週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2011年 10月 26日号
非健康的な高カロリーメニューが自慢の心臓発作グリル
 今月12日、ダウンタウンの電飾アーケード街の東端近くに、非健康的な高カロリー食と病院をテーマにしたハンバーガー店がオープンした。
 その名も 「ハートアタック・グリル」 (Heart Attack Grill、写真右、クリックで拡大)。
 ハートアタックとは、心筋梗塞、心不全など、いわゆる心臓発作のこと。つまり、心臓病になりかねないほど非健康的なメニューがウリで、一番大きなハンバーガー (写真右下) は、付け合わせのポテト込みで 8000キロカロリーというから半端ではない。
 急患に備えて、店の前には救急車も待機しているが、これはあくまでもジョーク。現役の救急車ではない

 ポテトもラードをたっぷり使った超高カロリー仕様で、飲み物も 「世界一バター脂肪が多い」 という超濃厚なシェーク。
 「そんなシェークはとてもじゃないけど飲めない」 という人のために、コーラやビールなど一般的な飲み物も用意されているが、「ダイエット」 や 「ライト」 といったたぐいのものは一切無く、大きさもビッグを追求しているため、たとえばビールはすべてロング缶 (約680ml) だ。
 マルガリータ、ピナコラーダ、ストロベリーダイキリなどのカクテル類もあるが、どれも 「アルコール濃度が高いので注意」 とのことで、健康的なものは何一つない。

 こだわっているのは食べ物や飲み物だけではない。店全体が病院をテーマにしており、入店時には全員が手術用のガウンを着せられる。(写真右)
 ウエイトレスはセクシーなナース姿で、ときどきバーテンダー役もこなすという男性のマネージャーは白衣を着た心臓外科医。
 そしてナースはもちろんのこと、外科医もときどき聴診器を持って、食事中の客の体調を気づかいながら店内を巡回する。

 超肥満の客が店に入ってきた際には、ダイニングルームの中央に設けられた大きな体重計で、ナース付き添いのもと、体重測定が行われる。
 みごと 350ポンド (約158kg) を超えていた場合は、ハンバーガーが無料になる (ドリンク類は無料にならない)。ただしハンバーガーを同伴者と分割して食べたり、持ち帰ることは許されていない。
 「その程度の肥満客は珍しくない」 と聞いていたので、体重測定や無料バーガー進呈などの現場に遭遇できることを楽しみにしていたら、噂に偽りはなく、取材訪問後 15分もたたないうちに超肥満な大男が入店 (写真右上)。体重測定の結果は 356ポンドでめでたく無料に。

 テーマへのこだわりはそのへんにして、入店した者にとって気になるのは、やはりハンバーガーなどの味だ。
 「こんなものばかり食べていると心臓病になりますよ」 という健康に対する啓蒙活動がこの店の本来の目的のようだが (右の写真は医師とナースが客に指導しているところ)、その一方で、「死んでも食べたいほどおいしいものをたまには食べてみよう」 がこの店のモットーというから、味にも大いに期待がかかる。
 そもそも、霜降り牛肉、寿司の大トロ、フォアグラなどの高級食材はもちろんのこと、一般的な食べ物でもケーキや揚げ物など、「おいしいものは高カロリーで非健康的」 というのが通り相場なので、超高カロリーのメニューばかりと聞けば、なおさら期待はふくらむ。

 メニューの数は多くない。ハンバーガーとポテトとシェーク、それにコーラ、ビール、各種カクテルなどの飲み物だけだ。
 そのハンバーガーも味のバリエーションはまったくなく、ベーコンを追加で入れるかどうか以外、あとはサイズの選択肢しかない。
 せっかくなので、最も巨大な 8000キロカロリーとされる4段重ねの Quadruple Bypass Burger (右の写真ではわかりにくいが、通常のバーガーよりもかなり大きく分厚い牛肉パテ230g が4枚、チーズ8枚、玉ねぎ半分、トマト1個)、ラードたっぷりのポテト Flatliner Fries、そして前述の超高カロリードリンク Butter Fat Shake をオーダーしてみた。ちなみに単語 Flatliner の意味は、心電図のグラフが平らな一直線、つまり死亡した患者のこと。
 さらにシェークの味がひどかった場合のために、ビールもオーダー。銘柄はこの店イチオシの Pabst Blue Ribbon。アメリカ人ならだれもが知る往年の安かろう悪かろうの大衆ビールだ。

 さて、その注目のハンバーガーの味だが、結論から先に書いてしまうと、うまいもまずいもない。かすかな塩味が付いている程度で、「基本的な味付けは、高カロリーとして知られるマヨネーズを自分でたっぷり付けて食べて下さい」 とばかりに、マヨネーズがテーブルにドーンと置いてある。
 マヨネーズ味が嫌いな者にはケチャップやマスタードなども用意されているので、どれをどのように使ってもいいわけだが、いずれにせよ、自分で味を付けなければほとんど味がしないのがこのバーガーの特徴だ。
 肉自体は、たまたま焼きすぎだったためか、ジューシー感があまりなく、決してうまいといえるものではなかった。1回だけの体験ですべてを判断するのは良くないが、肉汁がなくなるほど焼きすぎるのは、調理現場のマニュアルなどに問題があるか、マネージャー (外科医?) の管理や指導がずさんと言われても仕方が無いだろう。

 シェーク (写真右。ためしてみたのはチョコレート・フレーバー) は、もはや飲み物というよりもソフトクリームといったほうがいいほどヘビーで、見ただけでも高カロリーであることがわかる超濃厚なこってりドリンク。甘さも十分で、一般の日本人の味覚では 4分の1も飲めないだろう。はっきり言ってオーダーしないほうがよい。
 ラードで揚げたポテトは大いに期待していたが、残念ながら、これまたやや揚げ過ぎの感じで、いまひとつの味だった。
 コンセプトへのこだわりなどに力をいれるのは大いにけっこうなことだが、飲食店である限り、もう少し調理にも気を配って欲しいというのが正直な印象だ。

 料金は、ハンバーガーの種類において 1段から4段重ねまであり、それぞれ $7.39、$9.24、$11.10、$12.94。ベーコンの追加料金はそれぞれのハンバーガーに対して $0.92、$1.84、$2.77、$3.69。ラードで揚げたポテトは $1.84 だが、ハンバーガーをオーダーするとポテトが付いてくるので、通常はオーダーする必要はない。シェークは $4.62、ロング缶ビールはどの銘柄も $4.62、ストロベリーダイキリなどのカクテル類は $9.24。
 営業時間は午前11時から深夜2時まで。場所は冒頭でもふれた通り、電飾アーケード街の東端付近。現場の様子を知っている者には、「ネオノポリスの入口のところ」 といったほうがわかりやすいかもしれない。ちなみにネオノポリスとは、ラスベガス市主導で建設された複合商業施設。
 なお、Heart Attack Grill 自体はテキサス州に拠点を置く会社だが、病院をコンセプトとする類似のハンバーガー店との法的争議などで経営がゴタゴタしており、現在はこのラスベガス店しかない。味よりもテーマをウリにしているこの種の店は、リピーター客を掴みづらいと言われており、このラスベガス店もすぐに消えてしまう可能性がある。興味がある者は早めに行っておいたほうがいいかもしれない。



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