週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2014年 05月 21日号
トロピカーナに場所を移し、マンマ・ミーアが5年ぶりに復活
MAMMA MIA  5月17日、トロピカーナ・ホテルのシアターで人気ミュージカル 「マンマ・ミーア」が正式にスタートした。(プレビュー公演は 5月8日から始まっていた)
 マンマ・ミーアのラスベガス公演は、2003年2月から2009年1月までマンダレイベイ・ホテルでも開催されていたので、5年ぶりの復活公演ということになる。(右の写真は現在のトロピカーナ・ホテル)
 奇遇にも東京公演が今月8日に終了しているので、タイミング的には入れ替わり開催といった感じになるが、運営組織がまったく異なり、東京の終演とは何ら関係ない。

 日本も含め世界的に広く知られるミュージカルのためマンマ・ミーアそのものの説明はあえて省力するとして (あらすじだけ最後に記載)、マンダレイベイ公演(以下、前公演) との違いなどを中心にレポートしてみたい。

MAMMA MIA  基本的なあらすじなどに違いがないのは当然だが、舞台セットなど細部においては前公演と異なる部分が散見される。
 もちろんまったく同じにする必要もなく、また客側も多少の変化を期待しているはずで、異なる部分があって大いにかまわないわけだが、同じにしたくてもできなかったという事情があったことは容易に想像がつく。
 その最大の理由は劇場そのものの物理的なちがいだ。前公演の客席数は約1700、今回のは約1100。客席の規模が小さくなればステージのサイズも連動するのは自然な成り行きで、幅も奥行きも高さもひと回り小さい。結果的に前公演で使っていたような大規模な舞台セットはステージに収まらず、すべての場面においてコンパクト化されている。

 そのように書くと、みすぼらしく貧弱なショーになったかのようにも思われるが、そう考えるべきではないだろう。前公演の会場が異常に大きすぎただけで、このトロピカーナの劇場が正しいサイズと考えたい。いや、まだ大きすぎるかもしれない。
 そもそもミュージカルの会場は 1000席以下が当たり前で、オフブロードウェイにいたっては 500席未満だ。1500席前後が標準であるかのような昨今のラスベガスの常識が非常識ということになる。

MAMMA MIA  ということで、サイズが少しでも常識に近づいたと考えると、コンパクト化はぜんぜん悪いことではなく、必要かつ十分な内容に仕上がっているといってよいのではないか。
 ちなみに、スペース的な制約があるため生バンド演奏は目視できる位置に存在していないが、演奏されている音楽は基本的にすべて生、つまり録音された音源ではない。また演奏自体も高いレベルにあり、規模が小さくなったからといって、この部分で予算をケチっている様子はうかがえない。
 一方、各役者の歌手としての技量は前公演のほうがよかったように感じた。ただ、何年も前の公演との比較なので、記憶があいまいな部分もあり、気のせいという可能性は十分にある。
 披露される曲目は前公演とまったく同じ22曲 (以下に曲目リストを掲載)。これは同じにしないと原作を変えてしまうことになるので、変化を期待すべき部分ではないだろう。

MAMMA MIA  変化といえば、リピーターにとって楽しみな部分はやはり舞台セットなどになると思われるが、こまかいことにこだわる者は、ややがっかりするかもしれない。規模が小さくなったことは良いとして、質的に少し安っぽくなった部分が見受けられるからだ。
 たとえば、主役のソフィーとその彼が満月に向かって歩き出す最後の部分、前公演では鮮やかなブルーと白が美しい小舟、それに銀白色に輝く大きな満月が非常に印象的なラストシーンを演出していたが、今回のトロピカーナ公演では満月の見せかたが平凡であるばかりか、船にいたってはその存在すらない。
 ついでなので欠点をもう一つあげておくと、これはマンマ・ミーアそのものに関することではないが、客席フロアの傾斜が十分とはいえず、前の座席の人の頭がじゃまになり、視界をブロックされる可能性がある。
 会場の現場スタッフもこの問題を認識しているのか、同じセクション内での座席の移動を黙認している様子なので、自分の前の席に背が高い人が座っている場合は、前にだれもいない位置の席に移動するなどして対応してみるとよいだろう。満席になるほど混むことはないと思われるので、そのような席をさがすこと自体はむずかしくないはずだ。(満席にならないのは、会場が大きすぎるラスベガスのショー全体にいえることで、このマンマ・ミーアが特に不人気という意味ではない)

MAMMA MIA  いいこともあれば悪いこともあるわけだが、このマンマ・ミーアは、オペラ座の怪人のように一つのテーマ曲に沿って進行していくミュージカルとは異なり、ABBA というテーマに関連した複数の曲が次から次へと演奏されながらそれに添ってストーリーが展開していくいわゆる 「ジュークボックス・ミュージカル」 になっているため、楽しめるかどうかは ABBA に対する思い入れの大小で決まってしまいがちだ。(右上の写真は、マンマ・ミーアの公演開始を記念してデザインされたブラックジャックテーブル)
 したがって、ABBA の曲と自分の青春時代の思い出をオーバーラップさせることができる世代ならば、舞台セットが少々安っぽく見えようが、フロアの傾斜が不十分であろうが、無条件で楽しめるショーと考えてよいのではないか。
 実際に大多数の観客もそういった部分、つまりストーリーとは特に関係なく ABBA にまつわる懐古的な感動を求めて会場に足を運んでいると思われ、その証拠にほとんどの観客は ABBA の全盛時代と青春時代が重なる 50代以上の中高年世代だ。
 だからこそ一番盛り上がるのは、前述の満月のラストシーンでストーリーが完全に終わったあと、役者全員がステージに登場し、ABBA の最高傑作 「ダンシング・クイーン」 をみんなで大合唱する場面で、当時のディスコを彷彿させるノスタルジックな雰囲気が漂うなか、観客も総立ちになり、ABBA サウンドに満たされた会場の興奮が頂点に達したところで幕となる。

MAMMA MIA  公演は、日曜日から木曜日が 7:30pm、土曜日は 5:30pm と 9:00pm の2回、金曜日は休演。
 開演後 60分で 15分の休憩、その後また 60分、つまり正味約2時間でトータルは2時間15分。
 チケット料金は、いくつものセクションに分かれておりかなり複雑だが、劇場近くのボックスオフィスで買うと、税金や販売手数料を含めておおむね $65〜$160。ただし市内に点在する半額チケットショップでも売りだされているのでそっちを利用したほうがよいだろう。
 最後に、一般の日本人にとっては最も重要な注意事項として会場内の気温のこと。アメリカ人は日本人に比べて寒さに強いようで、とにかくアメリカでは冷房が効きすぎる傾向にあることはよく知られているが、ここのシアターも例外ではなく、冷房の吹き出し口の近くの席などは非常に寒い。半袖では耐えられない可能性があるので、外がどんなに真夏の猛暑であろうとも、必ず羽織るものを持参するようにしたい。

曲目リスト
 CHIQUITITA  DANCING QUEEN  DOES YOUR MOTHER KNOW
 ONE OF US  HONEY, HONEY  I DO, I DO, I DO, I DO, I DO
 I HAVE A DREAM  GIMME! GIMME! GIMME!  LAY ALL YOUR LOVE ON ME
 MAMMA MIA  MONEY, MONEY, MONEY  KNOWING ME, KNOWING YOU
 OUR LAST SUMMER  THE NAME OF THE GAME  SLIPPING THROUGH MY FINGERS
 SUPER TROUPER  TAKE A CHANCE ON ME  THANK YOU FOR THE MUSIC
 S.O.S.  THE WINNER TAKES IT ALL  UNDER ATTACK
 VOULEZ-VOUS       

【あらすじ】
 シングルマザーのドナと、ドナによって育てられた娘のソフィー(20才)が主人公。
 ドナはギリシャの田舎で小さいながらも自分のホテルを経営しており、毎日いそがしい日々をおくっている。一方のソフィーはすでに婚約しており、結婚式の準備に余念がない。
 そんなある日、ソフィーは、偶然見つけた母親ドナの古い日記をこっそり見てしまい、自分が生まれたころの 20年ほど前、ドナには 3人の男友達がいたことを知る。父親の存在をまったく知らされていなかったソフィーは、その3人のうちのだれかが自分の父親であると確信し、結婚式でバージンロードを一緒に歩いてもらう父親を見つけるために、ドナに秘密でその 3人の男に結婚式の招待状を送ってしまう。(このマンマ・ミーアは、その招待状の投函シーンから始まる)
 一方のドナは、遠方に住む昔の女友達2人をソフィーの結婚式に招待することに。その2人はかつてドナがバンドを組んでいた時代の音楽仲間で、結婚式の前夜、ドナが経営するホテルに到着するやいなや、ひさしぶりの再会に3人は大はしゃぎ。
 それと平行して、ソフィーがこっそり招待していた男3人もドナのホテルに到着。3人の男と対面したドナはびっくり仰天。
 ここから新郎新婦に加え、女3人、男3人のドタバタ劇が始まり、いよいよ結婚式の当日を迎えることになる。



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