週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2001年02月21日号
テーマレストランブームの終焉
 テーマレストランに元気がない。ラスベガスがギャンブルの街からファミリーランドへと変貌を遂げた 90年代、雨後の竹の子のごとく出現したテーマレストランだが、最近は一転して閉店に追い込まれる店があとをたたず、テーマレストランそのものの存在を疑問視する声すらあがり始めている。その背景にあるものは何か。テーマレストランを取り巻く環境や問題点を探ってみた。

 テーマレストランとは、ある特定のテーマを前面に押し出し、料理そのものなどよりもエンターテーメント性に重点を置いた店のことだ。ロック音楽をテーマとしたハードロックカフェや映画をテーマとしたプラネットハリウッドなどがその典型といってよいだろう。
 テーマレストランはラスベガスでの出店ラッシュが始まる前からもロサンゼルスやニューヨークなどに存在していたが、多くの店が一堂に集まったという意味ではラスベガスはその総本山といっても過言ではない。

 ラスベガスに進出した主なテーマレストランとしては上記の2店の他、カントリー音楽をテーマとしたカントリースター、映画監督スピルバーグ氏監修の潜水艦をテーマとしたダイブ、ゴルフのタイガーウッズやテニスのアンドレアガシといったスター選手の愛用品や写真を一堂に集めたオールスターカフェ、モータウン・レーベルのレコードをテーマとしたモータウンカフェ、オートバイのハーレーダビッドソンをテーマとしたハーレーダビッドソンカフェなどが知られる。
 さらにプロレスをテーマとしたニトログリル、熱帯ジャングルをテーマとしたレインフォーレストカフェ、カーレース団体 NASCAR をテーマとした NASCAR カフェ、さまざまなモータースポーツをテーマとしたレースロック、映画スタジオを模倣したワーナーブラザーズのステージ16なども続々とラスベガスに進出しブームを後押しした。

 しかし 98年に早々と姿を消したカントリースターを皮切りに、ここ1年でオールスターカフェ、ニトログリル、モータウンカフェ、ダイブが店を閉じた。それぞれ閉店の事情はさまざまで、必ずしも売上不振が直接の原因とは限らないが、どこの店も客足が悪かったことだけはたしかだ。
 現在生き残っているところでも活気にあふれている店は少なく、さらなる閉店のニュースがいつ飛び込んできてもおかしくない状況だ。

 経営状態が最も心配されているのがダウンタウンに巨大な店を構えるレースロックで、最近は週末の夜でも客の入りが悪く、公表している営業時間を繰り上げて早めに店を閉じたりしている状況だ。
 サハラホテル内にある NASCAR カフェも開業以来閑古鳥が鳴き続けている。昨日だけは異常なほど多くの人で賑わっていたが、その理由は皮肉なことに 18日にフロリダで開催された NASCAR主催の伝統のビッグレース Daytona 500 でスター選手が事故死するという大ニュースがあったためだ。つまりその選手のグッズが多数展示されているこの店を多くのカーレースファンが追悼目的で訪問したというわけで、食事のために訪れたわけではない。

レストラン 状況 レストラン  状況 
 Hard Rock Cafe とりあえず継続  Planet Hollywood 経営母体が倒産
 Country Star 閉店  Dive 閉店
 All Star Cafe 閉店  Motown Cafe 閉店
 Harley Davidson とりあえず順調か  Rainforest Cafe 順調に見える 
 Nitro Grill 閉店  Stage-16 リストラ閉店のうわさも
 NASCAR Cafe 客足がかなり少ない  Race Rock 非常にきびしい状況
 ・ 閉店 以外の上記コメントは店の様子を見ての感想。財務状況までを分析してのコメントではない。

 テーマレストランとしては老舗のプラネットハリウッドもその経営母体が昨年倒産してしまったため、ラスベガス店の前途は不透明な部分が少なくない。
 ステージ 16 も経営母体のワーナーブラザーズとアメリカオンラインの合併によりリストラ目的の閉鎖が噂されている。

 この1週間で行った各テーマレストランの取材訪問で、何とかビジネスとして成り立っているように思えたのは、MGMグランド内にあるレインフォーレストカフェとストリップの一等地にあるハーレーダビッドソンカフェだけだ。老舗のハードロックカフェも繁盛しているとはお世辞にも言えない状況で、Stage 16 もパッとしない。ちなみに取材日時の違いによる誤差を補正するために、曜日や時間帯を変えて各店をそれぞれ2回取材訪問した。

 昨今のテーマレストランの経営不振を地元メディアもさまざまな角度から分析し報道しているが、立地条件に原因を見い出そうとする意見は極めて少数派だ。事実すでに消え去ったカントリースターはべラージオホテルとモンテカルロホテルの中間地点というストリップの一等地に立地していたし、オールスターカフェもそれに勝るとも劣らない絶好のロケーションだった。
 レインフォーレストカフェの活況を見てホテル内に立地していることを成功の条件と考える向きもあるが、ニトログリルはエクスカリバーホテル内に、モータウンカフェはニュークニューヨークホテル内にあった。

 現在最も主流となっている "テーマレストラン不振説" は料理そのものにあると言われている。多くの店が料理よりも建物やインテリアなどに工夫を凝らし、料理そのものに対してはネーミング以外にほとんど関心を払っていないのが現状だ。
 莫大な費用を投じて巨大ジュークボックス(カントリースター) や潜水艦(ダイブ) を模倣した建物を建設したり、"タイガーウッズバーガー"(オールスターカフェ)、"ハルクホーガンバーガー"(ニトログリル)などネーミングに工夫を凝らしたところで、特徴のないありふれた料理しか提供できなければ二度と足を運んでもらえない。
 飲食業界は 「いかにリピーター客をつかむかが成功のカギ」 といわれているが、現在のテーマレストランの体質では無理だろう。そういう意味で現存の店が生き残るためには料理に対するさらなる努力が必要ということになる。

 もっと厳しい意見も出始めている。テーマレストランというコンセプトそのもの自体を疑問視する声だ。テーマレストランを持たない某カジノホテルのレストラン部門ディレクターは次のように語っている。
 「そもそも食事を楽しみに行く場所になぜ "食事に無関係なテーマ" が必要なのか。ワインやヌードルやガーリックといった食材をテーマにした店ならば理解できる。しかしプロレスやオートバイなどと食事は誰がどう考えても結びつかない。その逆を考えればよい。ハンバーガーやホットドッグの名前を付けたオートバイを発売するメーカーがあるだろうか。」
 ちなみにこのディレクターが所属するホテルグループでは、ダイニングルームが超高額の絵画で埋め尽くされているというある意味ではテーマレストランといえなくもない店を直営している。楽しい食事と絵画は無関係ではないということか。その店も含めて今後どれだけのテーマレストランが生き残れるのか興味が尽きない。


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