぜ満席になっているのか。それは、今回の公演が実質的なデビューではあるものの、このマジシャンは無名ではないからだ。
 マット・フランコは、全国的に知られる人気オーディション番組「America's Got Talent」に昨年何回も出場し、最後まで勝ち抜き、2014年のセッションのチャンピオンに輝いたという実績の持ち主。したがってアメリカの一般市民の間では、彼の顔を一度や二度は見たことがあるという人が多く、新人といっても認知度は非常に高い。
 そんなこともあり、多くの観客にとって初対面の見知らぬ芸人といった存在ではなく、始めから心を開き、馴染みの芸人に友達感覚で会っているようなもので、実際の会場の盛り上がり方や雰囲気が一般のマジックショーとは大きく異なっているところが、このショーの特徴だ。インターネットの時代とはいえ、まだまだテレビの影響力は絶大のようだ。

Mat Franco  さてショーの内容はどうかというと、「すべてがトランプ」 とまでは言わないまでも、最初から最後まで、マジックのほとんどがトランプ関連と考えてよい。つまり小手先の技を使ったハンドマジックが中心で、人体切断とか空中浮遊といった大掛かりなイリュージョン系の出し物はほとんど無い。
(彼自身がステージから消えて、すぐに客席から登場するという場面が一回だけあるが、それも決して大掛かりなものではない)
 したがって、通常のマジックショーと同様なものを想像して行くと、ガッカリすることになりかねないので注意が必要だ。
 それともう一つ注意しておきたいことは、トークが多いということ。いわゆるコメディーマジックとは異なるものの、話術で観客を盛り上げる要素が多分に含まれているので、英語のリスニング能力はある程度あったほうがよい。
 そのようなわけで、万人受けするショーではないということを、あらかじめ頭に入れておく必要があるが、トランプさばきだけは他に類を見ない卓越した技術を持っているので、その種のマジックに興味がある人にとってはぜひ観ておきたい必見のショーといってよいだろう。

 なおこれは完全にどうでもいい余談だが、このショーの中でインスタント・ラーメンが登場する。それも1個や2個ではない。なんと、約200袋ほどのラーメン(袋麺) がステージ上に無造作に置かれ、その中から観客の一人が好きなラーメンを選んでいくという形でマジックは進行する。そしてその選んだ袋麺を開封し、中からスープの粉が入った袋を取り出すと...。(あとは観てからのお楽しみ)
 いくらラーメンがブームといえども、こんな場面で登場するのは日本人としてうれしい限りだ。
 「袋麺 = 日本 とは限らないぞ!」 と言われそうだが、そのシーンの背景の舞台セットは、吉野家などの看板が描かれた日本の飲み屋街になっているので、日本を想定していることはまちがいない。「吉野家は日本だけではないぞ!」 と反論している人、実際に会場へ足を運び、吉野家以外の看板を見に行ってみよう。

Mat Franco  会場は、カジノフロアの上の階にある何十年も前から存在するシアターだが、このたび大幅にリニューアルされ、かなりきれいになった。
 特に評価したいのがイスの高さ。ここの会場に限らず、フロアに傾斜がない部分は、前の人の頭がじゃまになるという問題が常につきまとうが、このシアターでは、今回のリニューアルで高さが異なるイスを導入し、その問題を解決している。右上の写真を見ればわかる通り、うしろの列になればなるほどイスの高さが高くなっていることが見て取れる。アメリカ人に比べ総じて背が低い日本人にとってはありがたい設計思想だ。
 なお座席は、映画館や一般の劇場のような固定式ではなく、各ショーやイベントに合わせて増減できる可動式。このショーにおけるフロア・フォーメーションでの座席数は 562。

 公演は、原則として水曜日を除く毎晩 7:00pm から。チケット価格は、40.45ドル〜99.95ドルで、チケットマスター(ticketmaster.com)にて購入可能だが、現在はまだサイトに不具合があるのか、うまく買うことができなかったりする。もしオンラインで買えなかった場合は、現場のチケット売り場へ早めに出向いて買うとよい。
 チケット売り場やシアターの場所は、リンクホテルのチェックインカウンターに向かって左手に見えるエスカレーターを登り切ったところ。

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