週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2000年11月15日号
資金調達完了、モノレール建設に GOサイン
 慢性的な交通渋滞に悩まされるストリップ大通り。そこを走るモノレールの建設計画(フラミンゴ ←→ サハラ) は渋滞緩和策の救世主として過去において何度も浮上しては消えてきた。
 路線からはずされるホテル、駅ができないホテル、タクシー業界など他の交通機関の関係者、納税者、反対派は決して少なくない。

 反対派のリーダー的存在だったベネシアンホテルは、その敷地内に独自のコンベンション施設 (SECC: サンズエキスポコンベンションセンター)を持つため、競合ホテルからラスベガスコンベンションセンター(LVCC) へのアクセスが便利になってしまうフラミンゴ以北のモノレール構想には最後まで強く反対してきた。
 そんな同ホテルもその業績の回復と共に柔軟姿勢を見せ始め、とうとう今年の8月、長期に渡った論争に終止符が打たれることになった。

 ただ、反対派の歩み寄りが見られたあとも、新たに資金調達の問題が立ちはだかった。
 常に問題の原点にあったのは、「一般市民が使うことのないモノレールに税金を投入するのはいかがなものか」 といった考えだ。
 結局、第三セクター的な非営利企業 Las Vegas Monorail 社が債券の発行という形で独自に資金を調達することになった。

 しかし、モノレール事業が採算に乗るかどうか不明な現時点において、元本の保証がない同社発行の債券は格付機関から BBB との不本意な評価を得てしまい、資金調達計画は暗礁に乗り上げた。投資家はハイリスクな投資にはハイリターン(高金利)を期待するため、投資家に債券を引き受けてもらうためには Las Vegas Monorail 社は高い金利の提示が不可欠となってしまったからだ。
 高金利は Las Vegas Monorail 社にとって将来に渡り大きな重荷にとなり、前途をより一層不透明なものにする。

 そこで Las Vegas Monorail 社は奇策に出た。保険会社 Ambac Insurance 社に 2300万ドルの保険金を支払い、発行債券(4億 5000万ドル)の元本を保証してもらうというアイデアだ。つまり、仮にモノレール事業が失敗しても元本だけは投資家に還元されるという元本保証債の発行だ。
 これにより格付機関も一気に同社の債券を AAA へと格上げし、米ドル定期預金とほぼ同じ水準の年利 5.5% での資金調達に道が開け、このたび債券はめでたく完売するに至った。(このほかに 2億ドル分のハイリスクな元本無保証債を 7.5% の金利で各ホテルや機関投資家に引き受けてもらっている)

 GOサインが出たモノレール建設計画は 2004 年初頭の開業をめざし工事が始まろうとしている。軌道の建設よりも車両の設計開発の方に時間がかかるという。いずれにせよ開業に至ることはほぼ間違いないと見られるが、問題がまったくないわけではない。

 やはり最大の懸案は採算の見通しだ。さまざまな理由から空港に乗り入れる計画が現時点ではなく、それによる利便性の悪さから利用客の伸び悩みを心配する悲観論が台頭している。
 現在完成している区間においては MGMグランドホテルとバリーズホテルが運賃無料で運行しているが、バリーズホテル以北の計画路線が完成すると Las Vegas Monorail 社が全線を管理運営し運賃を $2.50〜$2.75 に設定するという。無料でさえも利用客が少ない現路線の現状を考えると悲観論も無理はないだろう。
 ダウンタウン地区の衰退を懸念する声も上がっている。モノレールが完成するとタクシー利用者が相対的に減り、結果的にダウンタウンを訪れる観光客が減るという推論だ。この種の推測を受けてダウンタウンへの路線延長論も浮上してきているが、実現までの道のりはかなり遠そうだ。

 一方、計画推進派はさまざまなルートでの乗車券販売を楽観的に分析している。まず、旅行代理店などがそのパッケージツアーの中でモノレールの乗車券をあらかじめ組み込んで販売してくるはずなのでかなりの枚数がはけるという。また、各ホテルもプロモーション用に乗車券を配布し、コンベンション主催者も大量に買ってくれると皮算用している。
 さらに、MGM←→サハラ間で成功を収めればいずれはダウンタウンまで路線を延ばし、モノレールはラスベガスの大動脈になるだろうと、推進派の鼻息は荒い。

 どの推測が当たるにせよ、観光客にとって移動手段の選択肢が増えることは大いに歓迎すべき事だろう。また、渋滞が緩和されれば大気汚染の改善などにもつながり、観光客のみならず地元民にとっても利益がありそうだ。今後なんのトラブルもなくスムーズに完成することを祈りたい。


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