週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2010年 09月 01日号
富士山と酷似、登山愛好家におすすめのチャールストン山
 日本は空前の登山ブームらしい。本格的な登山家はもちろんのこと、若い女性や熟年層の間でも愛好家が急増していると聞く。
 健康的な趣味やブームは大いにけっこうな話だが、どこの山も混雑がひどいらしい。象徴的なのが富士山。世界的な知名度もあってか、海外からの観光客も大挙して押し寄せているという。(右の写真はチャールストン山)
 一昨日の山梨日日新聞によると、夏も終わりという先週28日の土曜日だけで登山者数はなんと1万1820人というから驚きだ。1日の数としては新記録とのこと。
 ちなみにこの数、山梨県河口湖側の吉田ルートからの入山者数で、静岡県側は含まれていない。両県からの登山者が集結する頂上には2万人ぐらいが立ったのだろうか。
 その新聞記事内の 「渋滞」 というやや大げさとも思える言葉も 写真 (←クリックで表示) を見ると納得してしまう。前の人の背中を見ながら登り、一歩でも立ち止まると後続の人に足をふまれそうなほどの混みようだ。もはやこれでは雄大な景色をのんびり眺める余裕もないだろう。

 3千メートル級の山に登りたいけどそんな混雑はイヤだ、という人におすすめなのが、ラスベガスのホテル街からわずか45分で行けるマウント・チャールストン。ネバダ州屈指の高峰で、高さは富士山とほぼ同じ 3632メートル。車でアクセス可能な自動車道の終点の標高も、富士山の五合目の駐車場と同じ約2300m。緯度も北緯36度16分で富士山と1度もちがわない。
 なにもかも似ているこの山、富士山との最大の相違点は登山者数だろう。シーズン中の今の時期でも頂上を目指す人の数は平日で20人前後、週末でも100人前後 (現場管理事務所の話) というから、前の人の背中など見たくても見えないほどすいている。

 この人気の差は何か。登山の対象として魅力が無いのかというと、そんなことはないはずだ。
 両方に登ったことがある経験者としてあえていうならば、野生のシカに遭遇したり、針葉樹や高山植物が少なからず存在しているチャールストン山のほうが変化に富んでいて楽しい。
 人気の差は単純に人口と知名度の差だろう。半径200km以内にラスベガスを含め 2〜300万人しか住んでいないこの山に対して、富士山は3000万人を超える首都圏、さらに東海地方、甲州、信州地区もかかえている。
 また知名度の点でも日本一の富士山に対して、この山の西方270kmほどのところにはアラスカを除くアメリカ本土最高峰のマウント・ホイットニー (4421m) があるため存在感が非常に薄い。
 そのようなわけで、人気が無いのはこの山固有の問題ではないので、カジノの喧騒やネオン街の雑踏の中から飛び出し大自然の中で息抜きをしたいという登山愛好家にはぜひ登ってもらいたい山だ。

 さて、登ってからガッカリしたりしないためにあえてこの山の欠点や問題点もあげておくと、最大の欠点はその姿や形だろう。富士山のようなコニーデ型の単独峰ではないため、周囲の山との区別が付きにくく、この山単体としての美しさを感じることはほとんどない。
 出発地点のロッジやレストラン (写真右) 以外に、山小屋など人工的な施設がまったく存在しないのも、利便という意味では大いに問題だろう。つまり登山道には山小屋どころかトイレもゴミ箱も水の補給施設もない。
 富士山など日本の山が過剰設備で、何もないのが世界のスタンダードと考えれば仕方がない部分ではあるが、案内標識まで無いのはいかがなものか。富士山でいうところの何合目にいるのか、また頂上までの残りの距離や所要時間がどの程度なのか、まったくわからない。それらは安全上、必要な情報のはずだ。
 駐車場に至るまでの自動車道には立派な標識で標高が示されているのに、なぜ登山道にそれが無いのか理解に苦しむ。

 ちなみに後述するサウスループトレイル (South Loop Trail) からグリフィスピークトレイル (Griffith Peak Trail) への分岐点において、この山の登山道としては唯一とも言える標識を見つけることができた (写真右)。しかし、そこにはトレイルの名称と方向が示されているだけで標高や距離情報などは書かれていなかった。
 そんな登山者の不満の声が管理当局側にやっと届いたのか、偶然にも下山途中で、どこかに設置するであろう真新しい標識を背負った作業員とすれ違った (写真右下)。今後の改善に期待したい。
 なお、そんな状況からは想像しにくいが、なぜか携帯電話の電波は道中の多くの場所でキャッチできた。ちなみに受信が確認できた電話会社は AT&T と T-Mobile。
 その他の電話会社に関しては未確認だが、万一の遭難の時のためにもとりあえず携帯電話は持って行ったほうがよさそうだ。

 さて個別のトレイルについて簡単にふれておきたい。自動車道の終点付近にある駐車場から入山できる主なトレイルは3つ。
 メインとなるのが最高峰マウント・チャールストンを目指すサウスループトレイル、そしてそのサウスループのほぼ中間地点から東方向に分かれてグリフィスピークを目指すグリフィスピークトレイル、3つ目が、スタート地点から別の方向に伸びる初心者向けのキャセドラルロックトレイル (Cathedral Rock Trail)。
 所要時間は、体力や休憩時間などによって大きく異なってしまうが、とりあえず標準的な目安としては、サウスループトレイルでマウント・チャールストンの頂上まで行くのは片道約6時間で標高差は1292m。
 サウスループトレイルの途中から分かれてグリフィスピークトレイルに入りグリフィスピークを目指すルートは片道約4時間、標高差963m。
 キャセドラルロックトレイルを使ってキャセドラルロックまで登るルートが片道約1時間、標高差265m。このトレイルだけは距離が短いので子供同伴の家族連れなどが多い (写真右)。また途中に沢のような場所があり、それを飲むつもりであれば水の補給が可能なので、荷物も少なく軽装で済む。

 バスなどの公共の交通機関がないので、観光客はレンタカーで行くしかない。
 ストリップ地区のホテル街からの行き方は、ベラージオホテルのすぐ裏側などから高速15号線の北行きに乗る。約5分でダウンタウンのジャンクションにさしかかるので95号線の北行き (現場の標識では RENO と書かれた車線) に乗り換え、そのまま約20分走り、157号線の標識が見えたら左折する形でその157号線に入る。そこから20分走れば標高2300mの終点に到着。

 駐車場は大きく分けて3つ。道路の終点の手前約300メートルほどの場所の右側にある無料駐車場(約10台)、そのやや先、つまり終点の手前150メートルほどの地点から右斜め方向に入ったところにある有料駐車場 (1日8ドル。数台ずつの駐車スペースが森の中に点在。料金所に人がいない場合は、正直に料金箱に8ドルを入れる)、そして終点にあるロッジとレストラン客のための駐車場 (数十台)、以上の3ヶ所。登山客はスペース的にも位置的にも有料駐車場に置くべきだろう。
 なおトレイルの入口がわかりにくいので注意したい。その有料駐車場内の道を右奥に進んだ場所に似たような看板が2つあり、手前にあるのがキャセドラルロックトレイルの入口で (写真右上)、その約50メートル先にある看板 (写真右) がサウスループトレイルの入口だ (グリフィスピークに行きたい場合もここから入る)。

 日本の山でもいえることだが、3000メートルを越える高峰なので、いかなる季節においても防寒具、そして十分な水の携帯は最低限の常識だ。また、これからの季節は日が短くなるので、日没前に戻ってこれるよう、可能な限り早い時間から登るようにしたい。



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