週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2000年9月20日号
Steve Wyrick がサハラホテルで復活
 先週 9月13日、昨年末までダウンタウンのレディーラックホテルで行われていた若手マジシャン Steve Wyrick 演じるマジックショーが、場所をサハラホテルに移して約 9ヶ月ぶりに再開された。

 Steve Wyrick 氏にとって今回のサハラへの移籍は “大出世”といってよいだろう。サハラ自体はロケーションが悪く、また内容的にも決して一流とは言い難いホテルだが、ストリップ地区にあることに変わりはなく、ダウンタウンからラスベガスの中心街に一歩近付いたという意味では大いなる前進だ。
 そして何より、仮設テント小屋のような粗末な場所を会場としていたレディーラック時代と異なり、サハラでの公演は彼のために造られた専用ステージで行われる。ホテルがどこであろうが、明日のスターを夢見る役者にとって専用ステージを持つことは何にも代え難い喜びであり、またステータスであるに違いない。

 さてその専用ステージの場所だが、これが意外とわかりにくい。他のホテルと同様、カジノフロアにあるが、従来から存在しているサハラホテルのメインカジノフロアではなく、最近完成したばかりの NASCAR カジノ内にある (カーレース団体 “NASCAR”をテーマにしたカジノ)。すぐ隣が NASCAR CAFE になっており、この場所へはサハラ通りとストリップ大通りの交差点に近い入口から入るとわかりやすい。

 会場は、鉄骨や鉄板などがむき出しになったままの状態で、まるで工事現場のような荒々しいデザインに仕上がっている。どう見ても他の劇場に比べ金がかかっているようには見えないが、これはこれで野蛮な雰囲気がうまく演出されており、荒削りなこのショーのコンセプトとうまくマッチしている。
 客席の配置は左右方向に長く奥行きが短い。したがってステージから一番離れている最後列(12列目)の席でも決して遠くないので、チケットを買う際は前後の位置を気にするよりも左右の位置にこだわった方がよいだろう。それでも全席がまっすぐステージに向いているいわゆる映画館方式になっているため (座席がテーブルを囲むように配置されたディナーショー形式ではないという意味)、どの席からでもそれなりにステージを見通すことができる。
 なお床の傾斜はもう少し欲しいところだ。傾斜が緩いため、座高の高い人が自分の目の前の席に座った場合、かなり視界がブロックされてしまう。
 キャパシティーは約 600席だが、2階にもさらに 200席程ある。サハラホテルのロケーションの悪さやその集客力を考えると十分すぎるほどの広さといってよいだろう。

 ショーの内容はレディーラック時代からそのまま引き継がれた出し物が約半分、新たに加わったものが約半分といった感じで、手先のテクニックを生かした小さなマジックから、大がかりな仕掛けを使ったビッグイリュージョンまで演出は多彩だ。
 トラやライオンなどは登場しないものの、インコ、アヒル、犬などの小型動物を使ったマジックもいくつか披露してくれる。
 犬といえば、白いプードルを白い箱に入れ、黒いプードルを黒い箱に入れ、その二つの箱を合体させ二頭の犬を一瞬のうちに消してしまうというマジックがおもしろい。消された二頭の犬はあるものに変わってしまうが、何に変わるのかは見てのお楽しみだ。(ちなみに灰色のプードルにはならない)

 また、最近はやりの 「予測マジック」 がこのショーでも行われる。会場からランダムに選ばれた8人の観客に対して Wyrick 氏がそれぞれ好きな色や好きな番号を聞き出し、それらをステージの上にある大きな黒板に書き出す。つまり、3、Red、5、Blue、9、4、2、Green... といった具合だ。
 なんと不思議なことに、まったく別の場所にあらかじめ用意してある箱の中から取り出した紙にもその黒板に書かれた内容とまったく同じ番号や色が書かれている。
 ここで誰もが思うことは、その選ばれた8人がいわゆるサクラだということだろう。しかしその8人は、Wyrick 氏らがステージから後ろ向きに無作為に投げたボールをキャッチした人で構成されている。つまり意図的に選ばれた人たちではなく本物の観客だ。ちなみに今回の取材時には日本人観光客もボールをキャッチしその8人の中に選ばれていた。

 ビッグイリュージョン系では、自らが回転ノコギリで切断されてしまうマジック(写真上)、女性を一瞬にして消してしまうマジック、会場から選んだ客を宙に浮かべるマジックなどが披露されるが、それらはレディーラック時代とまったく同じだ。
 また、Wyrick 氏自身がまたがるオートバイをワイヤーで空中に釣り上げ、激しい閃光と同時にオートバイも自分も一瞬のうちに消してしまい、ほんの数秒後に自分は客席の後ろから登場するという大技はマジック界の大御所・デイビッドカッパーフィールドを彷彿させる。

 なお、このショーのメーンイベントでもあり、自称 「ラスベガス最大のマジック」 と呼んでいる軽飛行機を出したり消したりしてしまうマジックは、まだ準備ができていないとのことで今回の取材時には観ることができなかった (右の写真はレディーラック時代のもの)。Wyrick 氏から直接聞いた話によると、この軽飛行機を使ったマジックはあと2週間ぐらい待って欲しいとのこと。ただ、彼の 「2週間」 は 「2ヶ月」 のこともあるので、このマジックを観たい者はもうしばらく待った方がよいかもしれない。ちなみに彼は昨年末にレディーラックを去る際、「サハラでのショーは3月にスタート」 と言っていたが、実際には半年も遅れたという “前科” がある。

 軽飛行機を使ったマジックなど、まだ未完成の部分も少なくないようだが、総じて日本人観光客にお勧めできるショーといってよいだろう。
 ラスベガス屈指の人気を誇るマジシャン・Lance Burton のショーよりもトークの部分が少なく英語力をまったく必要としないところを特に評価したい。さらに、会場が比較的小さいため観にくい席が少ないばかりか、ディナーショー形式の座席配置を採用している Siegfried & Roy や EFX などと異なり、横を向いて座る席が存在していないところも高く評価したい。また料金もそれら人気ショーに比べかなり安く、マジシャンの格や知名度さえ無視すればコストパフォーマンスは抜群に高い。デイビッドカッパーフィールドと同じようなイリュージョンを半値で観られると考えれば、価値あるショーといってよいのではないだろうか。

 公演は火曜日を除く毎日 7:00pm と 10:00pm の2回。それぞれ正味1時間40分。全席指定。子供の年齢制限は特に定めていないとのことだが、小学生以上であれば特に問題はないだろう。
 料金は公称 $34.95 だが、サービスチャージ (とチケットに書いてある)、タックスなどが加わり実際には $40.45 だ。
 会場内での無料ドリンク券は付いていないものの、会場近くのカジノ内にある NASCAR CARZILLA BAR で利用可能な 「1本買えば1本無料」というドリンク券が入場チケットと一緒に付いてくる。ショーが終わったあと、もしくはショーが始まる前にビールでも飲みながらカジノで遊んでいって欲しいということのようだ。
 なお飲み物などは会場内でも買うことができる。価格はビール $3.50、各種カクテル $5.00 前後、スーベニアグラス $6.00 などとなっている。
 チケットはさまざまな場所で買うことができるが、サハラホテルのストリップ側にあるカジノ正面玄関前のチケット売場が一番わかりやすい。なお、よほどのことがない限り当日券の入手が可能なので特に予約の必要はないだろう。
(チケット売場の電話番号: 702-737-2515)


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