週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2010年 02月 10日号
ピザ世界選手権2連覇なるか、チャンピオンにインタビュー
 知る人ぞ知る世界チャンピオン赤荻一也、28歳。昨年ラスベガスで開催されたピザ世界選手権ロンゲストスピン部門において、圧倒的な記録で見事優勝を果たした日本の若きエースだ。(写真右)
 3月3日の防衛戦まであと3週間。これまでイタリア人とアメリカ人にほぼ独占されてきたこの世界において 「外人」 として二連覇をねらう。
 それだけではない。昨年おしくも準優勝に終わったアクロバット部門の雪辱戦、さらには他の2部門にもエントリーするなどその野望はとどまるところを知らない。まさにオールラウンドのピザ職人として世界の頂点に立とうとしている。

 すでにラスベガス入りしている赤荻さんは、現在ホテル街から離れた郊外のピザ店で毎日トレーニングを重ね大会への準備に余念がない。(右の写真は、ピザ生地を破ることなく直径1メートル以上に伸ばす赤荻さん)
 ちなみにラスベガスコンベンションセンターで開催されるその世界選手権を一般の人がライブで見ることはむずかしい。なぜならその大会は、業界人向けのコンベンション International Pizza Expo の中のイベントとして開催され、その入場料は前売りでも169ドル、当日現場での購入は199ドルもしてしまうからだ。
 しかしあきらめるのはまだ早い。トレーニングのための場所や材料を提供してくれているそのピザ店への恩返しということもあり、赤荻さんは練習の一部を毎晩そのダイニングルームで公開し集客の一役を買って出ている。
 つまり今ならば彼の世界一のパフォーマンスをそのピザ店で見ることが可能というわけだ。一般観光客にとっては不便な場所ではあるが、行き方としては簡単なのでレンタカーを利用する予定の人はぜひ行ってみるとよいだろう。(行き方などはこの記事の最後に記載)
 ところで世界一といえば、今年あらためてすごい記録を出し、ギネスブックの新たな部門として申請することも検討しているらしい。
 日の丸を背負いながら (実際に彼の肩には常に日の丸が) 日夜練習に励み孤軍奮闘している赤荻さんに話を聞いた。

一年遅れになりましたが、優勝おめでとうございます。
ありがとうございます。取材に来て頂いてとってもうれしいです。とにかく英語がまったくしゃべれませんので、日本語を話す機会があるとほっとします。日本にいるとメディアからの取材やテレビ出演の依頼などがあるので、ゆっくり練習に専念したい今はここにいるわけですが、一日中一度も日本語をしゃべらないと疲れますね。
来月の大会で連覇したら昨年以上にメディアに追い回されそうですが、今までどんなテレビ番組に出演なさったんですか。
行列のできる法律相談所、スパイスTVどーもキニナル、ぴったんこカンカン、めざましどようびメガ、Take Me Out などです。でも一番うれしかったのは埼玉県知事に呼ばれて激励されたときですかね。二連覇を果たしたら県民なんとか賞をいただけるとかで、すでに埼玉県のマスコット 「コバトン」 がピザを回すデザインなどを作ってくれているようです。
日の丸を背負っているだけじゃなくて埼玉県も背負っているんですね (笑)。ということは埼玉ご出身?
いいえ生まれは栃木なんです。軽井沢でピザを回していたこともありますが、活動の場はたしかに埼玉が多いです。
栃木、埼玉、そして今は世界に挑戦。どういうきっかけでピザを始め、そして世界を目指すことに?
実家は飲食店、いわゆるソバ屋です。だから子供のころからソバ粉を煉って回していました。というのは冗談ですが(笑)、ねんど遊びとかは好きでしたね。そして高校時代は落第しそうなほど成績が悪かったです。自分でもよくわからないのですが、なぜかいつの間にかピザの世界で仕事をするようになっていました。
それなりのご苦労や努力があったことと思いますが、今に至るまでの道のりなどをお聞かせ頂けますか。
ミラノから少し離れたサルソマジョーレという場所でピザの世界的な大会が毎年行われているんですが、どうしてもそれに出てみたくなり猛練習をしました。そして24才の時に初めて参加する機会を得たわけですが、結果はボコボコに負けました。翌年もボコボコ (笑)。そしてこりずに26才の時も出場して、ついに決勝進出を果たし、なんとか7位に入賞することができました。シングルアクロバット部門でした。
アメリカの大会を目指すようになった理由は。
どっちのほうが権威があるとか制覇しやすいとかではなく、アメリカのピザ業界も知りたかったんです。イタリアにもローマスタイルとかナポリスタイルとかさまざまなピザがあるんですが、基本的にはすべてイタリアのピザ。しかしアメリカにはアメリカンスタイルだけではなく、イタリアンスタイルも含めてさまざまなピザがあり、粉、生地の厚さ、トッピング、チーズ、ソース、酵母菌など非常に幅があります。それらをすべて学びたかったんです。たとえイタリアンスタイルが本流でも、アメリカのピザが食べたいというお客さんには、それも作れるようになっていなければピザ職人としては失格ですからね。でも個人的にはやはりイタリアのピザのほうが好きですね。
好きということは、やはり厚さ以外にも味がかなり違うんですか?
イタリアのピザは薄く、アメリカのピザは非常に厚い。それは皆さんご存知だと思いますが、意外と知られていないのが味付けのベースとなるソースなんです。アメリカではトマトソースそのものにかなり濃い味付けをしますが、イタリアではトマトの自然な味をそのまま生かすのが基本で、あまりあれこれ味を加えません。そして味が薄いぶんだけ、チーズや生地の風味などを楽しみやすくなります。生地が薄いので、折りたたんで食べたりするのもイタリアンピザの特徴ですね。そのピザ、厚すぎて折りたたんで食べられないでしょ?
たしかに。これは典型的なぶ厚いアメリカンピザですね。
この店のオーナーさん、イタリア出身だというのにアメリカンスタイルが好きで、店のメニューもアメリカンばっかりなんですよ。
まぁ寿司好きの日本人でもアメリカンスタイルのカリフォルニアロールとかを気に入ってしまうことがありますので、いいとしましょう。ところで競技種目について説明していただけますか?
僕が昨年優勝したロンゲストスピンは文字通り長時間ピザ生地を回し続ける競技で、そのときの僕のタイムは3分24秒、2位は2分43秒。大多数の選手は1分と持たずしてピザ生地に穴を開けていました。
ダントツの圧倒的な勝利だったんですね。他の選手と何がそんなにちがうんですか。失礼かもしれませんが、体格は小柄なので体力勝負では勝てないですよね。体力は関係ないということでしょうか。
意外に思われるかもしれませんが、すごく体力を使うんですよ。3分も回したら翌日は腕が筋肉痛で何もできません。昨年、ショッピングモールのイベントに呼ばれて1日数回の演技を頼まれたのですが、もう最悪でした。もうロンゲストスピンだけは1日1回でお断りです。
ではアメリカやイタリアの大男たちの挑戦者は腕力が赤荻さんよりもない?
いや、腕力はあるんでしょうが、その前にピザ生地を壊してしまうんです。回していると遠心力でピザ生地がどんどん外側に行ってしまい、すぐに中央部が薄くなり指で穴を開けてしまうことになります。それを防ぐために一瞬も休まず指でピザ生地を内側に引き戻しながら回す技が必要になるわけですが、他の選手はその技がいまひとつなのだと思います。長時間の勝負になったら腕力で僕は負けるでしょうが、現時点での優勝タイムでは腕力よりも技術のほうがより重要ですね。ですから今は筋力トレーニングはほとんどしていません。
なるほど、勉強になります。他の種目についてもお願いします。
昨年2位になれたアクロバット部門は飛んだり跳ねたりしながらピザを回すダンスのような競技で、これはタイムではなく採点競技になります。
日本人のジャッジがいない中での採点競技で2位だったということは、国籍的なハンデがなければ1位だった可能性も?
でも優勝者はたしかにうまかったので、それはないでしょう。今年は頑張りますよ。なんとかこの部門でも優勝したいですね。あとはラージャストストレッチ、つまりどこまで大きくピザを伸ばせるかという部門もありますが、これは昨年参加して惨敗でしたので、今年はファーステストドウという部門に挑戦する予定です。これは団子状のピザ生地から30センチほどの所定のサイズのピザを5枚、いかに早く作れるかの競技です。あとは料理部門にも参加する予定で、これはスピードや大きさの競技ではなく、ピザとして焼き上げて完成させ、見た目や味などを総合的に競う採点競技です。
その料理部門、興味ありますね。トッピングにウニとかトロとかマツタケとか高級食材を載せて豪華さで勝負しちゃったりすれば勝てるんじゃないですか?
規定と自由があるんですが、自由部門でもそういうのはダメですね。何でもかんでもごちゃごちゃ乗せればいいというものではなく、やはり生地やチーズの風味がわかるようなものでなくてはなりません。自由部門に参加する予定ですが、こっそり公開してしまいますと、シンプルなスパイシー系で行こうかと思っています。トッピングはハラペーニォとチリソーセージなどで、チーズはモッツァレラを考えています。
その部門でもぜひ優勝してください。やはりピザ職人はおいしいピザを作れることが最重要ですからね。ところで今、日本でのご自身のお店ではどんな味のピザを?
現在は充電期間中で、調理専門学校でインストラクターなどをやりながらいろいろなことを学んでいるところです。今回の大会終了後は、日本全国で僕の演技を披露しながらピザ文化を広めるために、専用の車輌を造って全国ツアーを計画しています。すでに某有名流通店と提携し、日本全国にあるその店の駐車場でパフォーマンスとピザ販売を行う準備を進めているところです。その全国ツアーが終わったら、栃木でやっている父の店で和食とイタリアンを融合させたメニューを出したりするのもおもしろいかなぁなどと考えていますが、まだ先のことですのでどうなるかわかりません。
それはすごいですね。来月の大会もさることながら、そのビジネスの成功もお祈りいたします。長くなってしまいましたので最後に大会と現在の秘密練習場についてお願いします。
秘密じゃないのでぜひ見に来てください (笑)。大会は3月2日から4日までラスベガスコンベンションセンターで開催される International Pizza Expo の中で行われます。僕がエントリーしている種目はたぶん3月3日になると思いますが、入場料が高いので業界関係者やメディアの方以外は来てくれないでしょうね。一方、練習場のピザ店は無料、いやピザを食べる必要はありますので10ドルぐらいは必要でしょうが、高くないのでぜひいらしてください。僕が皆さんの前でパフォーマンスを披露するのは毎晩7時前後です。ロンゲストスピンは筋肉痛になりますので、たぶんお見せできるのはアクロバットとラージャストストレッチになると思います。ただ、ラージャストストレッチはスペースの関係でカウンターに近い側のセクションでは演技できませんので、入口を入って右側の広いセクションにすわることをお勧めします。週末などはけっこう混雑しますので早めにいらしたほうがいいかも知れません。月曜日は店自体がお休みになります。大会終了後もしばらくラスベガスに残る予定ですので、3月の中旬ごろまではみなさんにお会いできると思います。

 サービス精神旺盛な赤荻さんは別れ際に駐車場でもアクロバットを披露してくれた。ちなみにこの写真のように練習で使うピザはゴムや樹脂で出来たニセモノだ。本物ではないので、「地面をさわった手で煉ったピザを出すのか!」 と心配する必要はない。またラージャストストレッチなどのパフォーマンスで使った生地も1回ごとに廃棄しているので心配無用だ。エコロジー的にもったいないようにも思えるが、乾燥後に再度水を加えても発酵度合いなどが変わり粘性が異なってくるので、いくらパフォーマンス用だとは言っても翌日に使用することはできないらしい。
 この BAMBINI'S PIZZERIA & ROTISSERIE の住所は、4090 W.Craig Road North Las Vegas, NV 89031。
 行き方は、ホテル街から高速15号線に乗りひたすら北へ進む。ダウンタウンのジャンクションを通り越して10分ほど走った Craig Road で高速を降り、降りたところにある信号を西(左折)。そのあと10分ほど走ると Allen という道路との交差点が出てくるので、それを過ぎて200メートル走った先の右側。赤い店の看板が見えるのですぐにわかる。
 念のため予約したい場合の電話番号は 702-631-3555。赤荻さんがいるかどうか確認したい場合は、「ミスターアカオギ」 ではなく、「カズヤ」 といったほうが通じやすい。月曜日以外はほとんど毎日パフォーマンスを披露してくれるそうだが、大会の前後は休む場合もあるとのこと。


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