週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2000年4月26日号
迷走するデザートインが50周年記念イベント
 4月24日、ラスベガス屈指の高級ホテルとして知られるデザートインが開業50周年を迎え、それを祝うための各種記念イベントが終日同ホテル周辺で行われた。

 記念イベントには Susan Anton、Chris O'Donnell、Robert Urich、Robert Loggia ら著名人やハイローラー(カジノの上客)など約 500人が招かれ、同ホテルに隣接するデザートインゴルフクラブでの祝賀ラウンドやディナーパーティーなどが行われた他、カジノフロアでは一般客にバースデーケーキやシャンペンが振る舞われるなど同ホテルは終日祝賀ムードに包まれた。
 夜9時半からはストリップから 200メートルも離れていないゴルフコース内の空き地にて盛大な花火大会が行われ、初夏を思わせる快晴無風の夜空に舞う大輪の花に数千人の観衆が酔いしれた(写真下: ファッションショーモール前から撮影)。

 翌日25日には同ホテルのさまざまな歴史的物品が詰め込まれたタイムカプセル(50年後の100周年記念式典時に蓋を開ける予定)を埋めるセレモニーが行われるなど祝賀ムードは続いており、26日以降も引き続き30日の日曜日まで50周年を祝うさまざまなイベントが行われるという。

 1950年に開業し 2000年に50周年を迎え 2050年の100周年を目指す同ホテルは、その区切りのよい数字も手伝ってか今週は祝賀ムード一色だが、前途を心配する関係者も少なくない。ここ数年の業績の低迷と将来の見通しに暗雲が立ちこめているからだ。

 デザートインはただ単にハイエンド志向の高級ホテルというだけでなく、その中にラスベガス変遷の歴史が凝縮された由緒あるホテルで、現フラミンゴヒルトンと並びラスベガスの歴史を語る上で欠かせない名門中の名門ホテルだ。過去のオーナーの顔ぶれを見ただけでもこのホテルがいかに傑出した存在だったかうかがい知れる。

 1950年 ウィルバークラーク氏の手によって開業したデザートインは、その直後に名門ゴルフコース・デザートインカントリークラブを完成させ PGAトーナメントを誘致するなど、リビエラホテルが完成するまでの5年間、ラスベガスストリップにおける名声を欲しいままにしてきた。その後はリビエラ、サンズとともに黄金時代を築き今日のラスベガスの繁栄の基礎を作ることに貢献してきた。
 ラスベガスの街全体にマフィアの影がちらついていた60年代、名門デザートインを買い取ったのはあの大富豪ハワードヒューズ氏だった。これはラスベガスにとっても裏街道の世界に生きる者たちにとっても革命的出来事で、これを機会にカジノ経営に大手企業や大資本家が参入し始めるようになった。

 資本家らにとってあこがれのデザートインは常にその投資対象の標的とされ、88年には現MGMグランドホテルのオーナー・カークカーコリアン氏がデザートインを買い取った。
 その5年後、MGMグランドホテルを完成させたカークカーコリアン氏はデザートインをホテル経営の名門ITTシェラトングループに売却し、名称も「シェラトンデザートイン」と改められた。
 シェラトングループは2億ドルという巨費を投じてさらなるグレードアップを目指し今日のデザートインの姿を造り上げたが、日本のバブル崩壊以降の長引く不景気やアジアの経済危機という不運にも見舞われ(デザートインの収益を支えていたハイローラーの多くがアジア系の高額所得者だった)経営状態の改善が見られず、98年に娯楽業界大手の Starwood社に売却してしまった。現在その Starwood 社も買い手を探しているという。

 開業後50年が経過した今日においてもまったく陳腐化することなくラスベガス屈指の超高級名門ホテルであることは誰もが認めるところだが、一方、名だたる大富豪や名門企業が経営しても近年の業績が芳しくないのも事実だ。その最大の理由は立地条件にあるといわれている。過去10年、ラスベガスの中心地が南へ南へと移動したため、同ホテルが存在している北ストリップ地区の注目度が年を追うごとに低下してしまったのである。
 カジノだけが目的のハイローラーといえども一般観光客と同様、にぎやかな南ストリップ地区の新設ホテルに目移りしてしまうのか、常宿をMGMなどに鞍替えするハイローラーが後を絶たないという。まさに輝かしい歴史や名門という言葉にあぐらをかいていられる時代は終わりを告げようとしており、50周年を機にデザートインは大きな転換期に直面し迷走し始めたといってよいだろう。

 そんな先行き不安のデザートインの将来を担う期待の人物がにわかに噂され始めている。スティーブウィン氏だ。ウィン氏はミラージ、トレジャーアイランド、ベラージオなどを造ったラスベガスカジノ界のスーパースターだが、それらホテルを前述のカークカーコリアン氏率いるMGMグランド社につい先日買収されてしまったため新天地を探しており、ウィン氏がデザートインを買うのではないかという噂がかなり現実味を帯びてきている。事実ウィン氏は今月になってデザートインを公式に訪れており施設の視察も終えているばかりか、隣接する空き地に建てる新館(もしくはまったく新しいコンセプトのホテル)のデザインも構想しているという。あとは現オーナーである Starwood 社との金額の交渉だけと言われているが、業界アナリストらはウィン氏がデザートインを買う確率を半々程度と分析している。
 寂れた北ストリップ地区の再開発を期待する地元民や観光客のみならず、同地区で営業しているリビエラ、スターダスト、サーカスサーカスなどの関係者も北ストリップの救世主となり得るウィン氏の去就をかたずを飲んで見守っている。


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