週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2001年02月07日号
Steve Wynn氏のホテルは 52階建て 2300部屋に
 テーマホテルで賑わう今日のラスベガスを造った立役者 Steve Wynn 氏(写真右)が 2月5日、自動車業界のコンベンションにゲストスピーカーとして招待され、これまでベールに包まれていた彼自身の新ホテル計画について語った。

 Wynn 氏はラスベガスではヒーロー的存在だ。彼の名前を知らないラスベガス市民はまずいない。Mirage Resorts 社の最高経営責任者兼会長としてミラージ、トレジャーアイランド、べラージオなど豪華ホテルを次から次へと建設し、80年代後半から 90年代にかけて続いたテーマホテルブームの火付け役となった男だ。
 火山や海賊船ショーといった無料アトラクションで観光客を魅惑し、さらに豪華さをとことん追求したべラージオホテルを世界一ゴージャスなホテルに仕上げるなど、夢と派手さを必要とするラスベガスにおいて彼の経営哲学は喝采を浴び続けた。しかしそんな彼にも昨年突如として転機が訪れることになる。

 夢を追い続けべラージオなどに資金を投入しすぎたあまり業績が悪化し、株主からの信頼を失い株価の低迷が続くようになると、その安い株価に目をつけた MGMグランドがすかさず Wynn 氏のホテルをすべて丸ごと買い取ってしまった。それを機に彼は長年君臨し続けた Mirage 社の会長職を追われることになり、我が子のように育て上げたミラージやべラージオをあとにして、新天地を求めて伝統ある豪華ホテル・デザートイン(写真左下) を Mirage 株の売却益で買い取ったのである。

 夢を追い続けることをやまない彼は、他人が造った現在のデザートインには満足できず、移籍直後の昨年8月、同ホテルの営業をすべて打ち切り (デザートインゴルフクラブだけは現在もオープンしているが、ホテル自体は完全に閉鎖)、まったく新しいホテルに建て替えることを公言した。
 その後彼は公共の場に姿を現すこともなく沈黙を守り続けていたが、ついに今月5日、約半年ぶりにマスコミの前に登場し新ホテルについて抱負を語ったのである。

 彼自身が The single most wonderful resort in the history of Las Vegas と称するそのホテルのスペックは、地上 52階建、2,300室、全室スイートルーム、従業員 5,000人、総工費 15億ドル以上、とのこと。
 彼としてはもっと高層にして目立たせたかったようだが、ラスベガスのホテル街は空港に近いため、この 52階が空港管理当局から許可される最大限の高さだという。
 着工は今年の秋を目標としており、工期は約 30ヶ月を予定している。この 30ヶ月という数字はラスベガスの標準(約 20ヶ月)からするとかなり長い工期となるが、べラージオをはるかにしのぐ豪華なホテルにするためにはこの程度の工期が必要だという。

 名称やテーマはまだ未定のようだが、Wynn 氏は半年ほど前に 「テーマを決めてしまうとそれに縛られてしまい思い切った改良などをしにくくなる。テーマホテルはもはや 20世紀のコンセプト」 などと語っていたことがあるだけに、テーマを持たないホテルになる公算が大きい。
 なお、新ホテルの設計において映画監督のスピルバーグ氏も関与しているのではないかとの憶測が以前からあったが、Wynn 氏は今回の発表でそれを否定している。

 さて気になる現在のデザートインの今後だが、Wynn 氏はやはり爆破解体を考えているようだ。解体せずに新ホテルの一部として利用するという案もあったようだが、中途半端なことを嫌う彼はあえてそれを避ける方向で計画を進めているという。それでも伝統あるホテルなだけに彼としても解体には未練があるのか、爆破解体の直前にはデザートインゆかりのセレブリティーらを集めて盛大なるお別れパーティーを開催するとのこと。

 建設資金は、Mirage 株の売却益では足りず、日本のパチスロ機メーカー最大手のアルゼ社(本社:東京)から 2億6000万ドルの出資を、また、ドイツ銀行から 10億ドルほどの融資を受けることになっているという。
 ただ、アルゼ社は脱税問題などが日本で表面化してきており、健全さが要求されるラスベガスのカジノ業界においてその立場は微妙に揺れているようだ。カジノ業界を管理するネバダ州当局の話では、日本側での脱税問題とカジノ業の免許とはまったく別問題で、Wynn 氏がアルゼ社とかかわりを持ち続けても現時点では免許の発行に問題はない、としているが、今後どのようになるか先行きを不安視する声も少なくない。

 いずれにせよ約3年後には The single most wonderful resort in the history of Las Vegas が出現することはほぼ間違いないだろう。今度こそ経営不振に陥ることなく再度ラスベガスのヒーローとして復活してもらいたいものである。ちなみに、MGM 社の手に渡ってしまったべラージオは皮肉にも業績が回復してきているという。


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