週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2000年7月26日号
女性マジシャン・MELINDA がベネシアンで復活
 1995年までラスベガスで長い間活躍していた女性マジシャン・MELINDA が、7月21日、約5年ぶりにベネシアンホテルのスタジオ型多目的ホール C2Kシアターに元気な姿を現しラスベガス完全復帰をアピールした。
 今後はベネシアンホテルの定期公演ショー “MELINDA First Lady of Magic” の主役として毎日 C2Kシアターに登場することになる。

 このショーの内容を紹介する前に、まず MELINDA について簡単に説明しておこう。
 彼女は地元ラスベガス出身のマジシャンで、マジック界の大御所 Seigfried & Roy、Lance Burton、David Capperfield らとも深い関係にある。
 まず彼女がこの世界に入るきっかけとなったのが、ホワイトタイガーのショーで知られる Seigfried & Roy だ。まだ Seigfried & Roy のショーがフロンティアホテルで行われていた頃 (現在はミラージホテル)、彼女はその脇役のオーディションに応募し見事合格した。そして脇役として舞台で仕事をしている間に、「いつかは自分もマジシャンに」 との夢がふくらみ、その後さまざまな場所で修行を重ねることになる。
 しかし残念なことに 「マジシャンは男性の仕事」 というこの業界に定着した既成概念の壁は予想以上に厚く、なかなかいい仕事にありつけなかった。

 ある日マジック界の大物に巡り会った。世界的マジシャン Lance Burton (現在モンテカルロホテルで定期公演中) だ。マジックを学ぶために近づいた Lance Burton であったが、何を間違えたのか彼女は彼と結婚してしまったのである。案の定、結婚生活はわずか 1年で破局を迎えることになったが、彼女自身は Lance Burton から多くを学び、独立することに成功する。
 その後、David Capperfield のイリュージョンにあこがれさまざまな手法を学ぶなど彼女なりの努力を重ね、ついにバーボンストリートホテル (1986-87)、ランドマークホテル (87-89)、サンズホテル(90-91)、サハラホテル (91-92)、MGMグランドホテル (93)、レディーラックホテル (93-95) など当時の有名ホテルのステージに立つことができ、それなりの名声を築くことに成功する。それでも女性であるがための壁は厚く、それ以上の大きな飛躍はむずかしかった。

 95年のレディーラックホテルでの公演を最後に彼女はしばらくラスベガスを去ることを決意し、活動の場を新天地レイクタホのシーザーズパレスやアトランティックシティーのタージマハールなどに移した。
 その後次第に実力が全国的に認められるようになり、CBSテレビのショー番組に出演するチャンスを得るなど確実に知名度を上げ、「Capperfield を超えた」 (ロサンゼルスタイムズ紙)、「Capperfield、Seigfried & Roy に次ぐ世界トップ3 マジシャン」 (USA Today 紙) など、各メディアから賞賛されるほどのスターにのし上がった。そして 2000年、タージマハールでの契約切れを機会に故郷ラスベガスに凱旋し、このたびのベネシアンでの定期公演が実現した。

 約6年ぶりに MELINDA の公演を見た。会場はラスベガスを代表する高級ホテル・ベネシアンの C2K。5年前の最後のラスベガス公演がダウンタウンのレディーラックホテルの簡易テントで出来た会場であったことを考えると大出世といってよいだろう。
 取材したのがラスベガス復帰後の初日ということもあり、まだどことなくぎこちない部分も散見されたが、女性らしいパフォーマンスも披露してくれ、なかなか見応えのあるショーにまとまっていた。

 内容としては後述するジャグリング(玉や輪などを同時にいくつも投げ上げてつかむ動作を繰り返す曲芸)を除いてすべてマジック主体となっており、英語が苦手な者でも何ら支障無く楽しめる “日本人観光客にお勧めのショー” と言ってよいだろう。女性のマジシャンという部分も新鮮味があって非常によい。
 ただ、個々のマジックはどこかで見たような演出が非常に多く、マジック自体には新鮮味がないように見受けられた。オートバイに乗った彼女が突然消え、直後に客席の後部から姿を現したりする場面はまさに Lance Burton や Capperfield そのものだ。人間を空中に浮かせたり輪切りにしたりするマジックも他のショーでよく見られるものとほぼ同じだ。
 もっとも、彼女自身が 「さまざまなマジシャンから多くを学んだ」 と公言しているばかりか、マジック業界自体が、「発案者からアイデアを買ってきて披露する」、という仕組みになっている以上、他と似た演出が多くなってしまうことはある程度やむを得ないことだろう。

 トランプなどの小道具を使うを小手先の技を生かしたマジックはほとんど披露されない。動物を使ったマジックも無かった。つまりほとんどが大かがりな仕掛けを使ったイリージョンというわけだ。
 ハイライトは工事現場用の大型ドリルで彼女自身の胴体に穴をあける名物の “The Drill” だ。この The Drill で彼女は名声を得たといっても過言ではないほど彼女自慢のマジックだという。

 約1時間20分のショーの間に一人だけ特別ゲストが出演する。ギネスブックにも載っているという世界的ジャグラー Anthony Gatto 氏だ。玉やボウリングのピン状の物を使ったさまざまなジャグリングで会場を沸かせたあと、最後に 「世界でただ一人」 といわれる 9枚の円盤 (フリスビー程度の大きさのリング) によるジャグリングを披露してくれる。日本の染之助・染太郎などが一生練習しても出来ないようなこの大技には観客からの割れんばかりの拍手がわき起こり、それは MELINDA のいかなるマジックに対する拍手よりも大きかった。

 ショーの終了後は、会場の出口で MELINDA 自身が観客ひとりひとりと握手したり記念撮影などに応じてくれる(写真右上)。また、Tシャツ($12) やポスター ($5) など記念品の購入者は直筆のサインをもらうことができる。

 次にこのショーの難点を指摘するならば、舞台照明が総じて暗いことだ。タネや仕掛けが見えてしまうことを恐れているのか、限度を超えて暗い場面が何回かあった。
 あと音楽が若者受けするようなロックンロール風のやかましい曲が多く、演出に似合わないと思える場面が少なからずあった。もう少し神秘的な曲を多用した方がよいような気がしたが、これは好みの問題でもあり意見の分かれるところかもしれない。
 また、これはショー自体の問題ではなく C2Kの会場自体の問題だが、席によって非常に見づらい場所があることが少々気になった。フロアレベルは何段階かに分かれているものの (1階席が3段階。その他に2階席と3階席がある)、1階席のそれぞれのレベルが平らになっており (つまり映画館のように床に傾斜が付いていない)、自分の前に大きな人が着席した場合、ステージが見にくくなってしまう。だからといって 2階席と 3階席はステージから遠すぎあまりおすすめできない。基本的には 1階席がおすすめだが、視界の確保が運に左右されてしまうのは困ったものだ。

 このショーの最大の問題は料金だろう。1階席の $79 はいくら彼女が出世し有名になったといえども他のショーと比較して高すぎる。かの有名な Seigfried & Roy と大差ない料金水準にあるが、ショーの内容は 100人中 100人が Seigfried & Roy に軍配を上げるのではないだろうか。Lance Burton と比べてもいい勝負か、座席配置など会場の完成度という意味で Lance Burton に軍配を上げる者が多いのではないだろうか。そういう事情を冷静に考慮すると、高くても $50 前後が妥当な水準ではないだろうか。またその程度の水準に設定しない限り今後の集客に問題が生じ、このショー自体の存続が危ぶまれることにもなりかねない。
 なお、2階席は $59、3階席は $39、さらに 12才未満の子供は $24 となっているが、この料金設定はまだ暫定的なものであり、今後どのようになるか非常に流動的とのこと。(子供の年齢の下限は特に設けていないが、年齢に関係なく会場内で騒いだ場合、その場で退場してもらうとのこと)

 公演日時は月、火、木、金が 6:30pm、土、日が 3:00pm、水曜日が休演。全席指定席。飲み物などは付いていない (会場内で別料金で買い求めることは可能)。
 なお、この同じ C2Kシアターで平行して開催されている Nebulae というショーの今後の公演スケジュールが非常に流動的なため、Nebulae の今後の日程次第で、この MELINDA First Lady of Magic の時間帯も変わる可能性がある。
 チケットの購入はベネシアンホテル内にあるこの会場(C2Kシアター) 前のチケット売場で。開演直前でも当日券が買えるので (少なくとも取材時は買えた)、事前予約の必要は特にないだろう。


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