週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2013年 10月 02日号
ねじれ国会で予算案が通らず、グランドキャニオンなどが閉鎖
国立公園が閉鎖  アメリカ合衆国連邦議会において、新年度の暫定予算案が可決されず、10月1日から始まる新年度の業務を開始できない政府機関が続出、全米各地の国立公園も閉鎖されている。
 これを受け、10月1日のグランドキャニオン国立公園 (写真右) に向かうラスベガス発の各種ツアーはキャンセルされ、2日以降の見通しも立っていない。(現地に着陸せずに上空から見学するだけのツアーは催行されている)

 現在の連邦議会は上院が民主党、下院は共和党が多数派のいわゆる 「ねじれ国会」 になっており、通称 「オバマ・ケア」 と呼ばれる医療保険制度において、民主党と共和党が激しく対立。予算に関する法案が通りにくい状態となっている。
 選挙制度という意味においては上院が日本の参議院、下院が衆議院に近いものがあるが、日本の 「衆議院優越」 のような制度がないため、下院が上院の議決をくつがえして法案を通すことはできない。また大統領は政府の長ではあるが国会議員ではないため、議院内閣制の日本の総理大臣とは異なり、原則として国会に対して直接関与することができず、拒否権の発動も簡単ではないことから、予算案が年度開始時期までに間に合わないという異常事態になってしまった。
 なおこれは余談だが、共和党から何度も提出されている (ワシントン時間の 10月1日午前までに4回) 修正妥協案をかたくなに拒否し続ける陣営の急先鋒ハリー・リード上院院内総務は、偶然にもラスベガスのすぐ隣にあるサーチライト村出身で、高校もベガス郊外のヘンダーソンという当地を地盤とするネバダ州選出の上院議員だ。

 余談はさておき、10月1日午前の時点では法案が通ったという情報はなく、各種政府機関の業務は停止されたままで、この状態がいつまで続くかは予測がむずかしい。午後にも解決するとの見方がある一方、長引くと見る専門家もいる。
 ちなみに、新年度が始まっても予算案が可決せず政府機関の業務が停止するという事態は 1995年から1996年への新年度でも起こっており、そのときは、最長で21日間も業務が停止した機関があった。

 現在業務が停止しているのはスミソニアン博物館をはじめとする国営の博物館や美術館、それにグランドキャニオンなど全米各地の国立公園など、市民生活に重大な危機をもたらすことはないとされる機関のみで、軍隊、医療機関、航空管制、郵便などは平常通り機能しているが、パスポートの発行業務などは停止しており、海外旅行を予定している者から不満の声が上がるなど、市民生活に直接的な影響がまったくないわけではない。また日本の国税当局に相当する IRS でも一部の業務が停止しており、確定申告の延長期限とされる 10月15日がせまっているだけにさまざまな影響が心配されている。

 日本人観光客にとって気になるのはやはり国立公園だろう。日本の国立公園とは異なり、その区域は明確で、境界を超える際にはゲートを通過する必要があるなど、国立公園管理当局の業務が停止すると、区域内にアクセスできない構造になっている場所が多く、ビジターセンターなどの施設を使えないばかりか、景色そのものをまったく見ることができないという事態になってしまいがちだ。
 ラスベガス周辺ではグランドキャニオン、ザイオン、デスバレー、ブライスキャニオンなどの国立公園があるわけだが、今回のトラブルにおける深刻度はグランドキャニオンが一番大きい。訪問予定者の絶対数が圧倒的に多いというだけでなく、構造上の理由もあるからだ。
 管理区域内に宿泊施設が多数あり、そこでの宿泊を予定していた者は多大なる不便をしいられるばかりか、ベース・ビレッジとされるツサヤン地区から著名ビューポイントへは、ゲートを通過しないことにはアクセスできないため、既存のツアーなどに頼らずレンタカー利用など自力で行く場合においても、絶景を楽しむことは困難を極める。公園内の各ビューポイントを巡回しているシャトルバスも国立公園管理当局による運行だ。
 デスバレーであれば、区域内にアクセスできなくても近くまで行けばそれなりの景色を楽しめるが、グランドキャニオンの場合、残念ながらそのような構造になっていない。

 したがって、この時期にグランドキャニオン訪問を計画してしまっている場合は、ツアーに限らずレンタカー利用も含めて、国会での事態の進展を待つしかないことになる。きょう、あすに解決すれば、日程をずらすことで対応することも可能かもしれないが、長引くようであれば、他の場所への切り替えも検討せざるをえないだろう。
 そうなると、国立公園ではない大自然系の手軽な代替地としてレッドロックキャニオンを思い浮かべる人も多いと思われるが、残念ながらレッドロックキャニオンも閉鎖されているので注意が必要だ。たしかにかつてはネバダ州の管轄で、今でも国立公園ではないが、現在のレッドロックキャニオンは 「National Conservation Area」 という所属で国が管理しているため、今回の予算騒動に巻き込まれてしまっている。
 やはりグランドキャニオンの代替地は、アンテロープキャニオン、モニュメントバレー、グランドキャニオン・ウエストリムといったところに落ち着くのではないか。これらの場所は国の管理とはまったく異なるインディアン居住区のため、従来通り運営している。セドナも問題ない。



バックナンバーリストへもどる