週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2012年 07月 18日号
アメリカ本土最高峰、ホイットニー登頂はベガスから
ホイットニー  今週は、日本人にとってはある意味 「秘境」 であり、ラスベガスからアクセスが可能なアメリカ本土最高峰 ホイットニー山 (Mt.Whitney。写真右、クリックで拡大) を紹介してみたい。

 ご存じの通りアメリカには 50 の州がある。そのうちの 48州がいわゆるアメリカ本土、そして残りの 2州が太平洋に浮かぶハワイ州と、北極に近い飛び地のアラスカ州。
 それぞれにすばらしい高峰がある。とりわけハワイ州の最高峰マウナケア(4205m) とアラスカ州のマッキンリー (6194m)はあまりにも有名だ。一方、アメリカ本土のホイットニーを知る人は意外と少ない。標高4418m で、マウナケアよりも高いというのに。

ホイットニー  マッキンリーはその圧倒的な高さと、国民栄誉賞の冒険家、植村直己が遭難するなど悲劇の舞台として話題になることが多く、またマウナケアには、かの有名な日本のスバル望遠鏡がある。ホイットニーはそういった話題性に欠けるのか、その名を知る人は非常に少なく、その所在地を知る人はもっと少ない。「本土最高峰」 と聞けば、だれもがアメリカの背骨的な存在の険しいロッキー山脈の中にあると思うことだろう。しかしそんな辺ぴな奥地にあるのではない。

ホイットニー  意外にもホイットニーは、世界のだれもが知る近接した3都市に囲まれたほぼ中央に位置している。なんとその3都市とは、日本人にとっての西海岸旅行の訪問地ご三家ともいえるロサンゼルス、サンフランシスコ、ラスベガス。
 そして道路事情などの条件から、「ラスベガスからのアクセスが最も便利」 と聞けば、「行ってみたい」 と思う読者も少なくないのではないか。

ホイットニー  ちなみにラスベガスからの距離は、あのグランドキャニオンとほぼ同じで、レンタカーで5時間程度のドライブ。そして、富士山で言えば5合目のような場所まで舗装道路で行くことができる。
 さらに副産物的な観光として、ラスベガスからこの山に行く途中、デスバレー国立公園 (写真右) に立ち寄ることもでき、また、数々のドラマや映画の舞台にもなっている 「マンザナー強制収容所」 (週刊ラスベガスニュースの759号で紹介)の見学も可能だ。加えて、ほとんどが雄大な砂漠や荒野の中のドライブとなるので渋滞の心配などはまったくない。

ホイットニー  このように、比較的アクセスしやすい地理的条件にあるにもかかわらず、日本人訪問者の数はグランドキャニオンと比べると1万分の1、いやそれ以下かもしれない。
 日本ではありえない標高を体験できる稀有な山なので、ぜひもっと多くの日本人に行ってもらいたい。紺碧の空に映えるその名峰の頂きに立つことは、何事にも代えがたい感動をもたらしてくれるはずだ。
 もちろんグランドキャニオンのように気軽に参加できるツアーがあるわけではないので、レンタカーで自力で行く必要があり、また登山である限り、ある程度の体力や知識は不可欠。さもなければ命を落とすことにもなりかねない。
 それでも今の時期は雪崩のリスクなどはほとんどなく、またこのエリア一帯は晴天率が高いので、夏期であれば比較的簡単に登れる山とされている。(年によって多少異なるが、夏場は頂上付近でも右上の写真以上の雪があることはまずない)

ホイットニー  目安として、登頂を目指すトレイルの長さは往復およそ35km。早朝に出発し、中腹のキャンプで1泊、翌日の登頂後に、またキャンプに戻り1泊、その後下山という3日の旅程であれば、それなりのトレーニングを積んでいる人にとっては、無理のないプランだろう。
 富士山を制覇し、さらに高い山に登ってみたい人には、地理的にも難易度的にも費用的にも、最もお勧めできる山と言ってよいのではないか。
 なお自然保護の観点から、入山者数が限られており、時期によっては事前手続きや抽選に当たる必要があったりするが、これらに関しては各自、以下のサイトなどで研究していただきたい。
www.recreation.gov/unifSearchResults.do?topTabIndex=Search
www.fs.usda.gov/detail/inyo/passes-permits/recreation/?cid=stelprdb5356869
www.mount-whitney.com/climbing_mt_whitney.php

ホイットニー  また、季節により携行が義務付けられている熊缶 (Bear-Resistant Food Container: テントを襲うと食料にありつけることを知ってしまうと危険なので、熊でも破壊できない頑丈な食料保管用の容器に食料を入れる義務がある) や、トイレに関するルールなども、しっかり学び理解しておく必要がある。そういった手配などを自力でできないようでは、登山自体も危険になるので、最低限のことは、他人に頼らずに情報収集してほしい。(右上の写真は、入山前に管理事務所でトイレの方法について学ぶ女性登山家)

ホイットニー  さて行き方についてだが、さまざまなサイトで地図の入手が可能なので、細かい説明は割愛させていただくとして、基本的にはラスベガスからデスバレーを経由し、Lone Pine という小さなビレッジを目指すことになる。(右の写真は、トレイルの途中にある Lone Pine Lake)
 入山許可証を受取るための管理事務所 (写真右下) がそのビレッジの南端、136号線と395号線の交差点にあるので、そこで登山前日までに必要な手続きを済ませておこう。
 ここでは、知識豊富なパーク・レンジャーが、登山や熊対策に関する様々な質問に答えてくれるばかりか、最新の気象・登山道情報も入手できるため、時間に余裕をもって訪れたい。

ホイットニー  ちなみに富士山などとは異なりトイレは山に存在せず、自分の 「モノ」 は自分で持ち帰るルールになっており、持ち帰るための特殊な袋などもこの管理事務所で手渡される。
 事務所での用件がすべて済んだら、Lone Pine からホイットニーの中腹へ向かう Whitney Portal Road を15分ほど終点まで走ると、富士山の五合目とほぼ同じ標高2540m 地点にある登山道の出発地点に到着。駐車場は無料で、すぐそばには軽食がとれるレストランや土産店があり、下山後にシャワーを浴びられる施設もある。

ホイットニー  登山中、日本の山よりも気をつけるべきことは、紫外線と乾燥、そして高山病。
 特に高山病に関しては、日本では存在し得ない高度なので、富士山で問題なかったからといってホイットニーで大丈夫という保証はどこにもなく、だれにでもそのリスクがあることを覚えておきたい。少しでも体調に異常を感じたら、引き返す勇気が必要だ。高山病は命を落としたり後遺症を残すようなこともあるので決して侮ってはいけない。(右上の写真は、山頂付近から西側に広がるセコイヤ国立公園周辺を見下ろした風景)

ホイットニー  「全ては自己責任」 を肝に命じ、単独行動は避け、無理のないプランで大自然と向かいあってほしい。トレイルは、湖、松林、川、緑地、岩山など変化に富み、それは美しい。
 山頂は、入山者数制限のためか、登山シーズンでも人影はまばらで、晴れた日には、静寂に包まれた絶景を楽しむことができる。
 頂上で目にとまるのは、National Park Service が、全米登山ルート最高地点 (The Highest Trail in the United States) と記した看板。(写真)
 そして、落雷の危険を回避するために建てられた小屋の外に備え付けられた金属の箱の蓋を開けると、風雨から守られた登山記録ノートが入っている。登頂の折には是非、アメリカ本土最高峰を極めた記念として、名前とコメントを残していこう。



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