週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2013年 02月 27日号
リゾート・フィーの導入で、「シーザーズ、お前もか!」 の批判噴出
 古代ローマ時代の出来事を伝承する名文句、「ブルータス、お前もか!」
 言葉のぬしはもちろんカエサル(Caesar)、英語読みはシーザーだ。暗殺される当日、敵陣の中に、信じていた側近ブルータスの姿を見た際に発した言葉とされる。
 その出来事から約二千年。いまラスベガスでは、「シーザーズ、お前もか!」 という騒動が起こっている。

リゾートフィー  「シーザーズ」 とは、古代ローマをテーマにした高級カジノホテル、シーザーズパレス(写真右)などを運営する Caesars Entertainment 社のこと。
 同社は、このホテル以外にもフラミンゴ、パリス、バリーズ、リオ、プラネットハリウッドなど、多数のカジノホテルを運営しており、ラスベガスにおける勢力はライバルの MGM社に次ぐ第二位で、その存在感は極めて大きい。
 そんな同社が先週、「来月からリゾート・フィーを導入する」 と発表。ベガス旅行のリピーターや業界関係者の間では驚きの声と共に、開いた口が塞がらないといった批判が噴出、世界中のネット掲示板などを騒がせている。

 リゾート・フィーとは、ここ数年、ラスベガスのホテル業界の間で急に広まった不評の料金システムで (他の都市でも見られる)、宿泊料金とは別に徴収される追加料金のこと。
 インターネット回線使用料、フィットネスクラブ使用料、市内通話かけ放題、新聞代などの名目で、それらの利用の有無にかかわらず、一方的に一律請求されるばかりか、そのホテルの公式サイトの予約画面などにおいては極めて小さな文字で見えにくく表示されていることが多く、意図的に客をだまそうとしているのではないかとの批判が絶えない。
 そんな馬鹿げた料金システムではあるが、シーザーズ社以外の主要ホテルではすでに導入済みで、同社だけが 「良心的なホテル」 とされてきた。

リゾートフィー  それを 3月1日から導入することにしたというわけだが、企業の方針変更ぐらいなら、どこにでもある話でだれも驚かない。
 しかし今回ばかりは事情が異なる。なぜならシーザーズ社は反リゾート・フィーの急先鋒で、比較広告などはもちろんのこと、大々的に 「リゾート・フィー反対!」 のキャンペーンを繰り広げるなど、導入しているライバルホテルを徹底的に批判してきたからだ。(右上の写真は、これまでの同社のサイト)
 さらに同社のキャンペーン活動は、ネット、テレビ、雑誌などのメディア内にとどまらず、「リゾート・フィーには "ノー" と言おう!」、「シーザーズ社のホテルはリゾート・フィーを導入していません」 などと書かれたプラカードをショーガールたちに持たせて繁華街を大行進させるなど (写真右下。Courtesy of Las Vegas Sun)、とにかくその徹底ぶりはすさまじく、もはや 「反リゾート・フィー」 は社運をかけたスローガンのような存在になっていた。

リゾートフィー  そんな同社の突然の方針変更。呆れ返ってしまうのも無理は無い。そもそもリゾート・フィー自体、企業倫理が問われる不明朗な料金システムと言われているのに、さらに手のひらを返すような態度の急変による導入は、もはや企業倫理のレベルを超えた 「恥」 とも言える行為で、どんな突然変更のニュースにもあまり驚かないラスベガスの業界関係者も、今回ばかりは多くの者が仰天している。

 それでもあえて導入に踏み切ったのには理由があった。今すぐに倒産というわけではないが、深刻な経営難だ。
 プライドも恥も関係なく、とにかく少しでも売上を伸ばさないとかなり危険な状態に直面しており、昨日発表された 2012年度の第4四半期の決算でも、4億6900万ドルの赤字を計上している。前年同期比で倍増の赤字額だ。
 厳しい状況は直近3ヶ月という短期の業績だけではない。実はこのシーザーズ社、発行済の社債などを含めた借金の合計が、なんと日本円で一兆円を超えている。いくら低金利時代とはいえ、金利負担だけでも膨大な額に登り、とても返済できる状態ではなく、つい先日も 2020年償還の15億ドルの社債を発行したばかり。
 その用途がなんとも寂しい。「まもなく償還をむかえる社債のための社債」 と発表しており、つまり借金返済のための借金、いわゆる自転車操業だ。
 とにかく倒産は投資家のみならず広範囲の関連企業に迷惑をかける。何とか頑張ってもらいたいものだ。ちなみに同社の株価は先週、リゾート・フィー導入の発表直後、約10%の上昇をみせ、市場では好感されたように見えたが、週明け後の 26日の取引では、1日のうちで $10.68 〜 $12.70 の範囲、つまり 20% も乱高下する荒々しい展開となっている。

 同社の業績や株価はともかく、これを機会にラスベガスのホテル業界は、全社一斉にリゾート・フィーを廃止する方向で話し合ってみてはどうか。談合はまずいが、リゾート・フィーの廃止は宿泊客も歓迎するはずだ。
 ちなみに、いままでリゾート・フィーに対しては、3つの陣営に分かれ、それぞれに思惑があった。導入派と反対派、そして静観しながら成り行きを見守っていた慎重派。
 MGM社に代表される導入派はもちろんリゾート・フィーによる宿泊単価の上昇を期待。シーザーズ社を盟主とする反対派は、「導入したホテルは消費者からそっぽを向かれ、いずれ廃止することになるだろう」 との読みがあった。
 慎重派は長らく静観していたが、導入するメリットのほうが見えてきたのか、ここ1年で一気に導入派に流れ、シーザーズ社以外では最後まで様子を見ていたコスモポリタン・ホテルもついに今年1月から $25 のリゾート・フィーの導入を決定。
 結局、シーザーズ社は消費者からの支持こそ得ていたものの、「正直者が損をする」 といった形で利益は確実に導入派に流れ、利益の確保という企業の至上命題としては敗北を認めざるをえない状況になってしまった。
 このことは、料金表示において、「宿泊費 $100 + 小さな文字で リゾート・フィー $25」 と表記するのと、単純に 「宿泊費 $125」 と表記するのでは、前者の方により多くの消費者が集まり、後者の方法を採用したホテルは損をする、という大いなる実験の決着を見たことになる。
 その背景には、消費者心理のみならず、ネット予約という IT時代ならではの事情もあったようだ。どちらの表記においても、消費者が負担する金額は同じだが、販売する側にとって、リゾートフィーの分を宿泊料金に含めて表記すると、そのホテルは露出度が減り不利になるという。なぜなら、エクスペディアなど、複数のホテルの宿泊料金を同時に比較できるサイトの画面において、「安い順」 に並べた場合、上位に表示されないからだ。

 そのような事情もあり、シーザーズ社を応援していた多くの利用者にとっては非常に残念な結果だが、同社も導入することになってしまったこの現実を受け入れざるをえない。
 このまま 「全社みんなでリゾート・フィー」 が根付いてしまうのか、それとも全廃に向かうのか、今はまったく予測できないが、とにかく以下が、シーザーズ社運営の各ホテルが3月1日から導入するリゾート・フィーの金額だ。なお、すでに予約済みの場合は、宿泊日が3月以降でも免除される。
 (その他のホテルのリゾート・フィーの金額や、リゾート・フィーそのものに対する細かい説明は、この週刊ラスベガスニュースの 807号を参照していただきたい)

◎ $25 : Caesars Palace、 Nobu Hotel
◎ $20 : Paris、 Planet Hollywood
◎ $18 : Flamingo、 Harrah's、 Rio
◎ $15 : Bally's
◎ $10 : Quad




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