週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2014年 05月 7日号
クロムウェル、場所も雰囲気も良いが BJルールはひどすぎ
Cromwell, クロムウェル  先月21日、ストリップ大通りのど真ん中の交差点というまさに超一等地にブティックホテル 「クロムウェル」 がオープンした。(写真右、クリックで拡大表示)
 ただし今回のオープンはカジノフロアのみで、宿泊はまだできない。客室のオープンは 5月20日以降を予定している。
 ちなみにアメリカにおいて 「ブティックホテル」 というと、ただ単に 「小規模なホテル」 を意味することもあるが、「他とはどこかちがう小洒落たホテル」 といったようなニュアンスも多分に含まれており、実際にこのホテルの宣伝文句の中でもブティックという言葉が多用されている。3000部屋を超える大型ホテルが乱立するなか、小規模だからこそできる手厚いサービスをウリに新たな顧客層を開拓したいようだ。客室数は188。
 経営母体はシーザーズ社 (Caesars Entertainment社および Caesars Growth Partners社) で、シーザーズパレス、パリス、バリーズ、フラミンゴ、プラネットハリウッドなどと同じ系列ということになる。

Cromwell, クロムウェル  このクロムウェルは、まったく新しくゼロから建設されたホテルではない。2007年までバーバリーコースト、その後 2013年まではビルズと呼ばれていたホテルで、その営業を昨年2月に打ち切り、大幅に改装して誕生したいわば 「再生ホテル」だ。
 新たに生まれ変わったことを印象づけるために名前も刷新することは当然のことだが、そのネーミングにおいてちょっとした騒動があった。また今でもある。

Cromwell, クロムウェル  実はこのホテル、「ガンズブール」 という名称のホテルになる前提で改装工事が進められていた。オープン後の運営を、ニューヨークに拠点を構える Gansevoort 社に任せる予定だったからだ。
 ところが今から約半年前、同社はロシアの犯罪組織と関わっていることが発覚。カジノライセンスを当局から取得できない可能性が出てきたため破談になってしまった。(右上の写真は、これまで何もなかった東側の空き地の部分に新たに設けられた正面玄関。右奥後方に見えるのはフラミンゴホテル)

Cromwell, クロムウェル  その後いろいろな名称が検討され、結局今回のクロムウェルに落ち着いたわけだが、こんどはロシアやマフィア関連ではなく英国系の人たちから批判の声が上がり始めた。英国といってもイングランドではなくスコットランドおよびアイルランド系の人たちからで、その批判はまだ完全に収まったわけではない。
 「クロムウェル」 という言葉は、英国の人ならだれもが知る独裁的な軍人 オリバー・クロムウェル (1599年〜1658年) を連想してしまうそうで、イングランドの人たちからすれば偉大なる英雄であっても、スコットランドやアイルランドの人たちからすれば大量虐殺者や侵略者であり、結局このクロムウェル・ホテルは、彼らにとっては聞き捨てならない微妙な名前のホテルらしい。
 韓国で最も有名かつ嫌われている日本人は初代内閣総理大臣、伊藤博文であることは広く知られるところだが、どうやら英国の人たちにとってのこの名称問題は、日韓において 「伊藤ホテル」 と命名してしまったようなものと考えるとわかりやすいのかもしれない。
 結局このネーミング騒動、アメリカにおいては海流の名前程度の認識しかないのか (太平洋の赤道付近を流れる大規模な海流の通称がクロムウェル海流)、ほとんどだれも気にかけていないようで 、とりあえずクロムウェルのままで営業を継続するようだ。

Cromwell, クロムウェル  話がそれてしまったが、ここからは本題のカジノについて。(右はクロムウェルのカジノ内の様子)
 改装したので当たり前のことではあるが、バーバリーコーストやビルズ時代と比べると、はるかに洗練され美しくなった。
 また、東側にあったレストランの部分もカジノにしたため、広さ的にも窮屈感が解消され格段によくなっている。レイアウトにおいても直線的なコンセプトがうまく機能的に生かされており、使いやすくわかりやすい。
 さらに、改装前は玄関と呼べるようなまともな出入口がまったく存在しなかったが、今は立派な玄関が完成し、ホテルとしての風格も出てきている。
 そしてなにより、この場所はだれもが認めるラスベガスでナンバーワンの超一等地であり、また近隣のベラージオ、バリーズ、シーザーズパレスなどで見られるような広大な前庭がまったくないため、繁華街とのアクセスという意味での利便性は抜群だ。

Cromwell, クロムウェル  ではいいことばかりかというとそうでもない。カジノとして一番重要な部分がひどいことになっている。
 テーブルゲームの代表格ともいえるブラックジャックのルールが残念極まりないのである。
 約40台あるブラックジャックテーブルのほぼすべてが、右の写真の通り 「BLACKJACK PAYS 6 TO 5」、つまり 1.2倍だ。1.5倍の台もわずかに3台存在してはいるものの開帳されている場面をまだ見たことがない。
 1.2倍と聞けば、「ならば1デックや2デックばかりなのか」 と思う人も多いだろうが、実態はさにあらず。なんと驚くことに多くのテーブルが8デックだ。6デックでもカードカウンターにとっては厳しい条件なのに、この8デックではもはや効果的なことはなにもできず、そのうえ 1.2倍と来たら、もうほとんどやる気など出ないだろう。
 リーマンショック以降、どこのカジノも総じて経営が苦しく、この 1.2倍が時代の流れと言ってしまえばそれまでだが、8デックで 1.2倍はどう考えてもひどい。

Cromwell, クロムウェル  さらに驚くことがある。8デックにすることによってカードカウンター対策はより強化されているはずだが、それでも不十分と考えているのか、なんと右の写真のような注意書きを各テーブルに掲げ、MID-SHOE-ENTRY (シャッフルとシャッフルの間で参加すること) に対して制限を加えている。8デックでは、好条件の瞬間などそれほど多く巡り合わせることはないと思われるが、とにかくとことんカードカウンターを恐れているようだ。
 もともと 500ドル以上を賭けることがない者にとってはどうでもいいルールではあるが、いくらサレンダーありにしてくれたとしても、こういった露骨な営業方針はあまり気分のいいものではない。(1デックテーブルでは MID-SHOE-ENTRY 自体が禁止で、サレンダーもない)
 ということで、なにやら歓迎しがたい8デックではあるが、現場も困っているから笑ってしまう。小柄な女性ディーラーなどは手のサイズも小さいため、8デックにもなると全てのカードを一度に持つことがむずかしく、シューに入れる際、しばしばバラバラに崩してしまうらしい。実際にその現場にも出くわした。
 ちなみにこのホテルのブラックジャックテーブルにおいてはハンドシャッフルではなくすべてがマシンシャッフルなので、そのバラバラに崩してしまうハプニングは、マシンから8デックを取り出し、それをシューに入れようとする際に起こる。
 そんなことが多発するようだと、それを理由に今後 8デックは消滅する可能性があるような気もするが、はたしてどうなることやら。
 ブラックジャックの話ばかりになってしまったが、その他のことに関しては客室部門がオープンしたあとまた改めて紹介することとし、今週はこのへんにしておきたい。



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