週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2000年8月2日号
House of Blues の ゴスペルブランチ
 今週はマンダレイベイホテル内にあるハウスオブブルースのゴスペルブランチを取り上げてみたい。

 まず始めに、「ゴスペル」 と 「ハウスオブブルース」 について簡単に触れておこう。
 ゴスペル(GOSPEL) とは、聖書などに出てくる元々の意味は別にして、一般的には教会の活動などで歌われる音楽のことを指す。ただ、教会音楽というとパイプオルガンや聖歌隊の賛美歌など、神聖なる雰囲気が漂う静かな旋律の曲をイメージしがちだが、実際のゴスペルはその種のものとは異なり、一般のジャズやブルースと何ら変わりのない普通の音楽だ。最近はロックやパンクに近いかなり騒々しいゴスペルすらある。会場も教会に限らず、宗教施設となんら関係のない一般のコンサートホールが使われたりすることも珍しくない。

 そもそもゴスペルの起源はアメリカ南部に住み奴隷として苦労を重ねてきた黒人たちが神を歌い込んだ音楽と言われており、そういう意味でも旋律がジャズやブルースに似ていることは当然の結果といってよいだろう。
 パンクやハードロック系のゴスペルは本来の起源から少々それることになるが、最近は 「神に捧げる魂が入った音楽ならなんでもゴスペル」 と拡大解釈される傾向にあり、ゴスペルの音楽としての範囲は非常に広がっている。したがって歌詞を意識的に理解しようとしない限り、多くの日本人にとってゴスペルと一般の音楽との違いを認識することはむずかしいだろう。

 歌詞以外でゴスペルが一般のコンサートと大きく違う部分は、出演者側がボランティアで演奏し、聞く側も入場料を寄付金として払っているということだろう。今回紹介するハウスオブブルースのゴスペルがどの程度のチャリティー色があり、どの程度のビジネス色があるのか、金額的な配分までは確認していないが、一般的にはゴスペルは営利と無縁の布教活動やチャリティーを目的としたコンサートだ。
 事実イースターサンデーなど宗教色の濃い日には、アメリカの一般の町の至るところで地元の教会が中心となったこの種のコンサートが開かれており、ゴスペルとチャリティーは切っても切り離せない関係にある。そういう意味でも今回紹介するゴスペルブランチへの参加は一般アメリカ市民の日頃のライフスタイルをかいま見るチャンスであると同時に、寄付活動への参加と解釈できないこともない。

 さて次にハウスオブブルースだが、これは日本でもよく知られているライブハウスで、現在ロサンゼルス、シカゴ、ニューオリンズ、オーランド、ラスベガスなど全米に数ヶ所存在している。規模こそ大型コンサート会場に遠く及ばないものの、その芸術的かつ伝統的な造りや音響効果は多くのミュージシャンから高い評価を得ており、有名スターがしばしば登場する会場として知られている。また、日曜日の朝から昼にかけてはゴスペル用に開放されることが多く、地域密着型の運営は地元民からも高い評価を得ているという。
 昨年オープンしたこのラスベガスのハウスオブブルースは、真新しいマンダレイベイホテル内にあるが、カジノの近代的なインテリアに毒されることなく、ハウスオブブルース独自の伝統的な雰囲気だけはしっかり保たれているので、カジノに隣接しているからといって興ざめするようなことはない。

 前置きが長くなってしまったが、今回紹介するのはそんなハウスオブブルースにて毎週日曜日に行われているゴスペルブランチだ。内容はその名が示す通り、ゴスペルを聴きながらブランチを楽しむというものだが、実際にはブランチを先に食べてしまったあとでゴスペルを聴くといった感じだ。

 まず、行き方およびチケットの入手方法から説明しよう。ハウスオブブルースの場所はマンダレイベイホテルのカジノフロア内の北側(LUXORホテル側)に位置している。無料モノレールでこのホテルに到着した場合、順路に従って進みカジノフロアが見えたら右手方向の壁沿いに進めばすぐにわかるはずだ。タクシーなどで正面玄関前に到着した場合も同様にカジノを右手奥に進めばよい。

 通常のバフェィと違いあくまでもコンサートということで全席指定席となっている。チケット売場はカジノからハウスオブブルースに向かって左端にある。料金は税込みで $32.60 となっており、バフェィと考えてしまうとかなり割高だ。

 毎週行われているものの、日曜日の 10:00am と 1:00pm の2回のみとなっているため、チケットはなるべく早めに買い求めた方がよいだろう。会場のキャパシティーも約 200人と決して多くないのでなおさらだ(通常のコンサートと違い、ブランチを出す関係で 2階席は販売しない)。
 それでも前日までに売り切れてしまうことは少ないとのことなので、特別混雑する要因が考えられる日以外は日本から事前に予約手配する必要もないだろう。チケットは日曜日以外でも販売されているので、ラスベガスに到着した日に買えば十分ではないだろうか。ちなみに日本からの電話予約は現場側があまり歓迎していないようだったので、ここで電話番号を記載することはあえて避けるが、どうしても事前予約したい者はマンダレイベイに電話をすれば担当部署に回してもらえる。

 さて気になるブランチの部分だが、食べ放題形式という意味では一般のバフェィとまったく同じスタイルになっているものの、料理としてはかなり様相が異なっている。ゴスペル本来の雰囲気を壊さないようにしているのか、アメリカ南部の伝統料理が中心だ。したがってここでは豪華なシーフードや豊富なデザートなどを期待してはいけない。
 アメリカのホームパーティーなどでよく見かけるアイテムが多く、ジャンバラヤやバーベキューチキンなど比較的日本人の口に合うと思われるアイテムもあるが、そうでないものも少なくない。仮に口に合うアイテムが少なくても、映画に出てくるようなアメリカの家庭料理の再現とそれの体験と考えればそれなりに有意義なブランチを楽しめることだろう。

 定刻(10:00am または 1:00pm) に入場が始まり、席に着いた順に自由に食事を始めることになるが、定刻後約45分でステージの幕が開きゴスペルが始まる。したがってあまり遅く入場すると十分に食べ終わらないうちにゴスペルが始まってしまうことになる。ゴスペルが始まったあとでも席を立って食事を取りに行くことはできるが、あまりそういう雰囲気でもないのでゆっくり時間をかけて食事を楽しみたい者はなるべく早めに入場した方がよいだろう。そのためには定刻前に入口の前に行き、行列の先頭集団に並ぶ必要がある。

 ゴスペルの部分は出演者が毎回異なる可能性があるので断定的なことは言えないが、いわゆる黒人音楽といわれているジャズやブルース系のサウンドが中心だ。歌詞さえ聞き流していれば宗教色はほとんど感じないが、時々入るトークなどはかなり宗教的な色彩が強い。
 会場内が総立で手拍子を打ったりする場面もしばしばあり、神聖なる静かな宗教音楽を想像して行った者は、いわゆる 「ノリ」 の大きさに驚くことだろう。

 何年か前に本家本元のロサンゼルスのハウスオブブルースでゴスペルブランチを楽しんだことがあるが、会場施設も演出も聴衆のノリもほとんど同じように見受けられた。したがって、いつかゴスペルを観てみたいと思っている者はわざわざ交通の便の悪いロサンゼルスやその他のハウスオブブルースへ行く必要はなく、宿泊ホテルから徒歩で行ける便利なラスベガスで観ることをおすすめする。
 高級料理が食べられるわけでもなく、一流ミュージシャンが登場するわけでもなく、バフェィと考えてもコンサートと考えても決して安いとは言えないゴスペルブランチだが、チャリティーに参加してアメリカの伝統文化に触れたと考えれば決して高くはないだろう。また、比較的何もやることがない午前中の時間を使って楽しめるという部分においても、このゴスペルブランチは貴重な存在といってよいだろう。


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