週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2001年12月12日号
Wynn 氏の美術館、60億円 "Le Reve" を初公開
 2004年末頃に開業が予定されている超豪華ホテル Le Reve の建設予定地 (元デザートインの跡地) に、同ホテルのオーナー Steve Wynn 氏の名を冠した美術館 The Wynn Collection が先月オープンした。
 また、そのホテル名の由来となったピカソの傑作中の傑作といわれる作品 Le Reve も同時に公開された。
( "Le Reve" はフランス語で "夢" を意味し、当地ラスベガスでは "レ" にアクセントを置き "ラレブ" と発音されている)

 Wynn 氏は 90年代、ベラージオ、ミラージ、トレジャーアイランドなどの大型テーマホテルを次から次へと建設した男として知られ、当時それらホテルを統括する Mirage 社の会長職に就いていたが、2000年春、MGM 社 (現 MGM Mirage 社) が Mirage 社を買収したのをきっかけに自ら建設したホテルを去り、"夢" のホテル Le Reve の実現を目指し名門ホテル・デザートインを買い取った。そして今、デザートインは取り壊され Le Reve に生まれ変わろうとしている。
 そのようないきさつもあり地元では 「何か新しいことをやってくれる男」 としてヒーロー的な扱いを受ける傑出した実業家だが、それと同時に Wynn 氏は絵画のコレクターとしても広く知られている。かつてベラージオホテルのアートギャラリーに自らが所有するピカソ、ゴッホ、モネ、ゴーギャンなどの名画を展示していたことは、日本人観光客の記憶にも新しいはずだ。
 個人の所有物を会社(ホテル) に持ち込むことに対して公私混同との指摘も一部にはあったようだが、Wynn 氏はそんなことはおかまいなしなのか、今度建設するホテルにも名画をたくさん展示するという。それどころかすでにそのホテルの名称を自分が好きな絵のタイトルにしてしまったわけで、道楽もここまで来ると誰も口を挟めないといったところか。もっとも今回のホテル名は Elaine 夫人の意見で決ったとの噂もあるので彼女だけは口を挟めるのかもしれないが、この際そんなことはどうでもよいだろう。

 そんな Wynn 氏が、「Le Reve が完成するまでしまっておくのももったいない」 と始めたのが今回の The Wynn Collection で、その展示場は元デザートインの北館の1階に出現した。元デザートインはすでにその大半の施設が爆破解体され、現場周辺では Le Reve 建設のための準備が進められているが、解体されずに残された一部の施設 (写真右上) が今回の展示場に使われている。

 展示作品は全部で13点。ベラージオ時代に展示されていたのは3点だけで、あとはすべて初公開とのこと。Wynn 氏がどれだけの数の作品を所有しているのかわからないが、今後も定期的に展示作品を入れ替える (現場スタッフの話) というから恐れ入る。

 今回の展示での注目は誰がなんと言おうとピカソの名作 "夢" こと Le Reve (写真左上) をおいて他にあるまい。ホテル名にしたくなるほど Wynn 夫妻が惚れたというこの作品、好みの問題もあり意見が分かれるところだろうが、実物はかなり大きく (130cm x 97cm) それなりの迫力があるばかりか (この作品に "迫力" という要素を求めるのは間違っているのかもしれないが)、総工費 2000億円とも言われる超豪華ホテルの名称になると聞いてしまっているためか、どことなくオーラが放たれているように見受けられた。参考までにこの絵は 99年7月にニューヨークのクリスティーズのオークションにて 4800万ドル (約60億円)で Wynn 氏の関係者が落札したとされている。

 その他の作品は以下の通りだが、作品番号 12番の Wynn 氏の肖像画だけは彼のジョークなのか笑わせてくれる。いくら Warhol が描いたといっても他の作品とのバランスが悪く雰囲気を壊すだけのような気がしないでもない。事実 Wynn 氏自身がナレーションする作品解説の中で彼も笑いながら説明しているので半分冗談と考えてもよさそうだ。(入場の際、コードレス電話大のナレーション装置を渡され、作品の前に表示されている番号をそれに入力すると Wynn 氏による解説が流れてくるようになっている。)

作品番号1 Jardin de 1 Hemitage MaisonRouge (Camille Pissarro)
作品番号2 Camille a I'Ombrelle Verte (Claude Monet)
作品番号3 Mademoiselle Suzette Lemaire (Edouard Monet)
作品番号4 Self Portrait (Edouard Monet)
作品番号5 Bathers (Paul Gauguin)
作品番号6 Peasant Woman against a Background of Wheat (Vincent Van Gogh)
作品番号7 The Persian Robe (Henri Matisse)
作品番号8 Pineapple and Anemones (Henri Matisse)
作品番号9 Curtain, Jug and Fruit Bowl (Paul Cezanne)
作品番号10 Portrait of a Woman (Paul Cezanne)
作品番号11 Le Reve (Pablo Picasso)
作品番号12 Steve Wynn (Andy Warhol)
作品番号14 Nude on a Couch (Amedeo Modigliani)

(13番は縁起が悪いので欠番とのこと)

 展示会場は非常に狭く 20〜30人のミーティングルーム程度の大きさだが、それなりに荘厳で 60億円の絵を観るに遜色のない雰囲気が漂っている。
 高価な作品が並ぶ割にセキュリティーが手薄なのには驚く。作品からわずか 1メートル離れた位置に低い手すりがある以外は、年老いた係員が一人立っているだけでなんとも優雅というか呑気で緊張感などまるでない。また、10月にベネシアンホテルにオープンしたグッゲンハイム美術館と違い、作品はガラス無しの額に収まっている。極端に作品に近づくと警報ブザーが鳴る仕組みになっているものの、この程度の管理でいたずらなどの破壊行為から守られているのかどうか非常に心配になってしまうほど警備は手薄だ。いたずらするような馬鹿は来ない、という前提で運営されているのだろうが、何ごとにおいても性悪説で社会が成り立っているアメリカ社会、ましてやテロ事件の影響でどこも警備が厳しくなっているこのご時世、この会場の信じられないほどのどかな雰囲気は非常にうれしくなるばかりか心をなごませてくれる。

 展示時間は 10:00am 〜 5:00pm、月曜日と火曜日は休み。今回の展示はビジネスではなく、地元の子供たちへの美術鑑賞体験など地域貢献が主たる目的とのことで入館料は非常に安く、一般の大人が $10、子供 (6〜12才) が $6、地元民の大人が $5、子供が $3 となっている。展示期間は Le Reve の建設工事に支障が出ない限り可能なだけ続けるという。場所は前述の通り元デザートインの北館1階。


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