週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2001年05月30日号
話題の "KRISPY KREME" がエクスカリバーに
 現在全米で最もホットなファーストフード店といわれているクリスピークリームドーナツがエクスカリバーホテル内にお目見えした。
 実際に同ホテル内にオープンしたのは 1年も前の話だが、この KRISPY KREME DOUGHNUTS 社 (なぜかスペルは "C" ではなく "K" で始まる) は今月ニューヨーク証券取引所に上場し、現在全米で話題となっているためあえて今週のニュースとして取り上げてみることにした。

 同社は創業 64年という驚異的な歴史を誇るものの、これまでは東海岸を本拠とする弱小ドーナツチェーンだった。それが 90年代後半からじわりじわりと西海岸へも進出し、2000年春にはついに念願のナスダック市場への上場を果たすことになる。
 上場によって勢いに乗った同社はその後も急成長を続け、店舗数がほぼ 200店に達したのを機会に今月 17日、株式市場をナスダックからニューヨーク証券取引所へ移した。
 多くの企業が業績を落とし株価も低迷しているという中、同社は前年度比ほぼ倍増の利益を計上し、年初からすでに倍に急騰している株価もニューヨーク証券取引所への移籍後、本日までのわずか 2週間たらずでさらに 30%も上昇するという異常人気ぶりを見せている。
 この飛ぶ鳥を落とす勢いの急成長ぶりに対しては、不況による失速の危険性を指摘する向きもあるが、「不況時だからこそ安いドーナツに人々は集まる。近日中に 1000店舗を目指す。」 と Livengood 社長の鼻息は荒い。また市場関係者も 「かつてのスターバックスコーヒーに勝るとも劣らない成長株」 と久しぶりの人気銘柄の出現に沸いている。

 活況を呈しているのはウォール街だけではない。販売現場でも連日長蛇の列ができている。左の写真は 29日朝のエクスカリバー店での風景だが、たかがドーナツに 20分も並ぶという人気ぶりだ。現在同社は全米の約 200ヶ所で毎朝このような "風物詩" を演出しているという。

 さて人気の秘訣や値段などについて語る前に、アメリカの "朝の食文化" について触れておこう。
 アメリカの "国民食" といえば、だれもがマクドナルドに代表されるハンバーガーを想像することだろう。たしかにその浸透度や存在感は半端ではなく、それは日本人にとってのラーメンの比ではないかもしれない。
 しかしそんなハンバーガーに勝るとも劣らないのがドーナツで、この人気は日本人の想像を遥かに超えている。日本ではハンバーガーほど定着していないためか、アメリカ人のドーナツ好きを知る者は意外と少ないが、ドーナツは金額ベースでこそハンバーガーに劣っているものの、個数での消費量はハンバーガーをはるかに上回っているという。

 アメリカ人にとってのハンバーガーとドーナツの間には明確な違いがある。それは決して日本におけるラーメンとソバのような関係ではない。"ドーナツは朝食べるもの"、"ハンバーガーは朝には食べない" という時間帯による明確な "棲み分け" の不文律が存在している。その証拠に、マクドナルドの朝食メニューには原則としてハンバーガーはなく、エッグマフィンもしくはドーナツに似た甘味の強いアイテムが売られている。
 このハンバーガーとドーナツの "棲み分け" は、食べる側だけでなく売る側にもあるという。"ハンバーガーは大資本をバックにした大企業が販売するもの。ドーナツは町の小さな個人商店が販売するもの" という暗黙のルールだ。
 もちろん弱小資本のハンバーガー店もあれば、日本でも知られるダンキンドーナツのような大手ドーナツ店もある。しかしそれはあくまでも例外的な存在で、アメリカの町を歩くとじつに多くの個人商店のドーナツ屋が存在していることに気付く。仮にそれらがフランチャイズ店であったにせよ、そのほとんどは夫婦二人で経営しているような弱小ビジネスだ。

 ドーナツはハンバーガーと違い冷えてからでも何ら問題なく食べることができるが、ハンバーガーと同様、アメリカ人は "出来たて" を求める。もちろん製造後かなり時間がたったドーナツをスーパーマーケットやコンビニで買う者もいるが、それは少数派と言ってよいだろう。
 [ドーナツ = 朝食]、 [ドーナツ = 出来たて] という図式が存在しているがゆえに、町のドーナツ屋は朝が早い。日本の豆腐屋のごとく、夜が明ける前から製造し、すぐにそれを店頭に並べて売る。狭い店内で顔なじみの店主としゃべりながら食べる者、その横で朝刊を読みながら食べる者、買ってすぐに車に乗り込み運転しながら食べる者、職場に着いてから同僚と野球の話をしながら食べる者。食べるスタイルはさまざまでもドーナツがアメリカの朝食文化の主役を演じていることだけはたしかだろう。またそれを支えているのが小さな個人商店だ。
 そこに彗星のごとく入り込んで来たのがクリスピークリームで、今全米の個人商店は戦々恐々としている。今後クリスピークリームが全米のドーナツ産業を席巻してしまうのか。関係者ならずとも興味深いところだ。

 さて話が長くなってしまったが、そのクリスピークリームは毎朝店頭で何をやっているのか。また何が一般のドーナツ店と違うのか。
 その人気の秘訣は店頭での製造現場の "ショー化" だという。店内にある "全自動ドーナツ工場" はガラス張りになっており、その製造工程の一部始終を客に見せてしまうというのがクリスピークリームのコンセプトだ。たしかに子供たちなどにはウケそうで、また大人にも "出来たて" のイメージを植え付けるには効果がありそうだ。
 もちろん味も非常に良いという。少なくともアメリカ人でこの店の味にモンクを言う者はほとんどいない。一回見れば飽きてしまう "工場見学" だけで固定客をつかめるわけもなく、味の良さが人気の秘訣であることは疑う余地がないだろう。たしかに 口に入れた瞬間のフワァーと広がる柔らかな口当たりは他のドーナツと一線を画している。しかし大多数の日本人にしてみれば、その強烈な甘さだけは理解に苦しむことだろう。それでもあの甘い "CINNABON" (シナモンロールのチエーン店) が日本へ進出して成功していることを考えると日本人の味覚も変わってきているのかもしれない。

 甘さがどうであれ、いずれ日本に進出するかもしれないこの話題のクリスピークリームを一足先に見ておくのも悪くはないだろう。"工場見学" だけならばタダだが、できることなら激甘体験もしていただきたい。誰もが気軽に海外に出かけるこのご時世だからこそ、文化の違いを肌で感じるだけでなく、舌で感じることも重要だろう。
 場所はエクスカリバーホテルのカジノフロアのひとつ上の階 (カジノのほぼ中央部にエスカレーター有り)にあるレストラン街の中。なお、昼も夜もオープンしているが "朝の風物詩" は朝見ないと意味がない。値段と種類は以下の通り。

■ 値段:
1個 $0.90、 6個 $4.49、 12個 $6.49
(テナント家賃が高いためか、このエクスカリバー店の値段は一般の郊外店よりも 20〜30% 高い)

■ ドーナツの種類:
Original Glazed、Chocolate Iced Creme Filled、Chocolate Iced Custard Filled、Chocolate Iced Cake、Glazed Creme Filled、Raspberry Filled、Lemon Filled、Cinnamon Apple Filled、Powdered Bleuberry、Cinnamon Bun、Glazed Devil's Food、Traditional Cake、Chocolate Iced with Sprinkles、Glazed Cruller  


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