週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2012年 06月 20日号
ベネシアンホテルで期間限定の 「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」
レオナルド・ダ・ヴィンチ展  今月15日からベネシアンホテル (写真右、クリックで拡大) で、「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」 が始まった。
 会場の場所は、本館のフロントロビーからカジノへ通じる回廊沿いで、かつてグッゲンハイムおよびエルミタージュ美術館の分館として使用されていたアートギャラリー。期間はとりあえず 10月15日までの4ヶ月間となっているが、今後の集客状況によっては延長もあり得るとのこと。

レオナルド・ダ・ヴィンチ展  レオナルド・ダ・ヴィンチといえば、だれもがすぐに思いつくのが絵画の 「モナ・リザ」、そして壁画の 「最後の晩餐」、さらに科学の分野では、全日空 (旧社名 「日本ヘリコプター」: その名残で今でもフライト番号などに付く会社コードは NH) の社章にもなった有名な "ヘリコプター" の図案、といったところまでで、芸術から科学まで幅広い分野で多才な能力を発揮した人物であることは広く知られているものの、その高い知名度のわりに、実際の作品数としてはゴッホ、モーツアルト、エジソンなど、他の芸術家や偉人たちに比べると意外と少ない。
 そのようなわけで、展示物が十分にあるのだろうかと少々気にしながら入館してみたが、そんな心配はまったく無用だった。展示物がことさら多かったというわけではないが、ダ・ヴィンチの多才ぶりを理解するには十分すぎるほどの内容で、「そんな昔に、こんなモノまで造っていたのか」 と、その非凡な才能にはただただ驚くばかりだ。

レオナルド・ダ・ヴィンチ展  勘違いする人がいるといけないので、まず最初にことわっておくと、この展示会における陳列品は基本的に本物ではない。つまりダ・ヴィンチ自作の現物ではなく、模型や再現品ばかりだ。(右写真はダ・ビンチが考えた滑車の原理を採用した道具の再現品)
 しかしそのことを理由に、この展示会を過小評価したりするのは適切ではないだろう。
 なぜなら、壁画の 「最後の晩餐」はもちろんのこと、「モナ・リザ」も、それぞれミラノやパリからそう簡単に持ち出せないことは想像に難くないばかりか、そもそもダ・ヴィンチは美術だけを専門としていたわけではないため、美術品自体の数が非常に少なく、また発明品などに関しても、時代があまりにも古いため、現存している本物がほとんど無いからだ。つまりゴッホやピカソ展などとは異なり、本物の作品を並べて展示会を開くことは物理的に不可能ということ。
 したがって、この展示会は、ダ・ヴィンチの実際の作品を陳列し、それを訪問者が鑑賞するという主旨のものではなく、模型などを使って、彼が成し遂げてきたことを広く知らせるための情報提供の場であり、見学する側は、ダ・ヴィンチという人物の功績を知り、それを称えることができればそれで目的は果たせるというわけだ。

レオナルド・ダ・ヴィンチ展  館内に入って最初に目に飛び込んでくるものは、かの有名な "ヘリコプター" だ (写真右)。
 鳥などの動きを観察しているうちに、人間も、今でいうところのヘリコプターのような装置を使えば空を飛べると確信し (ヘリと鳥では飛行原理がまったく異なるが)、そしてそれを実際にイメージして記録に残したこと自体、驚異的なことといってよいのではないか。なぜなら、今から約100年ちょっと前にライト兄弟が人類初の飛行に成功したわけだが、ダ・ヴィンチは、それよりもさらにさかのぼること400年も前の時代に生きていた人物だからだ。

レオナルド・ダ・ヴィンチ展  その次のセクションは、大砲や運搬装置や自転車などの比較的大きなものから、ベアリング、風向計、時計といった小さな物まで、数々の発明品が所狭しと並ぶ。
 また解剖図など (写真右)、医学の分野にも絶大なる興味を示していたことが伺える展示もあり、ちなみに、当時の常識では、男性の性器の興奮時の膨張は空気によるもの、とされていたが、ダ・ヴィンチは解剖など研究を重ね、血液によるものであることを世界で最初に発見した人物とされている。
 モナ・リザを描き、空飛ぶ機器を構想しながら、性器の謎にも迫るダ・ヴィンチ。どういう思考回路の持ち主なのか、この男に対する興味は尽きない。

レオナルド・ダ・ヴィンチ展  展示通路をさらに進むと、「モナ・リザ」 専用のセクションがあり、そこではその名画に秘められた謎を徹底分析。この説明や考察がなかなかおもしろいので、すべて英語ではあるが、ぜひ最後まで読んでいただきたい。
 そして最終セクションにあるのが、ミラノの至宝 「最後の晩餐」。巨大スクリーン上に、実物とほぼ同じサイズに映し出して再現する (写真右) というユニークな演出で一連の展示は終了。

レオナルド・ダ・ヴィンチ展  ダ・ヴィンチは、ライト兄弟、エジソン、ベートーベン、ニュートン、ガリレオなど、著名な科学者や芸術家のほとんどだれよりも古い。その時期、日本は室町時代の中期から後期だ。
 そういった時代の差を意識しながら展示物を見ていると、「人類史上、知能指数が最も高かった人物ではないか」 などと思えてきたりもするが、果たして事実はいかに。
 カジノ、ナイトショー、アトラクションなど、娯楽中心のエンターテーメントで成り立つこの街の雰囲気に高尚な博物館はあまり似合わないかもしれないが、たまにはこういう施設を訪れてみるのも悪くない。開館時間は午前10時から午後9時まで、入館料は 25ドル。



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