週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2014年 05月 14日号
量も値段も普通ではないラーメン店がモンテカルロにオープン
 アメリカ全土でラーメンが大ブームになっていることと、ラスベガスのホテル街でもラーメンを楽しめるようになったことは 6週前のこのコーナー(バックナンバー897号) で取り上げたばかりだが、また新たにラーメン店がオープンしたので紹介してみたい。

Yusho  「日本を離れて数日が経過すると、どうしてもラーメンが恋しくなる」
 そんな人が少なくないのか、読者からの食事に関する問い合わせで一番多いのはやはりラーメン店だ。
 昨今の大ブームのおかげで、地元民を相手にした郊外型の店舗は雨後の竹の子のごとく激増中だが、観光客が滞在するホテル街にはまだそれほど多くは存在しない。そんな状況下、ラーメンファンにとっては、徒歩でアクセスできれば少々変則的な店でも気になるもの。
 というわけで、今回紹介するのは、このたびモンテカルロ・ホテルに登場したラーメン店 yusho。(右上の写真はこの店の屋外セクション、クリックで拡大表示)
 ラーメンそのものの内容もさることながら、量も値段もかなり変則的なので、万人受けする店ではないことを、まずはじめに断っておきたい。

Yusho  宣伝などによると、この店の料理のジャンルは 「Japanese street food」。さらに 「Noodle」 という言葉も前面に押し出されている。(右は厨房)
 アメリカにおけるストリートフードの意味や定義がいまひとつわかりにくいが、一般的には縁日やイベントなどの際に見られる屋外の飲食施設、つまり日本でいうならば屋台のような店を指しているようだ。そこに 「ジャパニーズ」 と 「ヌードル」 と来れば、だれもが簡易スタンド型のラーメン店もしくはヤキソバ店などを想像してしまいがちだが、実態はさにあらず。
 屋外のセクションもあるという意味ではストリートフード的な要素もまったくないわけではないが、ここは立派な高級レストラン。少なくとも価格帯的にはまちがいなくかなり高級だ。
 ちなみにこのあと紹介するラーメン3種類の値段は $22、$21、$17。「どうせアメリカのことだから超大盛りラーメンだろう」 と思ったら大まちがいで、実態はまったく逆。この価格で、どんぶりの容積が一般的なものの半分しかないとなれば、もはや 「超」 が付いてもおかしくないほどの高級店と言ってよいだろう。
 参考までに、6週前の記事内で取り上げた高級レストラン Nobu のラーメンは通常サイズで $18 だった (採算が合わなかったのか、その後、メニューから消えた)。

Yusho  ではなにゆえ安っぽい響きがある 「ストリート」 という言葉をあえて使っているのか。
 それは気軽に足を運んでもらいたいという思いが込められているのと、実際にそのコンセプトで成功している実績があるからだろう。
 実はこの yusho、居酒屋やヤキトリ屋に惚れ込み和食の世界にのめり込んだ人気シェフ Matthias Merges 氏(写真右下) がシカゴで創業した店で、このラスベガス店は2号店ということになる。(右上の写真はラスベガス店の屋外セクション)

Yusho  そのシカゴ本店では、約3割も安い価格設定と (ベガスで $21 のラーメンがシカゴでは $15)、ストリートというイメージがうまくマッチしているのか、かなり繁盛しているようで、その成功を引っさげ当地に乗り込んできたわけだが、ストリップ大通りに面した超一等地のラスベガス店ではそのような価格設定にするわけにはいかないらしい。
 だとすると、「ストリートという庶民的なイメージにつられて店に入ってみたら、実態は超高級店だった」 といった誤解から来るトラブルが多発しそうで悪評が広まらないか少々心配だ。
 ちなみに店内のインテリアや雰囲気は思いっきり庶民的で、カラフルな原色を多用したガーデンチェアのようなメッシュのイスなどはどう考えても高級店には見えない (写真右下)。店内のスタッフもほぼ全員がジーンズとTシャツ、さらに入れ墨を大きく露出している者さえ散見されるありさまだ。だからこそ、グレードを間違えて店に入ってしまう客が続出しそうな気がするが、それは余計な心配か。

Yusho  というわけで、この店は 「値段はともかく、なにがなんでもラーメンが食べたい」 という人以外には歓迎されないと思われるので、予算的に無理と思われる人は、この先を読んでも無駄かもしれない。
 逆に、経済的にゆとりのある人にとっては、小腹がすいて何か軽く食べたくなったときなどには便利そうだ。また、ラーメンに限らずどの料理もサイズが非常に小さいので、あまりにも巨大なアメリカ料理にうんざりしている人も、この店ではほっと一息つける可能性が高い。
 さらに味に関しても期待していいのではないかという印象を受けた。なぜなら、今回の取材で Merges 氏に会うことはできなかったが (週に一回程度しかラスベガスには来ていないらしい)、その弟子でシカゴ店から派遣されてきた厨房の責任者に話を聞くことができ、父が日本人、母が韓国人というその彼の和食に対する知識の豊富さや料理への取り組み方がかなりまともに思えたからだ。
 そして彼いわく、さまざまなことを学んだ和食を尊重しつつも、それをそのまま出すようなことはせずに、あくまでも 「和食のフュージョン」 を目指しているとのこと。たしかに、和食そのものであれば寿司店もラーメン店も全米各地にいくらでも存在しているので、そのほうがビジネスとしても賢い選択かもしれない。

Yusho  さてやっとここからが本題のラーメンの話で、そんな彼らが創作した3種類のラーメンをさっそく食べてみた。
 まずはじめは $21 の Logan Poser Ramen (写真右)。大きさがわかるように、あえて割り箸も一緒に添えて撮影してみたが、サイズ的にも色的にも、どんぶりというよりもやや大きめのお椀といった感じで、日本でいうならば半ラーメンといったところか。
 意外なのはサイズだけではない。具もかなり独創的で、椀の上に、太さ約3cm、長さ約9cm ほどの串カツのようなものが横たわり、その上に熱でヒラヒラと動くカツオ節が乗った状態でサーブされる。動きはしないが大切りサイズの海苔も印象的だ。スープに沈んでしまって写真ではわかりづらいが、温泉卵のような半熟卵も入っている。
 スープは味噌ベースだが、これまた独創的で、薄切りピクルスと梅肉のペーストが入っているためか、味的にはかなり酸味の効いた味噌ラーメンといった感じに仕上がっている。
 麺はちぢれ麺で太さは普通、つまり麺は日本の標準的なものとかなり近い。たまたま運が良かっただけかもしれないが、アメリカのラーメン店でよくありがちな茹で過ぎではなく、しっかりコシがあった。

Yusho  次は $22 の Shrimp Ramen (写真右)。名前の通りトッピングの主役はエビで、香ばしく焼かれたエビが出てくるわけだが、こちらも串に刺さって椀に横たわるような状態でサーブされる。どうやら、トッピングの具はスープに浸かってシットリしてしまうよりも、パリパリ感やサクサク感を楽しんでもらいたいというのが彼らのポリシーのようだ。
 また踊るカツオ節がよほど気に入っているのか、Logan 同様、こちらにもそのカツオ節がたっぷり乗っている。たしかにカツオ節を初めて見る者はその動きにびっくりするはずなので、味のみならずビジネス的にもアイデアとしては良いだろう。
 スープは Logan よりも色がやや濃いので赤味噌が入っているように思えるが、酸味はこちらのほうが軽い。それでも多少の酸味が感じられたのでシェフに確認したところ、こちらにはピクルスではなくレモン汁が入っているとのこと。この店は総じて酸っぱい系の料理が多いと事前の知識として聞いてはいたが、どうやらそれは本当のようだ。麺は Logan と同じ。

Yusho  3つ目は $17 の Maitake Ramen (写真右)。名前の通り主役は舞茸。素揚げに近い状態でカラリと香ばしく揚がった舞茸が別の皿に盛られてくる。半熟卵以外、やはりここでも 「具は直接スープに入れない」 というポリシーが守られている。日本の天ざるソバなどから学んだのだろうか。
 同じ皿に一緒に乗った白く見えるものは3cm角程度の大きさに切られた豆腐で、さらに梅肉ペーストも添えられており、これだけ奇抜だとたしかにフュージョンといった感じだ。
 スープはこちらも味噌ベースで、酸味がほとんど無いという意味では、この舞茸ラーメンのスープが日本の標準的な味噌ラーメンに一番近いかもしれない。麺はスープに沈んでしまっていてよく見えないが、Logan や Shrimp Ramen とまったく同じ。
 飲食業界におけるコストにおいて、人件費や家賃などと比べるとフードコストはそれほどでもないので、なぜこの舞茸ラーメンだけが特別安い価格設定になっているのかよくわからないが (現場で質問するのを失念)、値段に関係なく、この舞茸ラーメンが一番まともな味のように思えた。

Yusho  小腹がすいているときのスナック程度の位置づけとして食べるのであれば、これらラーメンで十分かもしれないが、まともな食事としてはまったくたりないはずで、その場合、ラーメン以外にもオーダーすることになり、予算的には最低でも一人 $50 にはなってしまう覚悟が必要だろう。
 ちなみに今回ラーメンと平行していくつかの料理を試食してみたので、それらも簡単に紹介しておきたい。

Yusho  まずは Japanese Griddle Cake (お好み焼き、写真右上) は、カツオ節が踊るフワフワ系のお好み焼きといった感じで、シェフ曰く、フワフワの元は山芋とかではなく、泡立てた卵白を大量に混ぜてあるからとのこと。味は申しぶんないが、一口サイズで $17 はやはり割高感は否めない。
 Octopus $13 (写真右) は、タコとエノキ茸といんげん豆の和え物。これも味はよいが、突き出しかと思ってしまうほどの小さな小鉢なのが難点。
Yusho  Fried Oyster $9 (写真右) は、中華風のバンに挟まって出てくるカキフライ。これまた味は申しぶんないが、一口か二口で終わってしまうので 最低でも2〜3皿オーダーしたいところ。
 Duck Breast $12 (← クリックで写真表示) は、細かく刻んだシイタケやシメジなどと一緒に出てくる一本の焼き鳥といった感じ。胸肉のわりにはパサパサせずにしっとり感があり味のレベルはかなり高い。特にキノコ類の味付けが絶妙。

Yusho  Duck Leg $25 (写真右) は小ぶりの北京ダック風のモモ肉が一本。これをナイフで薄くそぎ落とし中華風のバン(2つ) に挟んで食べる。味は悪くないが、値段の割に意外性がないのが難点。通常の北京ダックにあるパリっとした皮もないが、料理の名称に 「北京」 が入っていなければモンクは言えない。いずれにせよ、これを和食のフュージョンと呼ぶには無理がありそうだ。
 Kimchi $7 は白菜ではなく大根と思われる素材なので、いわゆるカクテキに近い。これも和食フュージョンとは言い難いが、母親が韓国人だといっていたシェフのお気に入りアイテムなのかもしれない。
Yusho  デザートは3種類しかないので、すべて食べてみた。まずは Doughnuts $8 (写真右)。ローズマリーの香りが漂う直径3センチほどのドーナツが4つ。熱すぎるほどの揚げたてで、甘さは控えめ。中心部分にタロイモ系のものと思われるペースト状の餡が盛られている。
 Pannacotta $8 は、メニューにカレー風味と書かれていたが、カレーの存在感はそれほど強くない。むしろシトラス系のフレーバーのほうが強く感じられる。パンナコッタ自体は味も舌触りも申しぶんない。ハニーで作ったという飾りがアクセントを添えている。
Yusho  Soft Serve $9 (写真右) は、日本でいうところのソフトクリーム。かなりしっかりとした高級感あふれるコーヒーの香りが漂っており、パンナコッタ同様、味も舌触りも非常に良い。細かく散りばめられたナッツ類の歯ごたえも絶妙。
 なお、どのデザートにも言えることだが、料理とは異なりデザートはサイズが小さすぎず、ちょうどよい大きさなのがうれしい。

 長くなってしまったが、量が少なすぎることと値段の高さを除けば (「それらこそが重要」 と言われてしまえばそれまでだが)、料理自体には独創性が感じられ、何か不思議な魅力を持った店だ。
 もちろんとんでもない料理に出くわす可能性は十分あるし、すでに厳しい意見も口コミサイトなどに書かれていたりするが、仮にガッカリさせられるようなことがあっても、それを笑い飛ばせるような好奇心と経済的余裕がある人が行ってみるぶんには何ら問題ないだろう。味噌や醤油系の味が恋しくなった際、財布にはやさしくなくても、胃袋にはやさしい店であることはまちがいない。
 営業時間はまだ流動的のようだが、とりあえず現時点では日曜日から木曜日が午後5時から午後11時まで、金曜日と土曜日が深夜1時まで。
 場所はモンテカルロ・ホテルのストリップ大通り側に面した前庭。カジノ内からもアクセス可能。



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