週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2010年 11月 10日号
世界一新鮮なアイスクリーム店 ICEPAN がベガスに進出
 ロサンゼルス・ハリウッド生まれの世界一新鮮なアイスクリーム ICEPAN の非常に貴重な店舗が、このたび突然ラスベガスにオープンした。
 「貴重」、「突然」 というにはそれなりの理由があるが、それら会社の沿革などについては後述するとして、まずは店や商品そのものについて説明したい。(右の写真は今回オープンしたラスベガス店)

 店のロケーションはハラズホテルの2階。カジノフロアの中央付近からエスカレーターで2階へ上がり、駐車場やモノレールの駅ヘ通じる通路の途中だ。
 アイスパンと言っても、あんパンのあんの代わりにアイスクリームが入ったパンではない。フライパンのような平たい金属製の装置の上で作られるアイスクリームということでこの名前が付いたとされる。

 実際に店頭では、バニラ、ストロベリーなどのフレーバー、さらにトッピングなど、客の好みに応じたアイスクリームをそのパンの上で実演製造してくれる。
 似たような店として 「コールドストーン」 が日本にも存在しているが、それとはまったく異なるので混同してはいけない。コールドストーンは、すでに商品として完成しているアイスクリームに、客が指定するさまざまな具材を混ぜて作るが、このアイスパンでは、ミルクなどの素材の状態からアイスクリームそのものを作り上げる。結果的にアイスクリームとして凍って完成してから食べるまでの時間差がないという意味で世界一新鮮と称されたりするわけだが、素材の鮮度が世界一ということではない。

 オーダー方法は現場にわかりやすく掲示されているので特にむずかしいことはないが、順番としては、バニラ、ストロベリー、コーヒー、チョコレート、マンゴ、あずき、緑茶などの中からフレーバーを指定し、その次に牛乳、低脂肪乳、豆乳などのなかからアイスクリームのベースとなる素材を選ぶ。最後に各種フルーツやナッツ類の中から好きなトッピングを決めてオーダーすれば、あとは製造開始を待つだけだ。
 なおトッピングは、アイスクリームの製造段階で中に混ぜ込んでしまうか、完成後に上に乗せるかを指定できるが、別料金なので必ずしもトッピングを選ぶ必要はない。

 ガラス越しに見える場所で製造が始まる。材料を円形のパンの上に薄く広げる様子はクレープを焼く場面とそっくりだ。
 しかしクレープと違うのはその直後。手を休めることなく、あわただしく一生懸命に混ぜ始める。摂氏マイナス37度に冷やされているというそのパンの上では、急いで混ぜ続けないとカチンカチンに凍ってしまうからだ。
 鉄板ヤキソバの調理風景のごとく、ヘラを使って激しく混ぜ続けること約2分。オリジナルのアイスクリームが完成する。

 余談になるが、零度前後で凍ってしまう通常の水などと異なり、砂糖や様々なものが溶け込んだミルクなどのアイスクリームの原料はいわゆる凝固点降下を起こし、そう簡単に凍るものではない。それが一気に凍ってしまうという圧倒的な冷却パワーには目を見張るものがある。(右の写真は特別に見せてもらったその装置。DANGER と書かれていることがわかる)
 その興味深いカラクリは、液体窒素の利用なのか、通常の冷凍庫などと同様のコンプレッサーによる気化冷却か、はたまたペルチェ素子の利用なのか現場スタッフに聞いてみたが、残念ながら誰もわかっていないようだった。いずれにせよ、この店の特徴はその強力な冷却装置にあり、装置こそがすべてと言っても過言ではないだろう。

 さて気になる味についてだが、バニラとストロベリーを試食した限りでは、アメリカのアイスクリームとしては甘さ控えめで上品な味に仕上がっていた。
 低カロリー、健康志向をウリにしているので、他のフレーバーもそれほどヘビーな味ではないと思われる。ちなみにすべてのフレーバーに対して、小冊子でカロリーを明記するなど、その健康志向を強調するマーケティングにはこだわりが感じられた。

 価格はアイスクリームそのものが $5.95、それにトッピングが一種類につき $0.50。さらに、紙製のカップではなく、ワッフルコーンに入れてもらうと $0.75 の追加になる。
 アイスクリームとしては決して安くはないが、少なくとも最初の一回だけは、これを高いと考えるべきではないだろう。ドロドロした素材が一気に凍っていく様子は多くの人にとって初めて見る光景のはずで、一見に値するからだ。特に凍っていく過程で一瞬現れたりする幾何学的な模様は芸術的で美しい。
 仮にそのような光景に遭遇できなくても、短時間での素材の激変にはだれもが驚くはずで、液体から固体への変化を早送り映像で鑑賞できるようなこのアイスパンは、単なるアイスクリームショップではなくショー的な要素も含んでおり、価格の中の半分はアトラクション代と考えるべきだろう。
 営業時間は、とりあえず現在は午前11時から深夜1時まで、週末は深夜2時まで。今後さらに営業時間の拡大を目指したいとしている。

 さて冒頭で触れたとおり、この会社の沿革について。
 創業したオーナー社長は、昨今ブームになっている多くのフローズンヨーグルト店と同様、韓国系ビジネスマンだ。2007年にハリウッドで店を開いた後、アイスクリームの実演製造販売という奇抜な演出が話題となり、地元メディア等にも取り上げられるなど一気に多店舗化が期待されたが、結果はさにあらず。
 このラスベガス大全のバックナンバー657号でも取り上げたフローズンヨーグルトのブームに飲み込まれてしまったのか、いつまでたっても店舗を増やすことができず、レドンドビーチ(ロサンゼルス近郊の人気ビーチ都市)店など数少ない新規店舗もすぐに閉店に追い込まれる状況が続き、しばらくはハリウッド店だけが孤軍奮闘することに。
 そこに突然何が起こったのか、2009年、日本での展開が始まり、東京青山と群馬県館林に店舗をオープン。しかし今年5月、なんと青山店は一年と持たずして突然閉店に追い込まれてしまった。

 今年に入りハリウッド店も経営不振に陥り、もはや会社自体が瀕死の重症と思われた矢先、突然9月に、上記のラスベガス店がオープン。
 取材を申し込もうとするも、現場には雇われた店員がいるだけで責任者は不在。本部にコンタクトすれば話を聞けるだろうと思い、電話をしてみるも、その本部への電話はすでに不通で、運営母体そのものが事実上の行方不明状態に。
 そこで、本部に行かなくてもハリウッド店に行けば話を聞けるだろうと、現場に足を運んでみると、なんと店舗内は真っ暗 (写真右上、11月7日撮影) 。
 そこのショッピングモールの管理人いわく、「先月突然店を閉めた」 とのこと。ドアには 「改装工事のためしばらく閉鎖」 と英語で小さく書かれた張り紙があったが、その種の工事が行われている気配はまったくなかった。

 結局、現時点でアメリカで実在が確認できているのはラスベガス店だけということになり、本部の存在なしにどうやって運営を継続出来ているのか知るために現場に足を運び続けること数回。
 そして今週、ついにオーナー社長の妻と称する人物に会うことに成功 (写真右。名前は出さないでほしいとのこと)。
   快く取材に応じてくれた彼女は、ハリウッド店や青山店の閉鎖については多くを語ろうとしなかったが、今後の展望については希望に満ちた笑顔で話してくれた。
 それによると、「ハラズホテルと多店舗展開の契約に成功したので、本部はラスベガスに移し、今後はしばらくラスベガスにすべての資源を集中させたい」 とのこと。
 ちなみに同ホテルの経営母体は、ラスベガスに10ヶ所ほどカジノホテルを所有している大企業。今回オープンした店舗の売上成績がよければ、その10ヶ所に ICEPAN を出店することになるという。つまり、シーザーズパレス、パリス、フラミンゴ、プラネットハリウッドなどのそうそうたる大型ホテルに出店の可能性がある。なんとも夢のある話ではないか。
 そのようなわけで現在はこの地球上に館林店とラスベガス店しか存在せず、ラスベガス店は、ICEPAN を利用してみたいと思っている消費者にとって非常に貴重な存在であるばかりか、経営者にとっても今後の成否を占う社運を賭けた重要な一店ということになる。アイスクリームの実演製造という極めて独創的な店なだけに、なんとか頑張って多店舗展開につながることを期待したい。



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