週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2000年5月03日号
サハラに “Speed The Ride” がお目見え
 先週28日、ストリップ地区の北端に位置するサハラホテルにリニアモーター駆動方式の新型ローラーコースター“Speed-The Ride” がお目見えした。

 このローラーコースターの特徴はなんと言ってもその動力源と加速方法だ。ローラーコースターと言えば通常、チェーンやワイヤーなどで最高地点(スタート地点)まで車輌を引き上げ、その後はそれを重力に任せて自由に滑降させるだけで、車輌が重力以外の動力源に頼り途中で加速されるようなことはない。
 つまり走行速度は最高地点で持っていた位置エネルギーを超えることはなく、結果として上昇局面の走行では常に減速する。宙返り軌道の最上部などでかなり速度が落ちるのもそのためだ。

 ところがこの Speed-The Ride では 「高い場所から落下させる」 というローラーコースターの基本ともいえる原理がまったく無視しされた設計となっており、車輌は低いスタート地点からリニアモーター駆動によりいきなりロケットのように発射されるばかりか、車輌自身が加速性能を備えているため途中の登り勾配でもさらに加速される。

 この駆動方式の違いは搭乗者の体感となってはっきり現れて来る。従来型ローラーコースターでの最大のスリルや恐怖はその落下局面における胃が締め付けられるような感覚だが、Speed-The Ride ではそういった怖さはほとんどなく、ただひたすら「高速すぎることへの恐怖」を体験することになる。

 最高速度自体は時速 70マイル(112km)とのことで、それより速いローラーコースターは他にも存在しているが(ちなみにラスベガス南方の Primm 地区にあるバッファロービルズホテルの “Desperado” の最高速度は 80マイルとのこと)、多くの人にとってこの Speed-The Ride は他のいかなるローラーコースターよりも速く感じることだろう。
 なぜなら、従来型のローラーコースターにおける最高速度は最初の急降下部分での瞬間値であり、その後はひたすら速度が落ちて行くが、上昇局面でも加速する Speed-The Ride ではコース全域に渡ってかなりの速度が維持されているからだ。

 その平均速度の速さにも増してさらに特徴的なのが超高出力リニアモーターによるスタート時の加速だ。わずか2秒で時速 70マイルに達するという想像を絶する急発進は、航空母艦から離陸するジェット戦闘機並みという。
 いきなり時速 70マイルに達した後は一回だけ宙返りし、あとは減速することなく(つまりここでリニアモーターで加速される)ひたすら上昇軌道をかけ登るだけという極めて単純な軌道デザインだ。上昇軌道の終点は垂直に切り立っており、そこで折り返し来た道を逆向きに戻ることになる。

 複雑に入り組んだ軌道が売り物の従来型ローラーコースターに比べ軌道が単純で平均速度も速いとあって、スタートから終了までの走行時間はわずか 45秒程度だ。この数字だけを見ると非常に短く少々物たりないようにも思われがちだが、実際に乗ってみるとスタート直後の急発進による体力の消耗があまりにも激しいのか、45秒でも十分といった感じだ。

 景色はニューヨークニューヨークホテルのコースターのようには楽しめないので昼に乗っても夜に乗っても体験自体に大差はないだろう。もともとサハラホテルの周囲にはほとんど何も存在していないことと、からだを固定する安全バーの肩当て部分が非常に太くそれが左右の視界を完全にブロックしてしまい視界自体が非常に限られているからだ。

 最前列に着席すると前方の視界が広がるばかりか、折り返し地点における到達高度も最も高いことになるが、スピード自体を楽しむことが目的のこのローラーコースターにおいて景色や高さはあまり重要な要素ではないだろう。仮に運よく最前列に着席することができたとしても折り返し地点では空しか見えず(真上を向いている状態になるため下界は見えない)、他の席よりもより高い位置に達していることを体感できない。
 そう考えると進行方向とは逆向きに着席させるように設計した方が折り返し時に地上が見え高さの恐怖も視覚的に体験できることになるが、そういった設計になっていないところを見ると、スタート時において逆向きに着席したのでは搭乗者が加速に耐えられないということだろう(逆向き着席の場合、座席の背もたれによって背中から押される方向での加速ではなく、安全バーで胸を押される方向での加速になってしまい首や胸に大きな負担がかかることになる)。

 料金は大人も子供(身長137cm以下は搭乗不可)も一律$6。待ち時間は現在開業直後ということもあり 30分程度だが、半年もたてば地元民の子供たちの搭乗が一巡してかなりすいてくるだろう(地理的に観光客が気付きにくい場所にあるため、現在の搭乗客の大半は地元民)。
 運転時間は午前10時から午後10時まで(週末のみ深夜12時まで)となっているが、これは今後客の入りなどによって変更される可能性がある。

 最後に、恐怖におびえることなく冷静沈着に乗っていればどの部分でどのようにリニアモーターが使われているかはっきり体感できる。また、ストリップ大通り沿いの歩道からは、30メートルほどの上昇軌道部分にリニアモーター装置が埋め込まれていることをはっきり目視することができる。技術的なことに興味がある者はその設計を体験&検証してみるとよいだろう。

【リニアモーターとは】
 通常のモーターが回転軸を持ち、その回転軸のまわりを磁石が回転し回転運動を生み出す構造になっているのに対して、リニアモーターはその名前の通り磁石自身が直線的に移動するように設計されており、出力も直線方向に発生する。つまりこのローラーコースターの場合では、車輌側に取り付けられている磁石と、軌道側に取り付けられている磁石が引き合う力を利用して前進することになる。軌道側では「役目を果たす磁石」が車両の進行とともに電磁的に次から次へと前方へ移動し、常に車輌の直前にある磁石が車輌を前方に引きつけるように磁石が切り替わる。(ちなみにその様子はストリップ側の歩道から見ることができる。技術的なことに興味がある者は軌道側の個々の磁石ユニットの大きさなどを実際に見学してみるとよいだろう。また車重と加速量から仕事率が算出できるわけで、そこにどれほどの電力が投入されているか計算してみるとおもしろいだろう。とんでもない馬力に驚くはずだ。ちなみに車重は24人の乗客を乗せて約3トン前後とのこと。)。
 通常モーターを採用した場合、回転する車輪がレールを蹴って進むことになるため、いくら出力を上げても極端な急発進は車輪がスリップしてしまい実現できないが、リニアモーターを採用した場合、車輪がレールを蹴る必要がないためスリップすることなく理論上いくらでも速い加速が可能となる。



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