週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2011年 05月 18日号
砂漠環境博物館でウォルフガング・パックのブランチ
 最近はやりの言葉で表現するならば 「異業種コラボレーション」 といったところだろうか。
 今週は、「砂漠環境博物館」 内にあるウォルフガング・パック氏のレストラン 「SPRINGS cafe」 で行われているユニークなサンデー・ブランチを紹介してみたい。

 まずは砂漠環境博物館に関してだが、正式名称は Springs Preserve。この名称からは何のことだかわかりにくいが、実態としては、ラスベガス周辺に広がる広大な 「モハベ砂漠」 (Mojave Desert) に関する展示で、その砂漠に生息する動植物、地学、気象、経済、環境、エコロジーなど幅広い分野を包括的に扱う学術的な展示施設だ。
 砂漠環境博物館という呼び方は、当サイトや一部のメディアが独自に使っているだけで、必ずしも一般的なものではないが、実質的にはそのように呼んでなんら差し支え無いだろう。なお館内の様子や展示物に関する具体的な内容は、この週刊ラスベガスニュースのバックナンバー555号の中で詳しく紹介しているのでそちらを参考にして頂きたい。

 さて次にウォルフガング・パック氏についてだが、これはもうひとことで言ってしまえば、「アメリカで一番有名なシェフ」 ということになる。
 アカデミー賞授賞式の際の公式シェフを務め、またハリウッドスターたちが彼の店 「Spago」 を訪れることから一躍有名になり、今では全米各地に自身の名を冠したレストランを持つほどのカリスマシェフであると同時に実業家でもある。もちろんラスベガスの高級ホテル内にもいくつか店を持っている。(右上の写真は SPRINGS cafe のバルコニー席)

 そんな彼と博物館。なんとも奇妙な組み合わせで、その目的や意図がなかなか見えてこないが、この両者にまったく接点がないわけではない。それは動物保護やエコロジーだ。
 この博物館は、サソリ、トカゲ、ガラガラヘビなど砂漠に生息する動物の保護や、貴重な水資源の有効利用、そして駐車場の屋根に大規模な太陽光発電装置を設置するなど環境問題にかなり力を入れており、実際の展示においてもそれなりの主張をしている。(右上の写真は SPRINGS cafe の店内)
 パック氏も、「フォアグラはその生産方法が動物愛護の精神に反しているから使わない」、「狭すぎる可哀相な環境で育てられたニワトリの鶏肉や卵は使わない」 など、日頃から動物愛護に対してさまざまな主張をしていることで知られ、実際にこのレストランのメニューにも、そういった主張がいくつか書かれている。
 そんなパック氏のパフォーマンスに対しては、「偽善的だ」 といった批判的な意見も少なくないが、とにかく今回はそういった思想的な議論は無視して、彼が監修する料理を食べに行ってみた。

 まず特筆すべきことはオーダー方法で、これが非常にユニークだ。
 入店の前に会計を済ませるという意味では、よくある食べ放題のブランチと同じだが、この店は食べ放題ではない。それでも固定料金という意味では食べ放題の店と似ている。
 実際の利用方法は、店の入口にあらかじめ用意されている縦30cm、横10cm ほどのメニューカード (右の写真内の中央) を手に取り、そこに記載されている料理の中から好きなものを選び (ペンで印を付ける)、それをレジに提出し、定額料金 21ドルを支払う。
 もう少し詳しく書くと、4種類ある 前菜 の中から2つ、10種類ある メインディッシュ の中から2つ、4種類ある サイドディッシュ の中から2つ選ぶことになる。(それぞれハイパーテキストをクリックするとメニューの詳細表示)

 レジで会計を済ませると、あとは着席して待っていればいい。自分で取りに行かなければならない普通の食べ放題ブランチとは異なり、ゆっくり会話を楽しめるところがうれしい。
 また、オーダーを受けてから作り始めるので、出来立ての温かい料理が運ばれてくるところも評価すべき点だろう。
 なお、プチケーキ (写真右) などのデザート類と飲み物に関しては、自分で取りに行く方式になっているので、それらは食べ放題、飲み放題ということになる。アルコール類は有料で、参考までにバドワイザーなど米国産ビールの小瓶が5ドル、輸入ビールが6ドル、カクテル類が7ドル。

 2種類の料理が1枚の皿に盛り付けられて出てくることがあるので、それを1種類だと勘違いして、「オーダーした料理が来ていない!」 などとウェイターを呼びつける前に、よく確認するようにしたい。
 気になる味に関してだが、前菜とサイドディッシュのすべてと、メインディッシュの8種類を食べてみた限りでは、丁寧にきちんと作られているという印象を受け、アメリカでの食事としては総じてレベルが高いといってよいのではないか。特にメインディッシュのステーキとサーモンはよかった。プチケーキを中心としたデザートは、サイズこそ小さくて食べやすいが、味的にはあまり期待しないほうがよいだろう。

 料理とは関係ないが、生バンドによるジャズ演奏がリッチな雰囲気をうまく醸し出しており、また少々高い位置にあるためか、遠方にホテル街が見えるなど景色も良いところにも注目したい。
 ただ、エコロジーを追求していることからインテリアはかなり質素で、特に天井や照明が高級感にはほど遠い安っぽい造りになっているのは残念だ。
 結論としては、ストリップ地区のホテル街のサンデーブランチをほとんど経験していないベガス初心者にとってはわざわざここまで足を延ばす必要はないといった感じで、逆に、すでに多くのブランチを経験したリピーターは行ってみる価値があるだろう。ちなみにストリップ地区のホテル街からこの店まではレンタカーで15〜20分ほどかかる。
 サンデーブランチの営業時間は日曜日の午前11時から午後3時まで。とりあえず 6月末までは継続することになっているが、そのあとはどうなるか未定。サンデーブランチをやっていない時間帯は、普通のレストランとしてハンバーガーやピザなどを販売している。
 場所や行き方に関してはバックナンバー555号に掲載。なお、博物館への入館は入館料 $18.95 (子供 $10.95) が必要だが、この店での食事には入館料は不要。


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