週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2011年 01月 19日号
「金の聖地」 のネバダにあるゴールデンナゲットに 「金の自販機」
 今月5日、ダウンタウン地区随一の高級ホテル 「ゴールデンナゲット」 (写真右) に、金の自動販売機が登場した。
 自販機といえばタバコや飲み物など少額の買い物というイメージがあるが、そこはさすがに金、単価が1500ドルを超える商品もあるというから何とも豪快なマシンだ。
 大金が飛び交うラスベガスといえども未だかつて聞いたことがない成金趣味的かつアトラクション的な自販機の出現ということになるが、奇をてらった突拍子も無い発想から生まれた企画でもなさそうだ。

 そもそもこのホテルのテーマは名前が示す通りゴールド。実際に何年も前からこのホテルのカジノフロアの奥には巨大な金塊 (写真右) が展示されており、名物アトラクションとして親しまれてきた。
 さらに金にまつわる話はこのホテルだけの専売特許ではない。この街そのものが金の聖地なのである。意外と知られていない事実だが、ラスベガスが属するネバダ州は世界屈指の金の産出地だ。
 かつては南アフリカ共和国が圧倒的な世界一の産出量を誇っていたが、今は長期凋落傾向にあり、また2位が定位置だったオーストラリアも近年シェアを落としている。年によって順位はめまぐるしく入れ替わっているようだが、この2つの国とアメリカ、そして台頭著しい中国を加えた4カ国が、ほぼ横一線で世界一の座を争っているというのがここ数年の金業界の実情だ。

 そんなアメリカで金といえばだれもが思いつくのが、かつてゴールドラッシュにわいたカリフォルニア州。州のニックネームが 「ゴールデン・ステート」 となっているほど金の産地として有名だが、金を求めて西へ西へと進んだ西部開拓時代は、サンフランシスコを拠点とするプロフットボールチームの名称 「フォーティナイナーズ」(49's) でも知られる通り、1849年ごろの遠い昔の話だ。
 今はネバダ州がダントツの産地で、なんと驚くことなかれ、アメリカ全体の80%をここネバダ州が産出している。つまりネバダという一つの州が、広大なオーストラリアや中国、そして決して小さくない南アフリカを相手に互角に戦っているわけで、面積的に考えたら世界最強の金の産地といっても過言ではないだろう。
 その現代版ゴールドラッシュともいえる金鉱山の具体的な位置は、ラスベガスの北方約 300〜400km の地点に広がっており、そこでアメリカを代表する世界屈指の鉱山会社 Newmont社を始めとする各社が、おもに露天掘りで日夜金を掘り続けている。
 余談になるが、ネバダ州のニックネームは 「シルバー・ステート」。かつて銀で名を馳せ、今でも銀の産出量はアラスカ州に次ぐ全米第2位。つまり金で1位、銀で2位というわけだが、銅は 2007年のデータでは第4位だ。

 前置きが長くなってしまったが、そのようなわけで、「ネバダ州にあるゴールデンナゲットという名称のホテルに金の自販機を置く」 という発想自体は根拠がまったくないわけではなく、「ご当地アトラクション」 としてはまさにピッタリの企画といってよいだろう。
 ちなみにこのマシン、名前は Gold to Go。開発および管理しているのはドイツの Ex Oriente Lux AG という会社で、その創立は2007年。この自販機ビジネスを始めたのは2009年後半というから何ともすべてが新しい。
 あまりにも新しいので成功するかどうかは予測しづらいが、現時点での設置状況はドイツ国内の11ヶ所に11台、イタリア、スペイン、ドバイにそれぞれ1台ずつ、そして昨年11月にフロリダ州の超高級リゾート地ボカラトンのモール内にアメリカ第1号機が設置され、今回のゴールデンナゲットがアメリカ2号機。つまりまだ全世界で16台しかない。今後の展開が見ものだ。
 マシン自体の重量は約450kg。それなりの重さはあるようだが、丸ごと持って行かれないまでも破壊されたりしたら困るので、設置場所は空港、カジノ、ホテルのロビー、ショッピングモールなど、人通りが多く監視が行き届きやすい場所に限られている。そして売上に応じて地権者と利益を分け合うというのがこの自販機のビジネスモデルだ。

 一般の自販機においても珍しくなくなりつつあるのがオンライン管理。つまりこのマシンはネットで本部とつながっている。
 リアルタイムで周囲の状況や在庫などが監視されているのは当然として、10分ごとに金相場に連動して販売価格が変わるようになっていたり (写真右がその画面)、必要に応じてマネーロンダリング防止のためにパスポートや運転免許証などの提示を求めるなど、商品補給と現金回収作業を除くすべての管理運営を遠隔操作で行っているというから、まさにネット時代ならではのハイテク自販機といってよいだろう。
 なお現在はまだ買う側もゴールデンナゲット側も慣れていないということもあり、ほとんどの時間帯において、ドイツ側から指導を受けた現場スタッフがマシンの前に立ち、操作方法などを説明してくれる。メディア対応という目的もあるようだが、操作方法がわからない場合はこのスタッフに聞けばよい。ちなみに操作はわかりやすいタッチパネル方式で、英語さえ読めれば特にむずかしいことは何も無いようにできている。

 さて買う側にとって最も気になる販売価格についてだが、取材時における10グラムのバーの価格は509ドル。
 その時点の金地金の相場が 1グラム 3800円前後だったので、1ドル84円で計算すると、地金相場に対して13%ほど高いことになる。
 つまりそれがこの会社の荒利益および場所代ということになるわけだが、これを一概に高いと決め付けるのは早計だろう。なぜなら、世界中のどのような金取引においても、1キロもしくは 500グラムなど、決められた基準に満たない少量の取引に対しては手数料がかかるのが一般的だからだ。ちなみに日本では、10グラムバーに対する手数料は約2000円もしくはそれ以上が普通だ。
 その手数料を考慮に入れてもやや高めの感は否めないが、それでも何の手続きも必要とせずに自販機で買えるという時間や手間に対する利便性を考えれば、妥当な価格と考えてよいのではないか。
 そもそもこれは投資や利殖と考えるべきではない。それが目的であれば自販機ではなく金融機関などで手数料が不要もしくは無視できる範囲のキロ単位や、現物のやりとりが伴わない定額積立方式などで買うべきだ。

 ということで、この自販機で買える商品はあくまでも記念やギフトと考えたい。それは売る方も始めからわかっていることで、買う側もそれをあらかじめきちんと理解しておけば、買って後悔するようなことはないだろう。
 相場の13%増しならば、販売店などの中間マージンとして買った途端に価値が激減してしまうダイヤモンドなどに比べると、はるかに無駄は少ない。無駄どころか、運良く50%ぐらい高騰すれば売却手数料を差し引いても含み益が出てくる可能性すらある。
 ひたすら貿易赤字を続けるアメリカ。ひたすら国債を乱発し財政赤字を続ける日本。ギリシャの破綻騒動を思い返すまでもなく、ドルの暴落も円の暴落も中長期的には十分にあり得る話で、結果としてハイパーインフレとなり金相場が一気に何倍にも暴騰しても何ら不思議ではない。
 「カジノで勝ったドルは結局またカジノで使ってしまい手元に残らない」 という意思の弱い者は、どうせ使ってしまうぐらいなら記念として思い出として金を買ってみるのも悪くないだろう。もしいつの日か暴騰でもすれば、まさに将来への土産話となるではないか。

 各国のマシンで販売されている商品内容には多少のちがいがあるようだが、現在のゴールデンナゲットのマシンで販売されている商品と価格は以下のとおり。ちなみにどれもきちんとしたケースに入っている。
 なお、地金相場よりも13%高いという話は 10グラムのバーの場合であって、1グラムなどではその限りではなく、さらに不利な価格設定になっていることは言うまでもない。

◎ Gold Bar 1.0 gram $60
◎ Gold Bar 2.5 gram $136
◎ Gold Bar 5.0 gram $265
◎ Gold Bar 10.00 gram $509
◎ Gold Bar 10.00 gram $556 (Golden Nugget 記念刻印入り)
◎ Gold Bar 1 troy ounce $1544
◎ 1 troy ounce American Eagle Gold Coin $1574
(1 troy ounce = 31.1g)

 なお親切にも、「10日以内であれば理由を問わず返品可能」 という良心的なサービスをオファーしている。とは言っても、Fedex など追跡可能な輸送手段によるドイツ本社までの送料の負担などを考えると、10グラムや20グラムの少量の購入に対する返品はあまり現実的ではない。
 だからといってこの自販機で投資目的の大量購入をする者などいるはずもなく、実際に返品する者はほとんどいないのではないか。したがって、親切なサービスというよりは、営業的なパフォーマンスのようにも思えるが、それは考えすぎか。
 マシンの設置場所は、チェックインカウンターなどがあるメインロビーとカジノを結ぶ細い通路の途中、名物の金塊の展示場所の向かい側。通路自体、非常に短いのですぐにわかる。


バックナンバーリストへもどる