週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2013年 08月 07日号
さらば飛行機酔い! 揺れの不安を払拭した新 Gキャニオンツアー
ビジョン航空  8月6日、ビジョン航空が、136人乗りボーイング737型機によるグランドキャニオン・ツアーの運行を開始した。
 このことがどれほど大きなニュースなのか、大多数の一般観光客にとっては理解しにくいことと思われるが、グランドキャニオン・ツアーを体験したことがある者や業界人にとっては、超驚きの革命的ニュースといってよいだろう。
 なぜなら、ラスベガスとグランドキャニオンを結ぶ航空路線の機材は、長らく 20人乗り以下の小型飛行機というのが常識だったからだ。つまり大ざっぱにいえば、これまでの常識的なサイズの、いきなり7倍規模の機材が導入されたということになる。交通運輸の世界で、乗り物のサイズが突然7倍になる変革などほとんどありえないのではないか。いかに突拍子もない出来事であるか想像できよう。

 ちなみに一昔前にイーグル航空 (今は存在しない) がフォッカー社製の F-27 という比較的大きな機材で運行していたことがあるが、それでもそのサイズはせいぜい 40人乗り。また、20年ほど前、トライスター航空 (ロッキード社製の航空機の名称とは無関係) が同様な機材での参入を試みたことがあるが、すぐに撤退している。結局この路線においては 「大型機はそぐわない」 ということが業界の共通認識となっていた。
 陸路では約430km のこの区間も、空路での直線距離はわずか約270km。この程度の短距離になると、乗降に時間がかかる大型機よりも、小型機を何度も往復させたほうが利便性が高いことは明らかで、また乗降時間のみならず、大型機になると巨大なラスベガス国際空港を利用する必要があり、手続きに要する時間や空港内の移動距離も長くなってしまいがちだが、小型機専用の小さなローカル空港であればチェックインカウンターのすぐ脇から搭乗できる。結局これまであらゆる部分において大型機は敬遠され、その出番はなかった。

 そのような背景を考えると今回の 737型機の導入はビジョン航空にとっては無謀といえるほどの大きな賭けということになるが、もちろんメリットがまったくないわけではない。同社のこれまでの主力機が 19人乗りだったことを考えると、客席数だけの議論であれば、7往復させていたところを 1往復で済むことになり、運行する側にとってはオペレーションの大幅な簡素化が可能で、パイロットの数の削減や、現場スタッフの労働時間を減らせるなど恩恵は少なくない。

ビジョン航空  では利用者側にとってはどうか。前述の手続きや移動時間など、大空港であるがための使い勝手の悪さ以外に、だれもが思いつくデメリットは、フライトの選択肢が減ることによる利便性の低下だろう。
 また、窓側の席ではない席が増えることから、下界の景色を楽しむという部分において、小型機に比べてかなり条件が悪いということも欠点と言わざるを得ない。ちなみに 737型機の座席配置は通路を挟んで左右各3列。(右上の写真は、実際のビジョン航空機の客室内)
 一方、メリットに対する声も少なくない。若年層には気づきにくいが、「トイレ付きであることがとっても助かる」 といった声が、早くも高齢層の利用者から寄せられている。
 参考までに、片道の飛行時間は約27分から32分程度とかなり短い。従来の小型機に比べて約15分程度の時間短縮を実現しているわけだが、この短い飛行時間も多くの人にとってはメリットといってよいだろう。
 さらに大手旅行代理店も、「団体旅行の顧客を分割する必要がなくなる」 と、今回の 737型機の導入を歓迎している。50人の団体客なら、今まで3機に分乗してもらう必要があったが、これからは1機ですみ、これは代理店のみならずその団体客にとっても大いなるメリットのはずだ。

 あれこれ細かい利点や欠点を書いてきたが、737型機の最大の特徴はなんといっても揺れの少なさだろう。揺れが大きいことを望む者は極めて少数派と思われるので、これは大きなメリットであり、この部分こそ、業界の常識をくつがえしてでもビジョン航空がこの機材を導入したねらいといってよい。
 小型機でも風が強くない限り、それほど揺れるものではないが、「小型機は揺れそう。酔いそうで不安」 と思っている人が少なくないのも現実。揺れていようがいまいが、酔いそうだと思っていると酔ってしまうのが乗り物酔いで、この問題は本人にとってはもちろんのこと、航空会社にとっても決して小さくない。
 それを一気に解決してくれるのが今回の機材で、実際に試乗してみた限りでは、気になるような揺れはまったく感じられなかった。風の状況は機内ではわからなかったが、この 737型機は、ロサンゼルスやサンフランシスコとラスベガスを結ぶ路線など、アメリカの国内線で最も多く使用されている機材なので、その揺れ具合は多くの人にとっても大体想像できるのではないか。とにかく揺れに対する心配はもはやまったく無用と考えてよい。

ビジョン航空  長年の業界の常識に反する大型機なのでデメリットも多く、今後末永い継続運行が果たして可能なのかどうか不安もあるが、揺れに対して心配している利用者から絶大なる期待が寄せられているフライトなので、なんとしてでも成功してもらいたい。
 実はこの 737型機の導入をビジョン航空は、2011年、そして今年の6月にも試みており、今回が3度目の正直ということになる。グランドキャニオン空港側における手荷物検査機の準備不足など、さまざまな難問に直面し、過去2回はすぐに運行を断念。今回は満を持しての再々挑戦だ。(右上の写真はグランドキャニオン空港)
 ちなみに今回のフライトは、ローカル空港に到着していた従来の小型機とは異なり、ラスベガス国際空港の通常のゲートに到着するため、空港内ですれ違う他のフライトへの乗客に武器を手渡すことも可能なことから、一般の都市間のフライトと同様、厳重なセキュリティーチェックが求められ、多少の不便を強いられるのも事実。
 検査官が少なかったりして時間がかかり (今までグランドキャニオン空港ではセキュリティーチェックがまったく無いに等しい状態だったため、今でもこのフライトの離陸時以外、検査官はほとんどいないのが現状)、その部分に対する乗客からの不満などから3度目の失敗になるようなことだけは何とか避けてもらいたい。
 なお、現在この 737型機は一機だけで運行しているため、保守点検の期間は従来の19人乗りドルネア228型機で運行されることになっている。今月のその保守点検日はすでに発表されており、8月28、29、30、31日の4日間は運休が決まっているので、どうしても737型機でなければいやだ、という場合は日を変えるしかない。予約などに関する詳しい情報はこのラスベガス大全のツアーセクションに掲載。



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