週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2011年 01月 12日号
NYで創業127年のレストラン P.J.Clarke's がベガスに進出
 先週の土曜日、シーザーズパレスに隣接するショッピングモール、フォーラムショップス内に、創業127年というニューヨークの伝説的な老舗レストラン P.J.Clarke's がオープンした。(写真右、クリックで拡大表示)
 この店がニューヨーク・マンハッタンに誕生したのは1884年。ラスベガスはまだまっ平らな砂漠で、ほとんどだれも住んでいなかった時代、そして日本では伊藤博文が初代総理大臣になる前年だ。なんともすごい歴史で、店の入口には店名とともにその数字 "1884" が誇らしげに大きく示されている。

 一風変わった店名は、20世紀初頭にこの店を買い取ったアイルランド系の移民 Patrick J. Clarke 氏にちなんでおり、店の元々のコンセプトはアイリッシュ・パブ。
 それでも単なる酒場ではなく、今ではさまざまな料理を出すアメリカンスタイルのレストランとして進化しており、特にカキを中心としたシーフードとハンバーガーは何十年も前からの当店自慢の人気メニューだ。(右上の写真は今回オープンしたラスベガス店のシーフードセクション。スタッフの背後にはカキ、カニ、エビなどが並んでいる)
 また、地理的に世界の中心地であったことや、歴史が長いということもあり、常連だった著名人も多く、たとえばフランク・シナトラがいつも使っていたテーブル、ナット・キング・コールが好きだったハンバーガー、ジョン・F・ケネディー大統領夫人が子どもを連れて毎週土曜日に通っていたなど、今でも語り継がれている逸話は少なくない。

 そんな伝説的な店がラスベガスに進出してきたわけだが、西海岸地区への出店は今回が初めて。そもそもこの店は多店舗展開しているわけではなく、全部合わせても数店しかないので、ベガスが初めてでもなんら不思議ではない。
 なにゆえこの地が選ばれたのかは、今回現場でインタビューした限りでは回答を得られなかったが、いずれにせよ、これほど由緒ある老舗がラスベガスを選んでくれたことは素直にうれしい限りで、非常にありがたいことだ。さっそくオープンの翌日、店に足を運んでみた。

 インテリアなど店の雰囲気 (写真右上) は、可能な限り本店をそのまま踏襲しているとのことで、黒に近いダークブラウンの木材や赤レンガを多用した直線的なデザインは英国やアイルランドのパブを彷彿させる。ただ、立ち席の代わりに派手な色のテーブル席が多いあたりはアメリカンスタイルのレストランといった感じだ。
 なにはともあれ、有名だと聞くシーフードの代表的なメニュー Raw Sampler Platter ($36、写真右上)をオーダーしてみた。エビ、カキ、二枚貝の盛り合わせで、味は悪くないが、値段の割には量が少ないのが気になった。
 ちなみにカキの種類は、Naked Cowboy と Kusshi が2個ずつ。どちらも一般のカキに比べて小ぶりなため食べ応えはないが、品種的には流通量が少ないので、カキ好きにとっては貴重な体験チャンスといってよいだろう。特に前者は東海岸地方の特産品種なので、西海岸ではなかなかお目にかかれない貴重品だ。

 この店のもうひとつの自慢メニューであるハンバーガーも食べてみた。
 「厳選アンガスビーフ使用」 とのふれこみで高級感を強調しているようだが、ただ単にハンバーガー ($9.30) をオーダーするとバンと肉以外はほとんど何も入っていないシンプルなものが出てくるので、それがいやな場合は、チーズ、マッシュルーム、オニオンなどを別料金で追加オーダーしなければならない。それもめんどくさいという人のために、チーズ、ベーコン、オニオンが初めからセットになったハンバーガーが用意されている。その名は "The Cadillac" ($12.60、写真右上)。
 あまりのうまさに、ナット・キング・コールが自動車の最高級ブランドに例えて命名したとされているが、実際に食べてみての感想は、キャデラックは言い過ぎで、トヨタやホンダといったところか。(といっても今の日本車の品質評価はキャデラックよりも総じて高い)
 噛みにくいほど硬く分厚いべーコンが、はみ出るほど無造作にたくさん入っており、見た目もあまり美しくない。開業直後ということで調理現場のスタッフが不慣れだったということか。今後の改善を期待したい。
 味付けは、マヨネーズ系でもソース系でもケチャップ系でもなく、軽い塩味が付いているだけなので、味がうすい場合は、好みに応じて各自ケチャップなどを使用して調整するしかない。なおオーダーする際、焼き方を聞かれる。今回の試食はミディアムレアにしてみた。焼き方はリクエスト通りで悪くなかった。

 ビールのつまみ用にオーダーしてみたのが、イカフライ "Crisp Monterey Calamari" ($12.10、写真右)。
 これは他店の同種の料理に比べるとかなりレベルが高いと思われる。小さなイカをまるでクズのように小さく切って出す店が少なくないなか、この店のものはイカの種類的にもサイズ的に申し分なく、多くの人にとって満足できるレベルのはずだ。

 英国風のパブといえば、だれもが思いつくのが、ビールのつまみにも主食にもなる伝統料理 Fish & Chips ($20.20、写真右)。
 食べやすいサイズに切っている店もあるのでそれを期待したが、残念ながら巨大な魚がどかーんと出てきた。あまりの大きさと食べづらさと見かけの悪さから、食欲が一瞬なえるが、味は決して悪くない。

 ステーキも外せないのがこの店。フィレミニオンのハーフポンド (約226g) "Filet Mignon Petite Cut" ($28.60、写真右) をレアでオーダーしてみた。
 肉のレベルも味も焼き方も申し分ないといえるが、写真のとおり肉以外に付属料理は一切無い。したがってポテトなど、なにか付け合せが欲しい場合はオプションでオーダーする必要がある。
 ちなみに、そうやってオーダーした付け合せは、ステーキが乗ってくる皿とは別の独立した小鉢に入って運ばれてくるので、ステーキの皿が殺風景すぎる問題の解決にはならない。参考までに Sauteed Spinach with Garlic ($6.20) を付け合せとしてオーダーしてみたが、ホウレンソウ自体はよかったものの、ガーリックが完全に焦げてしまっていて、まともな味になっていなかった。これも開店直後の一時的な問題と思いたい。

 店の名前を冠したスープ "P.J.Clarke's Chili Soup" ($8.75、写真右) は、地味な見かけに反してかなり絶妙な味を出していた。
 この店自慢のデザート "Freshly Baked Apple Cobbler"($6.90、写真右下) は、名前のとおりアップルがたっぷり入った焼き立ての状態で出てくる熱いデザート。可もなく不可もなくといったところか。

 今回試食したのはとりあえずそんなところだが、まだまだ興味深いメニューがたくさんあるので、この店の評価を今ここで簡単に下せる段階にはない。ただ、ここを酒場と考えるかレストランと考えるかによって評価の仕方も変わってくるのではないか。日本人の味覚的には酒場と考えて利用したほうが評価が高くなるように思える。
 なぜなら、歴史を感じさせるレトロな雰囲気のインテリア、所狭しと飾られた往年のスターたちの写真やポスター、そして古き良き時代の音楽など、酒場の雰囲気としては非常に良く、また、つまみとなる料理も豊富だからだ。一方、ディナーを楽しむ場所としてはいささかメニューの数も内容も心もとなく、意外性のある料理もあまり見当たらない。
 ちなみにビールは20種類ほどあり、値段は 5ドルからとリーズナブルだ。ワインもボトルで38ドルからと、決して高くはない。酒場として利用する限り、後悔するようなことはないだろう。
 場所はフォーラムショップスの北東端で、3階の吹き抜け構造になっている部分の1階。シーザーズパレスのカジノ内からアクセスするよりも、ストリップ大通りの歩道に面した入口から入ったほうが断然近い。営業時間は午前11時から深夜12時まで。



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