週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2001年06月20日号
本場フランスのストリップがストリップにお目見え!
 "ストリップ" と言っても今週は "ラスベガス大通り" のことではない。女性が裸で踊るストリップだ。

 アダルト産業、とりわけストリップのメッカはなんといってもフランスのパリだろう。怪しげな雰囲気の中にも芸術的センスが漂うパリのネオン街は開放的なフランス文化の象徴でもあり、ストリップはそんなパリのナイトライフを代表するエンターテーメントだ。
 その頂点に立つのが半世紀の歴史を誇るクレージーホースで、世界で最も有名なストリップ劇場といっても過言ではない。

 そんな由緒あるクレージーホースをそっくりそのまま再現した劇場がこのたびMGMグランドホテル内に完成し、6月14日からその専用会場でトップレスアダルトショー "LA FEMME" が鳴り物入りで始まった。
(アメリカ人は "ラファウム" と発音している。意味は "女性" )

 ステージのサイズなどはもちろんのこと、入口、天井、照明、カーペット、テーブル、テーブルランプまですべて本場パリに合わせたという。さらに出演するダンサー 14人も全員わざわざフランスから連れてきたというから驚きだ。
 「どこが違うのか?」 との地元メディアの問いに対して主催者側は、「アメリカのダンサーは豊胸手術をしているため伝統あるクレージーホースの "規格" に合わない」 と、なにやら男性諸氏には聞き捨てならぬ興味深いコメントを残している。

 さっそく現場へ行ってみるとたしかに何もかもが "アメリカ離れ" している、というかフランス調だ。
 奥ゆかしいデザインの入口の前には、真っ赤なフランス風のユニフォームを着た警備員が立っている (写真左)。そこを通過するとすぐに会場だ。
 赤のインテリアで統一された会場は思ったより狭い。これがヨーロッパのスタンダードといってしまえばそれまでだが、ラスベガスの巨大シアターを見慣れてしまった者にとっては少々新鮮に映る光景だ。ちなみに椅子を並べただけのこの会場のキャパシティーは 300 〜400人とのこと (固定式の座席ではないため座席数は流動的)。

 ステージの狭さにはもっと驚く。幅 8メートルはともかく、高さがたったの 2メートルしかない。つまりダンサーが手を伸ばせば届いてしまうほど天井が低い (もちろん客席部分の天井はそれよりもはるかに高い)。ようするに正面の壁に幅 8メートル、高さ 2メートル(奥行きは不明)の箱のような穴が開いていて、ダンサーはその箱の中で踊ると考えればわかりやすいだろう。さしずめ押入れの中で踊っているといった感じだ。(右の写真の黒い部分に数字の1が表示されている周辺がステージ。この写真ではステージの前にスクリーンが降ろされている状態なのでその奥は見えないが、実際のステージ部分の天井はさらに低い)

 その "箱" の中も周囲の壁も色はすべて真っ黒で、照明を落とせばステージ周辺は完全な暗黒の世界になる。つまりライトに照らし出されたダンサーだけがくっきりと浮かび上がるというわけだ。こうすることによって、箱の中をのぞき込むようにして見なければならない客側の怪しげな心理状態と、狭い箱の中だからこそダンサーがひときわ目だって大きく見える、という相乗効果をうまく引き出すことが可能になり、クレージーホースならではの絶妙な雰囲気を作り出している。

 ショーの内容だが、ラスベガスで定期開催されている同類のアダルト向けトップレスショー (Luxor の Midnight Fantasy 、Harrah's の Skintight、Riviera の Crazy Girls など) とは似ても似つかぬ別物と考えた方がよいだろう。
 では何がどう違うのか。他のショーではトップレスでありながらもダンサーは頭や腰などにカラフルな衣装を身に付け広いステージを一杯に使いリズミカルに踊るが、この LA FEMME ではカラフルな衣装もなければ、リズミカルな動きもほとんどない。そもそもリズミカルに踊ったり跳ねたりするほどステージが広くない。

 このショーにおけるダンサーの衣装はなんと照明だ。照明こそがクレージーホースの真骨頂であり、世界的に知られるゆえんでもある。
 一般の劇場のように遠く離れた客席の背後から照らしたり、ステージのはるか上から照らしたりすることはせず、カラフルな光をダンサーのすぐ上の至近距離から芸術的な細かい動きでコントロールし、非常にシャープな模様をダンサーの肌に描き出す。全裸に近いダンサーがメッシュのストッキングを履いているかのように見せたり、虹色の衣装を身にまとっているかのように見せたりする演出はまさに一級品といってよいだろう。
 照明と合わせてスクリーンの使い方も絶妙で、ステージと客席との間にさまざまな模様が描かれた半透明のスクリーンを上げたり降ろしたりしながらダンサーの肌を幻想的に描写するテクニックも興味深い。
 ダンサーの動き自体もステージのサイズに合った非常にゆっくりしたセクシーなもので、ラスベガスの他のショーでは観られない非常に独特な演出といってよいだろう。

 途中で特別出演する男性二人によるコミカルなマジックも非常にすばらしく、ボケ役の男がロボットのように機械的に体を動かし、突っ込み役の男がそのロボットを相手にコミカルなマジックを仕掛ける。ロボットの動きが絶妙で、大掛かりなイリュージョンには無い面白さが場内を爆笑の渦に巻き込む。

 正味70分という時間的短さが少々気になったが、決していかがわしさなどはなく、全体としては良くまとまっているショーといってよいだろう。もちろん誰がなんと言おうがこれはアダルト向けのトップレスショーに違いはなく、その種のカテゴリー自体を否定する者にはおすすめできないが、すでにラスベガスの主要ショーを観てしまった者にはぜひ観ていただきたいショーだ。本場のストリップをラスベガスストリップで観るのも悪くはないだろう。なお、カップル客も少なくないので、女性の入場も特に気にすることは無い。
 蛇足ながら、これはあくまでも 「観るだけのショー」 であり、日本のストリップショーのような 「観ること以外のもの」 を期待してはいけない。

 それにしてもなぜこの企画をパリスホテルが先に気づかなかったのか残念でならない。気づいてはいたが行動に移さなかったのか。それともクレージーホース側が始めからMGMに話を持っていったのか。その辺の事情はまだ未確認だが、どうせならばパリスホテルでやった方がより一層雰囲気が盛り上がったに違いない。

 場所はMGMグランドのカジノフロアのほぼ中央付近。火曜日を除く毎日 8:00pm と 10:30pm の 2回、料金は $49。21才未満入場不可。全席指定 (といっても椅子は多少動かせる)、ドリンク類は会場内で別売り。


バックナンバーリストへもどる