週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2014年 04月 02日号
ラーメンブームで、ついにあの NOBU もメニューに追加
Nobu  旅行中、無性にラーメンが恋しくなるという読者も多いにちがいない。だからといって、たかがラーメン、タクシーを使ってまで郊外に点在する専門店に行くほどのことでもなかったりする。
 そんなときに知っておくと便利なのが、ホテル街でラーメンを食べられる場所。
 今週は、昨今のアメリカにおけるラーメンブームと、世界的に有名な和食の料理人 Nobu こと松久信幸氏が監修する高級レストラン NOBU (シーザーズパレス店) において、大衆食の象徴ともいえるラーメンがメニューに加わったという話。

 まずはラーメンブームについて。いま全米でラーメン店が爆発的に増えている。寿司よりも低価格なため需要層の裾野が広いのか、その勢いはとどまるところを知らない。
 日本人が多く住む巨大都市ロサンゼルスやニューヨークはもちろんのこと、全米各地の地方都市にまでブームは広がり、人口ではロサンゼルスの10分の1程度の規模しかないここラスベガスにおいても日系のラーメン店はすでに10店近くある。また専門店ばかりか居酒屋などがラーメンをメニューに加えるケースも目立ってきており、さらに韓国系など日系以外のオーナーの店も含めればその数はもっと増える。

Nobu  ちなみに Ramen という言葉が一般のアメリカ市民に認知されるようになったのは最近のことではない。40年以上も前から日本の大手食品メーカーが米国に進出しており、Top Ramen、Cup Noodles、Sapporo Ichiban などのブランドはだれもが知るところで、実際にごく普通のスーパーマーケットの店頭に所せましと並んでいる。後発組の韓国系、中国系のブランドも加えれば、店頭の棚におけるラーメンの占有率はスパゲティーなどの各種パスタ類に勝るとも劣らないレベルにあり、とっくの昔にアメリカ市民はこの食文化を自分たちのものにしていることがうかがえる。

 では、それほどまでに定着している Ramen が、なにゆえ今になってブームなのか。何十年も前からブームだったのではないか。そのキーワードは 「インスタント」 と 「外食」 にある。
 これまで長らく定着してきた Ramen という食文化は、あくまでもインスタントラーメン、つまり 「家庭で安く手軽に食べるもの」 という位置づけであり、高い金を払ってわざわざ外で食べるという発想はほとんどなかった。
 実際にインスタントラーメンは非常に安く、特に袋麺の場合、日本のメーカーのものでも 3つ 1ドル前後、セールのときなどは 5つ 1ドルなどといった安売りも珍しくなく、日本円に換算するならば 1袋 20〜30円というのが通り相場だ。(ホテル街のコンビニなどでは家賃が高いのか、もっと高く売られている)
 それほど安く食べることができるラーメンに対して、わざわざ 7ドル、8ドルを支払ってでも外食として楽しみたいと考えるのは、在米日本人や経済的にややゆとりがある層など限られた人たちだけで、決して一般的な消費行動ではなかった。
 ところが最近、ニューヨークやロサンゼルスを中心にラーメン店が少しずつ増えていくにつれ、外食のラーメンとインスタントラーメンの味の違いや、麺やスープのバリエーションの豊富さに一般大衆も気づくようになり、外食としてのラーメンブームに火が付いたというわけだ。
 この現象はコーヒーに似ているかもしれない。20年ほど前までコーヒーは、日本におけるお茶のように、「外食でもタダ同然の値段で何杯でも飲めるもの」 という概念が定着していたためか、高い金を払って飲む習慣はほとんどなかった。
 ところが、いわゆる 「アメリカンコーヒー」 と呼ばれるような薄い味のコーヒーとは異なる味わい深い濃厚なコーヒーをスターバックスが始めてから、一般大衆もその味の違いに目覚め、ファミレスで1ドル程度が当たり前のコーヒーに、3ドル、4ドル払う習慣も定着した。
 たぶんスターバックス同様、今回の外食ラーメンブームは一過性のものではなく、このままアメリカの食文化の中に完全に定着するのではないか。価格的に考えても、遅かれ早かれ寿司以上に広まることはほぼ間違いないだろう。

Nobu  さてそんな時代背景もあり、和食店に対してラーメンの存在を期待するアメリカ人が少なくないのか、自他ともに認める高級和食店 NOBU がこのたびラーメンを始めた。(右はその醤油ラーメン)
 店の格を考えると、また利益率などのことを考えると、他のメニューに比べ相対的にかなり低い価格設定になってしまいがちなラーメンの導入は、大いに悩んだ末の結論と思われるが、とにかくその英断には素直に敬意を評したい。
 結果的にタクシーを使わずにホテル街でラーメンを食べることができるようになったわけで、ベガスを訪れるラーメンファンにとっては大変ありがたい画期的な出来事といってよいだろう。
 もちろんこれまでホテル街にラーメンがまったく存在していなかったわけではない。アリアホテルに隣接する高級ショッピングモール 「クリスタルズ」 の中にある和食店 Social House を始め、メニュー内にラーメンらしきものがある店はいくつか存在している。ところがそのほとんどは、ここで紹介できるようなレベルのものではなく、実際に何度も試食をしてみたが、紹介を断念せざるをえなかった。

Nobu  ではこのたびの NOBU のラーメンはどうなのか。いくら松久氏の監修とはいえ、本人が常時現場にいて指導しているわけではないので、ガッカリさせられる覚悟で試食に臨んだところ、いい意味で予想は外れた。(右の写真は、"New-man Ramen" と称される味噌ラーメン。うまく撮影できなかったので見かけはあまり良くないが、味は決して悪くない)
 たくさんのシェフがいるので、毎回同じレベルの味で提供されるとは限らないが、松久氏の指導が徹底しているのか、少なくとも今回の試食では醤油も味噌もかなり満足できる完成度で、無性にラーメンが恋しくなったときのラーメンファンにとっては十分なレベルにあるといってよいだろう。
 ちなみに具は醤油も味噌も共通で、半熟卵(この黄身の半熟の度合いが絶妙)、厚さ1センチほどの角切りチャーシュー3枚、コーン、メンマ、ネギ、細切りのトウガラシ、パクチー、薄切りハラペーニョ、それにゴマとガーリックオイルが小皿で別に付いてくる。
 気になる値段は味噌も醤油も $18。それに 8.1% の消費税と 15% ほどのチップ。ラーメンとしてはかなり高いが、他のメニューをオーダーすると一人 $100 を超えてしまうような高級店であることを考えると良心的な価格といってよいのではないか。
 高級感漂う店なのでズルズル音を立てて食べにくいという難点はあるが、利用してみて後悔するような店ではないと断言したい。(ただし、ぬるいスープや伸びきった麺を平気で出してくるシェフが今後も絶対に現れないとは断言しにくい)

Nobu  場所は、シーザーズパレスのカジノフロア内にある通路 NOBU WAY (写真右) のほぼ中央。NOBU Hotel (週刊ラスベガスニュース 838号に掲載) の入口にも近い。
 なおこの店では、魚介類に限らずラーメンをオーダーする場合においても、まず始めに担当のウェイターやウェイトレスから食品アレルギー (現場での発音は [アレジー] に近い) に関して聞かれる。また同時に水に関してもボトルの水 (bottled water) か普通の水 (tap water) か聞かれるので、それなりの回答をあらかじめ用意しておくようにしたい。(bottled water の場合、銘柄も聞かれる)
 最後に最も重要なこと。ラーメンはランチタイム (11am〜3pm) のみで、ディナータイムには存在しない。さらに、今後変わる可能性もありそうだが、現在ランチタイムの営業は土曜日と日曜日だけとなっている。つまり、土曜日と日曜日の 11am〜3pm しかラーメンにありつけない。
 また、この記事を読みラーメンだけをオーダーする客が増え、採算が合わないメニューということで廃止にならないとも限らないので、着席してからラーメンがないとわかり、代わりに高価な料理を食べることになるのはイヤだという場合は、入店前に必ず確認する必要がある。メニューおよび価格は入口の前にあるタッチパネル式のディスプレイで見ることができる。



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