週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2012年 04月 25日号
D ホテル、名称変更だけでは不十分、さらなる変化に期待
The D Hotel Las Vegas  ダウンタウン地区の空を圧倒する巨大なの字と、スラリと伸びた女性の脚。(写真右、クリックで拡大。写真の右上部に見えるものは電飾アーケードの屋根の一部)
 周辺一帯で最も高いビルの壁面に描かれているこの奇妙なデザインは、3月に誕生した新ホテルのロゴ。その名も The D Las Vegas
 誕生後、約一ヶ月が経過し、そろそろ工事などが落ち着いてきたというので現場に足を運んでみた。

The D Hotel Las Vegas  青空にひときわ映え、視覚的にはすっかりダウンタウン地区の名物となった感のあるこの真っ赤なD。オフィスビルの壁面を借りての一時的な宣伝広告ではない。地上33階のこのビル自体がすべて Dで、客室数638を誇る高層カジノホテルだ。
 「3月に誕生」 と書いたが、実はまったく新しく建設されたホテルではない。つい先日まで 「フィッツジェラルズ」 と呼ばれていた築33年のホテルで、このたびオーナーシップが変わったことに伴い、名称も新しくなったというわけだ。

The D Hotel Las Vegas  それにしても奇抜なこのネーミング、だれもがその理由や根拠を知りたいところだろうが、あまり真剣にそのナゾ解きをしないほうがいい。Dの意味を聞かされると、そのあまりにも単純な発想に少々拍子抜けしてしまうからだ。
 ずばりこのDの意味はダウンタウンのD。ストリップ地区に負けないダウンタウン地区の繁栄と、この地区を代表するホテルになるという願いを込めてのネーミングとのこと。ついでに筆頭株主で最高経営責任者の Derek Stevens 氏のイニシャル、そして彼にゆかりのある都市デトロイトのDも少しは意識しているとか。
 いずれにしても、一般的には意味が伝わりにくいこの種のネーミングは、経営的にプラスに作用するのかどうか、業界関係者の間でも懐疑的な意見があるようで、早くも 「名前で失敗する」 との声もあがっている。
 ちなみに3年前にラスベガスの郊外にオープンしたカジノホテル 「M」 (この週刊ラスベガスニュース第632号で掲載) は、リーマンショックという時期的な不運もあったが、開業直後から経営難に陥り、今ではネーミングの悪さまでもが指摘されている。
 また今年1月から名称を "Las Vegas Hotel" こと 「LVH」 に変更した元ラスベガスヒルトンも、ネット検索において、ラスベガスの各ホテルをまとめたようなサイトと混同されやすく、そんなことなどが原因となって客室稼働率が激減しているとのこと。やはり奇をてらった名前はよくないということか。

The D Hotel Las Vegas  さてネーミングの是非論はともかく、新オーナー Stevens 氏は、昨年10月にフィッツジェラルズを買収した直後から、「まったく新しいホテルに変える」 と宣言しており、実際にいくつかの改造プランを発表している。そしてその多くの目標時期を4月に設定、それに先立ち3月に名称変更をしており、今回その進捗状況を見に行ってみたわけだが、残念ながら、まだ大きな変化は見られなかった。
 改造プランの最大の目玉は、カジノへの入口の部分で、電飾アーケード街からカジノフロアの2階へ直接アクセスできるエスカレーターの設置などが工事の中心となる予定だが、現時点で工事が始まる気配がまったくないのはどうしたことか。
 結局、予定通り完成しているのは、長さ約30メートルを誇る 「ラスベガス最長の直線バー・カウンター」 こと "Longbar" (写真右上) だけだ。36席のすべてにビデオポーカーなどのカジノゲームが備わり、カウンターの奥には 70インチのテレビが15台直線的に設置されているさまは、たしかに見応えがあるが、これだけが新生Dの新施設というのではあまりにも寂しい。

The D Hotel Las Vegas  広報部門に今後の改造計画についてたずねてみたところ、「やることは間違いない」 というのみで、具体的なスケジュールなどに関しては歯切れが悪い。
 ちなみに利用者にとって関心が高い客室内の改装についてだが、「やることはやるが大改造ではない」 と、かなりトーンダウン。
 実際に部屋 (写真右) を見せてもらったところ、新しくなっていたのは廊下のカーペット程度で、客室内に最近手が加えられた様子はうかがえなかった。2フロアぐらいずつを閉鎖しながら、ゆっくり時間をかけてリニューアルするとのことだが、いつになることやら。
 あとになって予算を聞いて驚いたが、1500万ドルしか用意していないようだ。この規模のホテルのリニューアル予算としては、ストリップ地区に比べ一桁少ない。

The D Hotel Las Vegas  宿泊料金を エクスペディア で調べてみたところ、ゴールデンウイークの平日、日本円で一泊一部屋 2,000円前後となっている。
 異常に安いようにも思えるが、これはリーマン・ショック以降のダウンタウン地区の平均的な水準で、この実態を考えると、ストリップ地区のホテルのようにリニューアルに何億ドルも注ぎ込めないことは理解すべきなのかもしれない。そうなると、右上の写真 (看板を取り替えただけの館内の売店) のような改造だけで予算は底をついてしまう可能性がある。

The D Hotel Las Vegas  限られた改造予算においては、まずは名称変更に伴う看板などの取替を優先せざるを得ないので、すでに宣言している各種の改造はまだまだ先になってしまいそうだ。
 右の写真を見る限り、看板の取替すらまだ手が付けられない様子で (写真内の左下の薄い紫の部分にフィッツジェラルズの大きなロゴがまだ放置されたままになっている)、予算的にかなり厳しい状況にあることがうかがえる。カジノ内にもまだまだたくさんの旧名ロゴを見ることができ、その数は膨大だ。
 結局、現時点では、「一番大きく変わったのは名前」 ということになり、大きな変化を期待して宿泊したりすると、ガッカリすることになりかねない。それでも1泊約 2000円という料金を考えると十分すぎるレベルにあるホテルであることは間違いなく、また、客室内がリニューアルされていないとはいえ、ダウンタウン地区の平均以上のレベルにあることもたしかだ。予算を最優先に考える場合は宿泊候補に入れておいてよいのではないか。そうこうしているうちに改良工事が少しでも進むことを祈りたい。じつは現場取材を終え、この記事を書き始めてから、「カジノフロア内で工事が始まった」 との連絡が現場から入った。



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