週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2012年 09月 05日号
「ペット・フレンドリー・ホテル」 と 「家ダニ・世界サミット」
ベッドバグ, bedbug  「ペットは家族の一員」 ---- そんな言葉が聞かれるようになって久しい昨今のペットブーム。
 人気の犬のサイズに多少の違いはあるものの、日本もアメリカも事情はほぼ同じ。ペットに対する飼い主の愛情は絶大で、ときどき在米の読者から 「ペット同伴で泊まれるカジノホテルは?」 といった問い合わせが寄せられる。
 当地はカジノやナイトショーなどを中心としたオトナのエンターテインメント都市。人間の子供の同伴すらはばかられやすいラスベガスに犬を連れてきてどうする、とも思えるが、そこは家族の一員、飼い主の気持ちもわからないわけではない。
 今週は、日本在住の読者にとっては不必要な話題かもしれないが、ラスベガスにおけるペット歓迎ホテルの所在地およびその宿泊条件などを、ベッドバグ問題と合わせて紹介してみたい。

ベッドバグ, bedbug  これまで長らく、ペット同伴者は、ストリップ地区のカジノホテルではなく、その周辺に点在しているモーテルに泊まるのが一般的だった。(右写真は、以前からペット同伴を受け付けている Motel-6 の広告塔。後方はMGMグランドホテル)
 古ぼけたモーテルが、決して安くない宿泊料金で、ゴージャスなカジノホテルと競争しながら生き延びてこれた理由はそこにあるとも言われている。
 ところが近年、ストリップ地区のカジノホテルにおいてもペット同伴者を無視できなくなってきたのか、高級ホテルの多くがその潜在需要の大きさに多大なる関心を寄せるようになってきた。アメリカにおけるペット保有者の比率が数十パーセント (統計が多すぎ正確な数字は不明) と言われているので、関心が大きくなるのも無理はない。
 同伴客の取り込みを絶好のビジネスチャンスと見る積極派もあれば、ライバルに客を取られたくないので追随するしかないという消極的な動機で始めるところもあるが、いずれにせよ 「ペット歓迎」 を打ち出す高級ホテルがここ数年で増えてきていることだけはたしかだ。

ベッドバグ, bedbug  とは言っても、消極派はもちろんのこと、積極派も問題意識をまったく持っていないわけではない。あくまでも試験的なサービスという位置づけで始めるケースが多いようで、現在ペットを受け入れているホテルも、そのこと自体を自身のサイトで全面的に押し出しているところは少なく、また、一度決めた受け入れ方針を撤回したホテルもあると聞く。
 では、あまり積極的になれない理由は何か。それは客室の清掃などの管理面ではなく (それはそのコストを追加料金として徴収すれば済むこと)、一般客からのイメージダウンにあるようだ。
 一般客はペット歓迎ホテルを避ける傾向にあリ、その最大の理由は衛生的な問題、とりわけベッドバグ (bed bug または bedbug) に対する懸念と言われている。
 ベッドバグとは、ベッドにいるバグ(虫)、つまり室内にいるノミ、ダニ、シラミなどの総称で、あえて一般的な日本語に訳すならば 「家ダニ」 といったところか。

 くしくも今週ラスベガスで、ベッドバグに関する世界的なコンベンションが開催される。その名も 「Bed Bug University, North America Summit」。さしずめ 「家ダニ・世界サミット」 の北米大会といった感じのイベントで、世界中から生物学者やホテル業界および害虫駆除業界の関係者などがラスベガスに集結する。
 このような記事を書くと、地元の観光業界から 「旅行客が来なくなる」 と批判されそうなので、あえて先にことわっておくが、ラスベガスにベッドバグが多いから当地で開催されるというわけではない。
 もちろん 「一匹もいない」 と断言することはできないが、ラスベガスのホテルは寝具を含む内装のリニューアル間隔が総じて短いとされ、他の都市と比べてかなり清潔といわれている。気候が乾燥しているためか (ベッドバグが乾燥を嫌う生物かどうかは未確認)、いろいろ調べてみた限りでは、たしかに客室数が多い割にベッドバグ問題が少ないことは間違いないようだ。
 ではどこの都市が危険かというと、ニュースなどで話題になる頻度においては、ニューヨークの露出度が高いように見受けられるが、ホテルの数が多く、また著名ホテルも多いことなどから話題になりやすいという理論も成り立ち、結局、「ベッドバグが多い都市」 というのは特に存在していないように思われる。
 むしろ注意が必要なのは日本かもしれない。先月、日経新聞が、家ダニの駆除方法を開発した大分県の旅館に全国の宿泊施設から問い合わせが殺到している、という話題を記事にしているが、たしかに高温多湿で、なおかつダニが住みつきやすいと言われている畳文化が残る日本こそ深刻な状況にあっても不思議ではない。
 いずれにせよ、海を越えての人や物の行き来が活発になった今、ベッドバグと無縁の都市など存在しないと考えたほうがよさそうだ。
 したがって、ラスベガスでサミットが開かれるのは、もちろんコンベンション都市だからであって、ラスベガスがベッドバグと密接に関係しているわけではないが、地球規模でベッドバグが問題になっていることだけは知っておいて損はないだろう。

 さて、ラスベガスにおけるペット歓迎ホテルは具体的にどこか。ちなみにペットを受け入れているホテルのことを 「Pet Friendly Hotel」 と呼ぶことが多い。
 現在の状況を見ている限り、ペットフレンドリーホテルかどうかは、企業系列で分かれる傾向にあるようだ。
 ストリップ地区の主要ホテルの経営は、シーザーズ社系列のグループと MGM社系列のグループに大きく分かれており、ペットフレンドリーホテルは前者に集中している。その他のホテルでは、トランプ、コスモポリタン、フォーシーズンズなどが受け入れ派だ。
ベッドバグ, bedbug  ちなみに右は、ストリップ地区における主要ホテルの系列別の分布図で、緑の はシーザーズ社系列のホテル、青の がMGM社系列、灰色の はその他の企業が運営するホテルで、ペットフレンドリーホテルを で示してみた。シーザーズ系に集中していることがよくわかる。

 なお、どこのホテルも原則として犬だけで、猫は不可。 犬のサイズは、シーザーズ系を中心に多くの場合、50ポンド(約23kg)までに制限されている (コスモポリタンは30ポンド、フォーシーズンズは25ポンドまで)。
 料金は、人間の宿泊料金とは別に 1泊につき 50ドルがほとんどだが、トランプは1回の滞在につき 200ドル、フォーシーズンズは無料。

 なお、これら条件は今後変わる可能性があるばかりか、ペットの受け入れ自体が撤回されることもあり得ると考えておいたほうがよい。また逆に、現在はペット拒否のホテルが、今後いつのまにかペットフレンドリーに方針変更する可能性もあり、そしてそれらの変化はすぐに把握することがむずかしい。なぜなら、どこのホテルも一般客にはあまり知られたくないため、ペットに関する情報の伝播は、積極的な広告などよりも、ペット保有者間での口コミなどに頼る傾向にあり、方針が変わってもネットなどで広く告知しないからだ。

 ホテル側の意思とは別の要因にも注意を払う必要がある。ホテル業界におけるペットフレンドリーのトレンドとは逆に、最近ラスベガス市では、繁華街でのペット同伴の歩行を条例で禁止する議論がさかんで、その影響を受けてホテル側の考え方も揺れ動いているからだ。禁止区域は今後どんどん広がる可能性があり、そうなるとせっかくペットを連れてきても行動が制限されてしまうため、結果的にホテル側も受入方針を撤回することになりかねない。
 いずれにせよペット同伴者はホテル利用の際、そのつど条件などを詳しく確認したほうがよいだろう。

 最後に、ペットフレンドリーホテルのほうが本当にベッドバグが存在しやすいのか調べてみた。
 「bedbug, hotel」 などで検索してみると、ベッドバグの発生状況を全米の都市ごとやホテルごとにまとめているサイトがいくつか見つかる。中立かつ公平に扱っているサイトが多いものの、ホテル予約サイトの広告バナーを貼るなど、個人が副収入目的で運営しているサイトも目立つので、あえてここでは URL を紹介することは差し控えるとして、それらサイトに掲載されている情報を分析した限りでは、わずかの差ではあるが、たしかにベガスにおいてもペットフレンドリーのホテルのほうが、客室数の割にベッドバグ問題が多く発生しているように見受けられる。
 もちろんそれら各ホテルでは、「ペットが宿泊できる部屋はフロアごとにはっきり区別しており、毎日きちんと消毒もしている」 と清潔であることを強調しているが、人や物がフロア間を行き来している限り、ベッドバグの移動を完全に防ぐことはむずかしく、ペットフレンドリーホテルのほうが問題が多くなりやすい傾向にあることは疑いのない事実といってよいのではないか。
 それでも、自宅でペットを飼っている観光客が、ペット無しで普通のホテルに訪問滞在し、その者の持ち物などを経由してベッドバグが持ち込まれることなどいくらでも想定されるわけで、ペットを拒否しているホテルといえどもベッドバグの侵入を防ぐことは不可能に近く、結局、「気にし出したらどこのホテルにも滞在できない」 というのが現実だろう。
 今週のサミットで話し合われる内容や業界の今後の方針などが大いに気になるところだが、それらは機会を改めてまた報告してみたい。



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