週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2010年 12月 22日号
評判は上々だが、宿泊はしばらく様子を見たいコスモポリタン
 着工から5年。リーマンショックの試練を乗り越え、大型カジノホテル 「コスモポリタン」 が12月15日、ついにオープンした。
 総工費は単独ホテルとしては世界一と言われる 39億ドル、地上50階、客室数2995、場所は繁華街のど真ん中という待望の超注目ホテルだ。
(写真: 中央の建物が同ホテルの東館、右が西館、道路はストリップ大通り。左端に見える丸いものはパリスホテルのマーキー。クリックで拡大表示)

 第一印象は非常に良い。地元メディアなどの評判も上々で、一年前の同時期にオープンしたヴィダラやアリアの開業時とは対照的に、きびしい論調はほとんどなく、各ブロガーたちのコメントも総じて好意的だ。
(写真: 西館の南側に面した客室のテラスからシティーセンター方向を撮影。右側の白い大きな建物はアリア。画面の両端が曲がって見えるのは魚眼レンズを使用したため。空の色がオレンジ色に見えるのは低い雨雲に街のイルミネーションが反射)

 好評を得ている最大の理由は、このホテルの特徴ともいえる 「垂直」 から来る利便性だろう。
(写真: 地下2階の駐車場に掲示された地下5階までの駐車スペースの残数情報)
 ストリップ地区の大多数の大型ホテルは、その広大な敷地を生かした 「水平設計」 だ。つまり、カジノを中心に、フロントロビー、プール、劇場、レストラン、ショップ、ナイトクラブ、ボールルーム、ビジネスセンターなどを同一平面内に配置し、客室棟の各フロア以外はほとんどすべてが地上階か2階まで、という横に広げる設計になっている。駐車場もホテル棟とは別の地上に建設するのが普通だ。
 利用者にとっては移動距離が長くなるばかりか、どこへ行くにもカジノを通過しなければならず不便極まりないが、ホテル側がカジノ運営を経営の基本とする限り、やむを得ない部分もある。
 しかしコスモポリタンの場合は地下5階の駐車場から最上階の50階までの間にすべてのアメニティーが垂直に収まっている (縁起をかつぐチャイニーズ系の利用者に配慮し、40番台のフロアがないので、最上階のフロアが必ずしも "50階" ではない)。ちなみにスパや、一番高い位置にあるプールは14階だ。移動はすべてエレベーターやエスカレーターに頼る垂直移動となるので、歩く距離は短くて済む。
 この種の構造は日本の都市部の複合施設では当たり前のことだが、なぜかラスベガスでは今までほとんど見られなかった。

 もちろんコスモポリタンもこんな構造にはしたくなかったにちがいない。垂直構造ではエレベーターでカジノを通過されてしまうからだ。
 しかしやむを得ない理由があった。それは土地が狭いということ。
 ベラージオホテルとシティーセンターに挟まれたその土地は本当にごくわずかで、すぐ隣に存在するそのベラージオの池よりも狭い (写真: 東館の北側に面した客室のテラスから見たベラージオホテルとその池)。
 もちろん狭いと言っても面積的にはほぼ1万坪あるが、50階建ての高層ビルを2棟建てる 39億ドルの巨額プロジェクトとしてはいささか頼りない。実際に周辺のライバルホテルの数分の1のサイズだ。
 結局コスモポリタンには前庭などがまったく無いので、ストリップ大通りの歩道から一歩踏み込めばそこはもうカジノ。そしてその上の階はレストラン街やショッピング街。シーザーズパレス、アリア、ベラージオ、ミラージなど、前庭が広く、歩道から100メートル以上も歩かされるホテルとは大ちがいで、利便性の高さは群を抜いている。
 土地の狭さが結果的に功を奏し、利用者から好評を得ることになったわけだが、「失敗」 とささやかれるアリアの設計が最近話題となっているだけに、今回のコスモポリタンの高い評価は、今後の新設ホテルの設計において少なからず影響を与えることになるだろう。

 さて一連の高い評価は、あくまでも各施設のレイアウト的な部分に対してのもの。客室そのものや宿泊に関する情報はまだ少なく、その評価はほとんど聞こえてこない。
 そこで今回さっそく体験宿泊をしてきたので、カジノ、レストラン、ショッピングなどに関しては各メディアやブロガーたちに任せるとして、ここではその客室についてレポートしてみたい。
 なお、調査した部屋は、南側と北側の異なる景色に面した標準的なキングベッドルーム (大きなベッドが1つのカップル向けの部屋) で、クイーンベッドルーム (ベッドが2つの部屋) は調査していない。クイーンはなぜか部屋そのもののサイズが狭く、なおかつテラス付きではない可能性が高いと聞いているからだ。

 さっそく利用してみた感想についてだが、結論から先に書いてしまうならば、ハード的な部分はかなり良いものの、ソフト的な部分がまったくダメで、まだ利用できるレベルに達していない、と言わざるをえない。
 ルーム内の管理清掃から、テレビや電話などのプログラム構築、さらには電話オペレーター、そしてフロントデスクまで、ありとあらゆる部分において問題があまりにも多すぎる。
 たまたまその部屋だけが運悪くダメだったとか、たまたまその担当者の態度が悪かったとかではなく、全体に言える傾向的な問題といってよいだろう。
 ただ、体験宿泊後、客室管理のマネージャー、さらにオペレーション全体を統括するディレクターに話を聞き、準備不足による一時的な問題であることがわかったので、このホテルを見捨てる必要はないし、これだけの高い利便性を誇るホテルを今の段階で見捨てるのは愚かな発想だ。数週間か数ヶ月かはわからないが、遅かれ早かれ問題は解決され、垂直形構造の利点を享受できるラスベガスで最も使いやすいホテルになることを信じたい。

 準備不足による個々の問題をここでいちいち公表するのもどうかとも思うが、今週や来週など今すぐ宿泊を予定している読者の利便のためにあえて現状を報告しておくと、今回以下のようなトラブルに遭遇した。
 バスローブ、コーヒー(設置されているコーヒーメーカー用の)、コーヒーカップ、ヘアドライヤー、体重計、アイロン、冷蔵庫の中の有料ドリンク、有料スナックは、今回利用した片方の部屋にはあったが、もう一方の部屋にはなかった。スリッパは両方の部屋になかったが、スリッパも含めた上記のすべてのものは、事前の資料や宣伝によると客室内に存在していることになっている。
 ちなみにこれら不足しているものに関して、客室担当セクション、電話オペレーター、フロントデスクに伝えてみたが、知識が不十分なのか業務の担当範囲が明確になっていないのか、まともな対応をできる者はいなかった。

 各フロアの廊下に設置してある製氷マシンも正しく稼動していない可能性があるので、もしそのようなマシンに遭遇した場合は、別のフロアに行くなどそれなりの行動を起こす必要がある。
 館内電話 (写真) もプログラムに問題があるのか、正しく機能していない部分があるので要注意。特にウェイクアップコール (モーニングコール) は使えなかったので、翌朝早く起きる必要がある者は目覚まし時計を持参するか、携帯電話を利用するなり、対策を考えておいたほうがよいだろう。
 ちなみに通常のホテルの枕元に置いてある目覚まし時計付きラジオは、今回調べたどちらの部屋にも存在していなかった。
 電話といえば、伝言メッセージの機能も調子が悪いようだ。伝言を残すことはできたが、聞き出せないというトラブルに遭遇。電話の管理を専門におこなっているスタッフが部屋に来て直してくれたが、なんとその修理方法は電源コードを抜いてリセットするというもの。
 客室内のテレビも調子が今ひとつ。テレビ画面を見ながらのリモコン操作でさまざまなことができるようになっているが、室内の照明や空調のコントロールに異常はないものの、チェックアウト機能など、いくつかのメニューにおいてはフリーズしてしまうので要注意。その場合は電源を切るしかない。画面の言語は英語のみで、スペイン語、中国語、日本語などはこれから構築していくようだ。

 バスタブは、豊富な泡が豪快に吹き出すいわゆるジャクージタイプの浴槽で、それ自体は非常によいが、使用後、深夜に突然ものすごい音を立てて浴槽内の小さな穴から空気を吹き出すので、深夜熟睡したい場合は就寝直前の使用を控えたほうがいいかもしれない。ちなみにその音は、故障によるものではなく仕様と思われるが、確認はしていない。
 利用者として困らない不明確な部分もあった。それは客室内でのインターネットの無線接続で、パスワードも名前も何も入力せずに自動的に回線がつながってしまうということ。ネット接続料は無料とのことなので、パスワード不要でもよいわけだが、たとえ無料でも通常は何らかの入力が求められるのが一般的だ。現状のままで確定なのか、それとも今後パスワードを必要にする設定に変更するのかは確認できなかった。

 トラブルは客室内だけではない。宣伝などによると、ルームキーが自動的にカジノカードにもなるとのことだったが、実際にはそれをスロットマシンに差し込んでも何も機能しない。カジノ内の専用デスクに出向き、改めてカードを作る必要がある。
 地下の駐車場へ通じるエレベータの周辺で工事が行われていたのも少々気になった。
 なお、これはたまたま偶然、つまりその担当スタッフ固有の問題と思われ、このホテル全体を評価する際の参考にすべきことではないが、客室内の清掃が非常に雑で、冷蔵庫内に前日の宿泊者の食べ残しがあったり、バスルームのゴミ箱の中がそのままになっていたりする不手際があった。その担当者の一日も早いスキルアップを願いたい。

 悪いことばかりを書いてきたが、このホテルには良い部分や特徴もたくさんある。
 すでに書いてきた垂直構造による抜群の利便性や、ストリップ大通りに近いということ以外にも、部屋がかなり広く、リビングルームとベッドルームが分かれていること (高さ 106cm の壁で区切られている)、さらに簡易キッチンがあり電子レンジなどがあること、そしてなにより、ラスベガスのホテルとしては非常に珍しく屋外テラス (写真右上と右下) があることは特筆に値する驚きの特徴だ。

 なぜそのようになっているかというと、リーマンショックと無関係ではない過去のきびしい事情がある。実はこのコスモポリタン、ホテルではなく、ハイライズ・コンドミニアム、つまり日本でいうところの高層マンションとして計画され、建設が始まり、そして分譲も進んだ。しかしリーマンショックで需要が激減し、完売の見通しが立たなくなったばかりか、分譲価格自体も暴落。その販売代金を当て込んでいたデベロッパーは、借り入れていた建設資金を返済できなくなり、建設途中で倒産してしまった。
 銀行団の中の中心的な存在だったドイツ銀行が債権者の代表として建設途中の物件を引き取ることになり、さらに巨額を追加投入して、このたびの開業に至った。
 つまり、倒産後の建設再開以降において、コンドミニアムからホテルへとデザイン変更がなされたわけだが、家具や内装など間に合った部分と、そうでない部分があり、造ってしまったテラスや間取りなどは変更不能で、今でもコンドミニアムの名残があるというわけだ。
 たかがテラスと言ってしまえばそれまでだが、ハワイなどのビーチリゾートならいざしらず、ラスベガスでは非常に珍しいので、その存在自体はそれなりに評価されてしかるべきだろう。
 そしてそのテラスからの眺めが素晴らしい。ちなみに北側 (ベラージオホテル側) に面した部屋のほうが人気が高く、わずかに高めの料金設定になっているとのことだが、南側の眺めも決して悪くないので特に北側にこだわる必要はないだろう。大事なことは、すでに書いたとおり、キングベッドルームにしないとテラスなしの部屋になってしまう可能性があるということ。そういう意味ではこのホテルはカップル向けと考えるべきかもしれない。

 最後に、冒頭で客室数2995と書いたが、ラスベガスのホテル需要が低迷していることと、コンドミニアムを買うつもりで頭金を払い込んだ一部のバイヤーから、コンドミニアムとして完成させなかったことに対して集団訴訟を起こされていることなどから、現時点ですべての部屋がホテルとして開業しているわけではない。1000部屋ほどはまだ未使用もしくは未完成のままで、ホテル需要や裁判の成り行きを見守りながら来年夏ごろまでに全館オープンしたいとしている。


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