週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2010年 03月 10日号
シルク・ドゥ・ソレイユの Viva Elvis が正式オープン
 2月19日、アリアホテルでエルヴィス・プレスリーをテーマにしたシルク・ドゥ・ソレイユのナイトショーViva Elvis" が正式にオープンした。(右の写真はこのショーを記念して発行された25ドルチップ)
 当初の予定では、12月から始まっていたプレビュー公演 (不具合などを修正しながらのテスト公演) のあと、エルヴィスの誕生日である1月8日に正式オープンすることになっていたが、装置の故障など不具合が相次ぎあえなく延期。その後もトラブルが絶えず、新たな予定日がさらに延期されるなど、出足からかなりつまずいてしまったが、このたびやっと正式オープンにこぎつけた。

 この Viva Elvis は、Mystere、O、Zumanity、KA、LOVE、CRISS ANGEL Believe に次ぐシルク・ドゥ・ソレイユのラスベガスでの第7作目。
 シルクのショーが多すぎ新鮮味がなくなってきたためか、それともスタートでのつまずきの影響か、地元メディアなどでの評判は今ひとつ芳しくない。ちなみに当地で最大発行部数を誇る日刊紙リビュージャーナルでの評価は「B」だ。Mystere、O、KA、LOVE が 「A」、Zumanity が 「A-」 であることを考えるとかなりきびしい。
 しかし今回の 「完成版」 を見た限りでは、プレビュー版よりもかなり洗練されてきており、それほど悪い印象は受けなかった。むしろかなり好感が持てる内容で、少なくともエルヴィスのファンにとっては必見のショーといってよいだろう。

 シルクといえばサーカスやアクロバットという印象があるが、このショーではそういった要素はそれほど多くない。主役はあくまでもエルヴィスだ。
 そのように書くと、エルヴィスのそっくりさんが中心となって歌を披露するコンサート系もしくはミュージカル系のようなショーを想像してしまいがちだが、そうではない。
 意外なことに、ライブで歌が披露されるのはほんの数曲で、なおかつそのシンガーは全員が女性だ。つまりエルヴィスのそっくりさんが歌うという場面はまったくない。
 ではどんなショーなのか。コンセプトは意外と単純明快で、往年のエルヴィスの映像をさまざまな方法で映写しながら、そのスクリーン以外の部分でシルクのスタッフが曲芸、アクロバット、ダンスなどを披露する。

 エルヴィスが他界して33年。その長い歳月を考えると、映像も音声も古臭く、かなり安っぽいショーのようにも思われがちだが、その種の心配は無用だ。音楽、照明、舞台セットなどのトータル的な演出が実にうまく、ゴージャス感こそあっても安っぽさなどまったくない。
 映像も音声も古いことはたしかではあるが、それをそのまま流さないところがシルクの真骨頂で、特に音声の部分の制作はこのショーにおいて最も苦労した部分らしい。
 音楽ディレクターの Erich van Tourneau 氏によると、膨大な数のレコードやフィルムの中から約30曲を厳選し、エルヴィスの肉声をそのまま生かしながら、楽器の部分だけを独自にアレンジしたという。もちろんその部分の演奏は録音ではなく生バンドだ。
 したがって、バンドの各奏者は、映像の中でのエルヴィスの口の動きに合わせながら楽器を演奏する必要があり、音楽に合わせて口だけを動かすいわゆる「口パク」とはまったく逆のことをやっている。

 映像は50年代、60年代のコンサートを中心に、晩年のラスベガス公演、そして徴兵通知を受け取り陸軍で髪を切られる場面、さらには出演した映画における名場面やキスシーン特集など多岐に渡っており、かなりのお宝映像が惜しみなく披露される。
 そんな中でも特筆に値するのが、プリシラさんとのラスベガスでの結婚式の模様で、その映像は、そのときの実際のウェディングケーキを再現したという巨大レプリカおよびウェディングドレスに映し出され、さらに大ヒット曲 「Can’t Help Falling in Love」(日本名 「好きにならずにいられない」) と、場内全体に光で映し出されるCG紙吹雪が舞うというなんとも幻想的な演出だ。当時を思い出すファンは感激のあまりここで涙を流すことになる。

 貴重な映像がスクリーンに映し出されると、そっちに目が釘付けになってしまいがちだが、その間にもシルクは華麗なるダンスやアクロバットを披露しているので、目がいくつあっても足りないというのがこのショーにおける悩みだ。
 結局ダンスやアクロバットは見落としてしまいがちだが、それではあまりにももったいない。いくらエルヴィスが主役のショーとはいえ、シルクにはサーカス団としての遺伝子が宿っているのか、かなり危険を伴う過激なアクロバットも披露してくれる。体操競技の平行棒と鉄棒を複数組み合わせたような装置を使った難易度の高い演技や、トランポリンを使ったユニークな演出などはいかにもシルクらしくておもしろい。また、金属パイプのようなものでギターの骨格を作った装置での空中アクロバットも見事だ。

 そのほかの特徴を挙げると、このショーではごくわずかではあるが、シルクのショーとしては珍しく、トークの部分がある。そのトークは、往年のエルヴィスや名物マネージャー 「パーカー大佐」 などに関する語りだが、英語がわからなくてもこのショーを楽しむ上で特に支障はないのであまり気にする必要はない。
 開演直前の15分間ほど、右上の写真のようなスタッフが客席の間を意味不明の奇声を発しながら走り回ったりするので、そういった演出も楽しみたい場合は早めに会場に入ったほうがよい。
 なお、通常のショーでは、入場ゲートを通ったあとの会場周囲の廊下などで飲み物を買うことができるが、このショーにおいては、ドリンク類のスタンドは入場ゲートの外にあるので、飲み物がほしい場合は入場前に買う必要がある。ちなみにビールは7ドル、コーラなどのソフトドリンクは4ドル。

 客層は50代以上がほとんどかと思いきや、意外にも30代、40代の若い世代も少なくない。バリーマニロウやジャージーボーイズなどのショーにおいてはほとんどが50代以上であることを考えると、エルヴィスがいかに世代を超えたスーパースターであるかがうかがい知れる。
 その一方で、「シルクは多すぎてうんざりだ」 といったネガティブな意見があるのも事実。しかしこの Viva Elvis は他のシルクのショーとはまったく異質のものなので、新鮮味が無いということはないはずだ。もちろんビートルズがテーマの LOVE とはコンセプト的にかなり似ているが、こちらのほうがより主人公の存在感が強く、また懐古調に仕上がっているので親しみやすい。
 エルヴィスそっくりさんに頼らず、本物の映像を主体に構成したことは、結果的にそれが成功につながったと考えてよいのではないか (まだ成功したとは言い切れないが)。
 本当にエルヴィスが存在しているかのような雰囲気に会場全体が包まれ、少なくともこの会場内では 「エルヴィス生存説」 がウソではないような錯覚に陥る。それこそが制作者側の意図するところのような気がしてならない。

 フロアの傾斜は十分にあるので、前の席に大きな人がすわっても視界を妨げられることはない。また会場の中に特に悪い席はないので、予算に合わせて席を選べばよいだろう。
 料金は、99、125、150、175ドルの4種類。これに10%のライブエンターテインメント税とチケット発行手数料7.50ドルが加算される。税金はともかく、劇場の前のチケット売り場で買ってもその手数料が加算されるのはなんとも腑に落ちない。少しでも安く見せるための手段なのか、ごくわずでも税金の部分を減らすための奇策なのかよくわからないが、手数料は最初から料金に含めるべきだろう。
 公演は水曜日と木曜日を除く毎日 7:00pm と 9:30pm の2回。劇場の場所は、アリアのカジノフロアの一つ上の階。エスカレーターがあるのですぐにわかる。


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