週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2000年12月13日号
超奇抜なナイトショー DE LA GUARDA
 「これを “ナイトショー” と呼んでいいのか?」 と自問したくなってしまうような超奇抜なショーがリオスイートホテルで始まった。

 「奇抜」 という言葉を使ったが、「異常」 という言葉の方が適切かもしれない。まず驚くことにこのショーには座席がない。有料で入場させた観客を最初から最後まで立たせておく。これだけでも十分異常だが、さらに驚くことにステージがなんと観客の頭上にある。それも 「斜め上」 ではなく 「真上」 だ。
 「首が疲れるのではないか」 と心配する向きもあるだろうが、たしかに疲れる。疲れないわけがない。とにかくこのショーは観客に対して容赦なく足腰と首の体力を要求してくる。ちなみに立たされている時間は約70分だ。

 必要なのは体力だけではない。寛大さも要求される。光、水、風、小道具を使うショーは数あるが、それらを客に浴びせてしまうショーは世界広しといえどもこの DE LA GUARDA をおいて他にあるまい。
 強烈なストロボの点滅で目がおかしくなろうが、“雷雨”にさらされ衣服が濡れようが、強風でヘアスタイルが乱れようがミニスカートが舞い上がろうが、小物 (写真左) が頭上から落ちてこようが、文句を言わない寛大さが要求されるというわけだ。

 ここまでの説明ではこのショーがなんなのかサッパリわからないだろう。観た者でもわからないので仕方があるまい。
 ちなみに主催者側の広報資料などによるとこのショーは Argentine High-Flying Hip-Hop とのこと。「アルゼンチンからやって来た空中ヒップホップ」 とでも言えばよいのだろうか。
 主張やテーマなどはあえて特定されていない。役者が演じるパフォーマンスの中からその主張を観客自身がそれぞれ感じ取れればよいとのことで、政治、セックス、時代、文化などを感じ取って欲しいとのこと。
 演出自体の描写としては 「都会に生きる現代人と熱帯雨林」 らしいが、セリフなど一切無いので彼らの主張を感じ取ることは極めてむずかしい。とりあえずは 「前衛芸術」 ということになっているようだが、一歩間違えれば 「単なるドタバタ劇」 か 「若者のバカ騒ぎ」 にしか見えなくもない。

 演出内容を具体的に細かく説明してしまうと楽しみが減ってしまうので程々にしておくが、劇場というか 「現場」 は想像していたよりかなり狭い (といっても入場した際は暗すぎて広さがわからない)。せいぜい20メートル四方といった感じだ。
 そして頭上には当然のことながら天井がある。かなり低い位置にあるその天井は紙で出来ていて (といってもあとからそれが紙で出来ていることがわかる)、そこにさまざまな絵が映し出される。ようするにプラネタリウムのような影絵のような、とにかくそんな演出が15分ほど続く。それ自体は幻想的でなかなか楽しめる演出だが、とにかく首が疲れること極まりない。
 すると突然、天変地異とでも言うべきか、首の疲れも忘れるほどその天井が激変する。この瞬間はラクソーホテルで行われているナイトショー 「ブルーマン」 の最後の場面をほうふつさせるが、この部分がこのショーのクライマックスといってよいだろう。

 このあとの演出はあえて書かないが、奇想天外なパフォーマンスが前半は次から次へと、後半はダラダラと続く。マジック、コメディー、歌、ダンス、アクロバットといった既存のナイトショーに見られるようなありふれた出し物は何もない。だからといって特にこれといったものはなく、早い話がドタバタ劇に近い感じだ。
 ちなみに役者は男性が背広にネクタイ、女性もビジネススーツといったかなり場違いな姿で登場するが、「都会に生きる現代人」 を描いているのでそうなるのだとか。当然のことながら空中で演技する女性の下着は終始丸見えとなる。それも計算に入れての演出だろう。

 すでにニューヨークとロンドンでも公演されておりラスベガスが3都市目の公演とのことだが、これまでの実績や評判がいまひとつ不明で、今後このラスベガス公演がロングランショーとして大成功を収めるのか、数ヶ月で消えてしまうのかまったく予測が付かない。いずれにせよ、興味がある者はいつ終わってしまってもいいように早めに観ておくことをお奨めする。
 ラスベガス大全としての評価は 「良い」 とも 「悪い」 ともコメントのしようがない。「理解できなかった」 というのが正直なところか。
 ちなみに、どんなショーだか知らずに間違って入場してしまった年輩カップルが会場の隅でぼう然と立ちつくしている姿は印象的だった。初老という年齢をはるかに超えたその男性は口をあんぐり開けながら降ってくる雨を見上げ、女性は足元に落ちている飛行機やカエルのおもちゃの存在を不思議そうに眺めていたが、二人はしっかりと手をつなぎ合っていた。含蓄のある芸術的なショーである可能性は残されているものの、年輩者にはお勧めできないというのが正直な印象だ。

 公演は日曜日と月曜日を除く毎日 9:30pm (土曜日だけは 11:30pm の部もある)。料金は $45。ドリンクは付かない、というか持ち込み禁止 (頭上からさまざまなモノが降ってくるためドリンクを飲めるような環境にない)。
 場所はリオスイートホテルの新館タワー棟のカジノフロア “マスカレードビレッジ” に隣接したスタジオ内。入場口はかの有名なバフェィ The Village Seafood Buffet のすぐ脇にある。
 なお、いかなる所持品も会場内に持ち込むべきではないとのことで (女性のハンドバッグも含めて)、会場前に用意されたロッカーにしまうようになっている (ロッカー使用には 75セントが必要)。たしかに濡れてしまうだけでなく、紛失などの恐れもあるのですべての所持品をロッカーにしまっておいた方がよいだろう。


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