週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2011年 11月 02日号
シーザーズパレスにスターシェフの 24時間カフェがオープン
 このたびシーザーズパレス (写真右、クリックで拡大) に、「スターシェフが監修するカフェ」 という珍しい形態の便利なレストランがオープンしたので紹介してみたい。
 店の名前は 「CENTRAL」。珍しいといっても、見かけは何の変哲もない 「ちょっとお洒落な 24時間営業のレストラン」 といった程度の店で、特に他店との大きなちがいを見い出せるわけではない。
 では何が珍しいのか。それを説明する前に、「スターシェフ」 と 「カフェ」 についてふれておく必要がありそうだ。

 まず、スターシェフについでだが、これは特にむずかしいことはなく、そのままの解釈、つまり 「有名シェフ」 という意味でいい。日本で言うところのカリスマシェフといったところだが、アメリカではスターシェフという言葉がよく使われる。
 有名シェフの店など、最近のラスベガスではどこの高級ホテルにも一つや二つはあり、ぜんぜん珍しいことではないが、「有名シェフのカフェ」 となると話は別だ。
 では 「カフェ」 とは何か。ハードロックカフェ、レインフォーレストカフェなど、名称に 「カフェ」 が付く店は少なくないが、今回のここでの話は店の名前にそれが含まれているかどうかではない。カジノを運営するために必要な条件として当局に登録している店かどうかだ。この CENTRAL はそのための店、つまりカジノ運営免許を維持するための店なのである。(右上および右下の写真は CENTRAL の店内)

 といってもまだわかりにくいはずなので、もう少し補足しておきたい。
 カジノの運営に対しては、当然のことながらそれなりの法律がある。いくらカジノが合法化されているネバダ州とはいえ、だれもが自由にカジノの胴元をやり始めてしまったのでは収拾がつかなくなってしまうので、州当局はいわゆる 「参入障壁」 として、カジノの開業に対して厳しい条件を設定している。
 といっても、国籍、人種、学歴など、差別的な方法で制限するわけにもいかないので、以下のような条件を決め、1991年に法律として制定した。したがって、これら条件を満たしていないと、カジノを開業することができない。

  201室以上の宿泊施設がカジノに併設されていること。
  30席以上のバー施設がカジノ内にあること。
  60席以上のレストランを 24時間、年中無休で運営すること。

 なお補足すると、カジノ免許には、カジノの規模によって二種類あり、スロットマシンやビデオポーカーなどのマシンゲームを 15台までしか設置できない小規模なカジノ (バー、コンビニなどで見かける形態のカジノ) と、それ以上の規模のカジノに分かれていて、今回ここでの話は後者のほうだ。

 上記の3番目の条件を満たす店のことを、カジノ業界では通常 「カフェ」 と呼んでおり (条文の中では、restaurant が使われており、 cafe という言葉が特に使われているわけではない。また、実際の店の名前に cafe を付ける必要はない)、CENTRAL はまさにこの条件を満たすための店ということになる。
 これだけの条件を満たした上で、さらにオーナーの過去の犯罪歴などの審査があるので、この法律は、そんじょそこらの資本では参入できない大きなハードルとなっていることはまちがい無いだろう。
 ちなみに、ベガスを代表する高級ホテル 「ウィン」 でもこの障壁はかなり高いのか、開業当初はそこそこゴージャスで大規模なカフェ TERRACE POINTE CAFE を24時間営業していたが、昨今の不況時の深夜営業は経費的な負担が大きいのか、24時間営業をやめてしまった。代わりに雑貨店に併設されていた小さなファストフード店を強引に60席に改装し、THE CAFE という名称で当局に申請している。
 なお、この法律が制定された 91年以前から存在していたカジノの中には、既得権として、この条件を満たさないまま営業しているカジノもある。ダウンタウン地区などに、201部屋に満たないカジノがあったりするのはそのためだ。

 話が長くなってしまったが、そのようなわけで CENTRAL はまさにそのカフェ。つまり年中無休の24時間営業なので、存在を知っておくと非常に便利だ。
 一般的に、どこのカジノホテルにおいても、24時間カフェは 「カジノ免許維持のために仕方なく営業している」 といった感じの店ばかりで、レストランとしてのグレードは決して高くない。それらカフェで、とんでもない味の料理に遭遇したことがある読者も多いことだろう。
 だからといって、まともなレストランが深夜に営業しているわけもなく、食べ放題のバフェィも24時間営業ではないので、時差ボケなどで深夜に小腹がすいたときなどは本当に困ってしまうのがラスベガスの食事事情だ。そういう意味では、スターシェフ監修のこの店は画期的なことといってよいだろう。

 さて気になるのはそのスターシェフのバックグラウンドや料理の内容ということになるが、フランス生まれでシャンパーニュ地方で育ったというそのシェフの名前は Michel Richard、63歳。
 2007年にワシントンDCのホワイトハウス近くに店を出し、料理界の著名な賞の一つ James Beard Award も受賞しているという本格派だ。
 「なんだ、たった4年の経験しかないのか」 と思うことなかれ。それ以前は、ロサンゼルス地区に住む人ならだれもが知る超有名高級レストラン Citrus のオーナーだったので経歴は申しぶんない。2001年に店を閉じ東海岸へ軸足を移すことになったが、その Citrus は、日本人観光客に人気のメルローズ通りにあったこともあり、日本人で店がいっぱいになることもしばしばあった。そのようなこともあって、このシェフは日本人の味覚も熟知しているというのがもっぱらの噂だ。
(料理の写真はどれも美しくなく、まったく見栄えがしないが、それに関しては後述)

 ちなみに、もともとの料理ジャンルの専門はフレンチ。若い頃はフレンチのパティシエとして活躍したらしいが、米国に渡ってからはアメリカ料理との融合を目指した創作料理に力を注ぐことになり、最近の彼の料理からは伝統的なフレンチのテイストが感じられなくなったとされる。
 独創性という意味では、それはそれで悪いことではないが、本格的なフレンチを期待していくとガッカリしかねないので要注意だ。

 もう一つ気になるのが料金ということになるが、そこは深夜もやっているカフェ。あくまでもカジュアルなダイニングとして存在する店なので、高級店のように高いメニューはほとんどない。その代わり、本格的な高級料理もほとんどない。
 中途半端のようにも思えるが、大衆カフェと、高級店の間を埋めるニッチな需要を満たす店としては十分に存在意義があるのではないか。
 「深夜の軽食や朝食だって、カジュアルな中にもちょっぴりお洒落な雰囲気を楽しみたい」 といった人には最適と思われる。

 いくつか料理を実際に食べてみたが、味はたしかに悪くないものの、スターシェフ、それもフレンチをバックグラウンドに持ったシェフの店としては、盛り付けがいささか寂しいという印象を受けた。それはほとんどの料理に共通して言えることで、とにかく色合いにもう少し工夫がほしい。
 たとえば右の写真は、朝食メニューとしては最高価格の 「フィレミニオン & エッグ」 だが、ちょっとした緑の野菜でもトマトでも何か添えないと見栄えがしない。
 「料理は舌だけでなく目でも楽しむ」 という感覚がアメリカ人にはないのかもしれないが (そうとも思えないが)、フランス生まれのフレンチ料理のシェフがそれを意識していないわけがないので、この色合いの乏しさはどういうことか。名前だけ貸して、本人はまったく現場に関与していないということか。
 ちなみに写真で掲載した以外のメニューでも、たとえば Michel's Faux Gras は、鳥や豚のレバーなどから作ったイミテーションのフォアグラ (Foie Gras) とのことだが、味こそ絶品だったものの、やはり見栄えは今ひとつ。他の料理もほとんどが殺風景。これではせっかくの高級コンセプトも泣いてしまう。
(写真は 4枚上から順に、ディナーメニューの Sea Bass $28、 Beef Burger $16、 ブレックファストメニューの Eggs Benedict $15、 Filet Mignon & Eggs $25)

 ということで、見栄えの悪さを指摘させてもらったが、その他の部分では、一般のカフェよりもワンランク上といえるので、チープなカフェにうんざりした際などは利用してみるとよいだろう。一人用のカウンター席 (写真右) もたくさんあることも付け加えておきたい。
 場所は、シーザーズパレスのチェックインやチェックアウトをおこなうメインロビーのすぐ近く。営業時間はもちろん 24時間、年中無休。



バックナンバーリストへもどる