週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2012年 03月 07日号
危険な荒ワザがウリのマジックショー "ILLUSIONS"
Illusions by Jan Rouven  3月1日、リビエラホテルで、危険な荒ワザをウリにするマジックショー 「ILLUSIONS」 が始まった。
 演じているのはドイツ人マジシャン Jan Rouven (発音は ヤン・リューベン、写真右)。
 テレビ出演なども多く、ドイツでは知らない人がいないほど有名のようだが、「いつかはラスベガスで」 との夢を捨てきれず、昨年、収入の激減を承知で当地に移住。
 その後約半年間、立地的にも規模的にも観光客の目に止まることがほとんどない無名のホテル 「クラリオン」 で、細々と公演を続けたのち、このたびやっと晴れてストリップ地区の大型ホテル 「リビエラ」 でのデビューを果たすことになった。

Illusions by Jan Rouven  内容は大掛かりなイリュージョンが中心。つまり、手先の技を使ってハトを出したりするようなたぐいのマジックはほとんどない。
 そうなると 「仕掛けがすべて」 ということになり、マジシャンの技量に頼る要素は少なく、同じ考案者のマジックを演じる限り、だれがやっても似たような結果になりがちだが、見かけの風貌がいいのか、性格がいいのか、はたまた振る舞いが洗練されているのか、観客のウケは総じて良く、地元メディアでの評判も上々だ。
 ちなみにトークの部分では、わかりやすい綺麗な英語を話し、観客からの笑いをさそう。取材インタビューで実際に会って話してみた感じも、ドイツ人という先入観が多少あったにせよ、アメリカの著名人にありがちな横柄な印象はまったくなく、好感が持てた。

Illusions by Jan Rouven  これまで長らく 「Nine Lives」 (「命が九つあると思えるほど不死身」 という意味) をキャッチコピーやテーマとしてきただけのことはあって、身の危険を伴うイリュージョンを得意としており、実際にその種の演出が圧倒的に多い。
 もちろんすべてはマジック。安全は保障されているわけで、彼の身の危険を案じる必要はないが、観客としてはけっこうハラハラ、ドキドキしたりもする。
 たとえば水槽の中からの瞬間脱出 (演目 "Water Tank"、写真右上) などは、他のマジックショーでも類似のものを観ることができるが、水の中で苦しそうにもがいている場面を何度も何度も見せるなど、危険を感じさせる演出が実にうまい。

Illusions by Jan Rouven  その他にも、彼が寝ているところに鋭利な剣を上から落とす "Bed Death"、手のひらをナイフが突き抜けてしまうかもしれない "Hand Stab" など、ハラハラさせるイリュージョンを次から次へと披露。
 また、「危険の演出」 だけでなく、瞬間移動系のイリュージョンにおける動きの速さも自慢で、ドイツでは、「あんな短時間で入れ替われるわけがない。双子の兄弟が演じているにちがいない」 といった噂が絶えないらしい。そんな疑惑を晴らすために、観客をランダムに選び、その観客に太いペンで自分の腕に大きく署名させ、瞬間移動の前と後の自分が同一人物であることを証明できるようにするなど、そのへんの演出も、イリュージョンの大御所 デイビッドカッパーフィールドに勝るとも劣らないうまさがある。

Illusions by Jan Rouven  なにやらいいことばかり書いてきたが、不安がないわけではない。このまま順調にラスベガスでも知名度が上がり、ロングランになったり、もしくはさらなるステップアップで高級ホテルに移籍できたりすると考えるのは早計だ。それほどベガスのショービジネスは甘くない。
 観客が 100人前後しかいなかった現実が、それを物語っている。3月1日に始まったばかりとはいえ、クラリオン時代の公演を含めて考えると、知名度の低さは否めず、前途多難と考えるべきだろう。
 特にここ数年は不況ということもあり、名だたる一流マジシャンでもロングランはむずかしく、現在安定的に公演を続けられているのはデイビッドカッパーフィールド、ペン&テラーなどごく小数で、マックキング、ネイザンバートンなどもなんとか公演を続けているが、タダ同然の格安チケットをばらまいて集客しているのが現状だ。
 また、冒頭で、「晴れてストリップ地区の大型ホテル」 と書いたが、リビエラは大型ホテルではあるものの、すでに時代を終えた寂れたホテルで、立地条件も悪く、実際に周辺の人通りは少ない。会場となっているシアターも狭く老朽化しており、決してメジャーデビューといえる状況にはない。
 その一方で、「ひょっとすると人気が出てブレイクする逸材かも」 と予感させられるのも事実。そういえば、かつてベガスで一時代を築いたマジック界のスーパースター 「シークフリード & ロイ」 もドイツからの移民だった。実力さえあれば、出身国などが出世のハンデになることはなさそうなので大いに頑張って夢を実現してもらいたい。
 なおこれは余談だが、多くの著名マジシャンが日本公演を経験しているなか、彼は未経験とのこと。また現時点では日本公演は予定に入っていないようだ。

Illusions by Jan Rouven  開演は水曜日以外の毎日 7:00pm。会場はリビエラホテルの円筒形状の施設 (写真右) 内にあるスターライト・シアター。指定席ではないので、入口で案内人 ( Maitre ) にチップを渡せば良い席に案内してもらえる可能性が高いが、会場は約250席と小さく、ステージから遠い劣悪な席はあまりないと考えてよい。
 チケット売り場はリビエラホテル内のカジノ・キャッシャーに併設されている窓口。料金は $49 + 税 + 手数料などで $50 を超えてしまうが、市内にある半額ショップなどで安く売り出される可能性があるので、そういった場所もチェックしてみるとよいだろう。



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