週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2011年 09月 14日号
スティーブワイリックのマジックショー、LV ヒルトンで復活
 スティーブ・ワイリック氏のマジックショー "Steve Wyrick Ultra Magician" が、8月16日からラスベガス・ヒルトンで始まった。
 ワイリックは、デイビッド・カッパーフィールドやクリス・エンジェルなどと比べると、日本での知名度や国際的な評価は今ひとつのようだが、ラスベガスでの存在感は絶大で、知らない人はいないほど有名なマジシャンだ。

 ラスベガスにおけるショービジネスの世界の競争は非常に激しく、来ては去っていくパフォーマーが多いなか、ダウンタウン地区のレディーラック・ホテル、サハラ・ホテル、プラネットハリウッド・ホテルと、会場の格を徐々に上げ、長年にわたり当地に根をおろしならが公演を続けてきた実績は立派で、もはやラスベガスにおいてはベテランの域に達した定番マジシャンといってよいだろう。
 もちろんいいことばかりではない。リーマン・ショック以降の世界的な経済不況のあおりを受けたのか、自身も経営参加していたシアターが倒産してしまうなど、ここ数年はトラブルに見舞われていた。
 また、不況とは別に、決して順風満帆の公演を続けてきたわけではなく、どこの会場においても慢性的に空席が目立っていたことも事実で、往年のシークフリード&ロイや、ランス・バートンのように、常にスポットライトを浴びてきたわけではない。

 そんな苦労人ワイリックが新たに選んだ新天地がラスベガス・ヒルトン (写真右) というわけだが、この会場は、数年前まで歌手のバリー・マニロウが使ってきたシアターで、さらに古くは、あのエルビス・プレスリーの常駐コンサートが行われていた伝説のシアターだ。
 これまでにワイリックが使用してきたどの会場よりも客席数が多く (約1700席)、ステージのサイズも飛び抜けて大きい。空席を埋めるための営業的な苦労はありそうだが、ステージの広さは大型イリュージョンを可能にするなど、出し物の幅が広がるメリットがある。

 さっそく劇場に足を運んでみた。案の定、空席は目立ったが、このショーにおいては始めから2階席を閉鎖しているばかりか、1階席も事実上、一部しか使用していないため、集客数と会場のキャパシティーのアンバランスはあまり気にしなくていいのではないか。むしろステージの広さというメリットに期待がかかる。
 さて実際に観ての感想だが、かなり満足できるレベル、というのが正直な印象だ。これまでは、劇場を変えても内容はほとんど変わってこなかったが、今回の移籍では、新たなマジックがいくつも加わっており、全体としてかなり刷新されている。
 もちろんこれまでのよい部分や人気の出し物、たとえば彼のトレードマークともいえる回転ノコギリからの脱出 (写真右上) や、オートバイからの瞬間移動などの大型イリュージョンはきちんと温存されており、またそれらはステージが広くなったぶんだけ今まで以上に伸び伸びと演じられている。

 新たに加わったマジックをここで全部紹介してしまうと楽しみが減るので一部だけにしておくが、1980年代に大流行した往年のテレビゲーム機 「パックマン」 の実際のマシンを使ってのトリックは発想が奇抜でなかなかおもしろい。
 それ以上に会場をアッと言わせたのが、人間切断だ。美女の胴体を半分に切り、上半身と下半身を切り離すまではよくあるマジックだが、ワイリックがこのショーで演じる人間切断はさらに一歩上をいっている。従来の人間切断は、頭部と手足の先以外は箱などに覆われているのが普通だが、ここでは箱をすべて取り外してしまうから驚きだ。美女はボディーラインが見えるごく普通の姿で (しかし下半身はない)、切り離されたあとも笑顔を振りまきしゃべったりする。もちろん切り離された側にある足も自然に動く。これを観るだけでも、このショーに足を運ぶ価値は十分にあるだろう。

 その他にも、向こう側が透けて見える水槽の中に突如美女が現れたり、美女が瞬時に消えてキャンバスの中の絵画になってしまったりと、他のマジックショーではあまり見られないマジックをいくつも披露してくれる。
 トラやライオンなどの大型動物は使わないが、アヒルが登場する場面が1回だけあり場内をなごませる。また客席から子供をステージにあげての 「釣りのシーン」 は、とかく荒削りで男性的な演出が多かったこれまでのワイリックとは違ったタッチのほのぼのとした演出だ。
 最後は自慢の飛行機を使ったビッグイリュージョン。ステージが広くなったためか、今まで以上にダイナミックな演出になったように見えるのは気のせいかもしれないが、それでも会場全員が総立ちのスタンディングオベーションになったことを考えると、だれが観てもこれまで以上のパフォーマンスに仕上がっていたことは間違いないだろう。ちなみに、今まで数えきれないほどワイリックのショーを観てきたが、これだけのスタンディングオベーションになることはなかった。

 チケット、開演時刻、および公演日などの情報は以下のラスベガス・ヒルトンホテルの公式サイトまで。
https://hilton-web.vegas.com/lvhilton/stevewyrick.html



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